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◆◆◇◇◇ 承

 事件の翌朝、

「晴海様、大変だよ。あの背中を刺された女の人が病院からいなくなったんだ」

 久遠からの電話に晴海も驚いた。

「名前も何もわからないんでしょ」

 病院に運び込まれた女は身分を明かすものを何も持っていなかったのである。

「カバンとナイフは証拠品として警察の手元にあるんですが、その本人がいないとなれば何もわからないんですよ」

「困ったわね。それでコインロッカーのカギはどこかわかったの」

「それはすぐにわかりましたよ。満腹寺に向かう駅のものでした。防犯カメラにあの女の人と見られる人物が使用していた様子が映ってました」

「えっ、犯人のものじゃなくて彼女の持ち物だったの」

 晴海はわけがわからなくなってきた。

「それで何が入っていたの」

「なにも入っていなかったですよ」

「じゃあ、何かを取り出してもう一度鍵をかけたってこと?防犯カメラの映像は天鼓君に解析してもらってる」

「あっ忘れてました後からお願いしてみます」

「もう、久太郎だめじゃない。天鼓君なら何か気が付くはずよ」

 全幅の信頼を寄せている晴海だった。

「さて、どうしたものですかね。被害者がいない犯罪だなんて、捜査のしようがないですよ」

「ほんとね。襲われた女の人が誰かわかればいいんだけど、そうよ荷物よカバンの中の荷物から推理するのよ。証拠品を持って天鼓君の研究所に行きましょう」

「わかりました。所轄へ行ってから迎えに行きます」


「晴海ちゃん----」

 外から呼ぶ声が聞こえてきた。晴海の叔母、保育園の園長をしている父の妹の晴子であった。

「はーい、晴子さん、なんですか」

 保育園の方へ歩いていった。

「ごめんね。晴海ちゃん、おせちの準備で忙しいでしょ」

「いいえ、もうだいぶ出来上がっているから、ところでなんですか」

「実はね。園のお餅つきなんだけど、つき手の男手が足りないの。いつもぶらぶらやってくるあの刑事さん来てない」

「もう少したら来るけど、急ぐ?」

「できれば、もうもち米蒸しあがってくるんだけど」

「オーケイ、最強の助っ人用意するわ」

 錫杖を手に取りだし遊環ゆかんに

「オンキリキリバザラウンバッタ、チュッ」

 キスをして赤鬼の日輪と青鬼の月光を呼び出した。

「お願いお餅つき手伝って日輪、月光」

 二体の鬼は肯いた。

「あら、たくましい方たちね。節分も手伝ってもらおうかしら」

 さすが晴子も妖怪寺の娘、二体の鬼を見てもまったく物おじしない。

 園児たちも着ぐるみか何かと思っているのだろう。喜んでいる。

 日輪と月光も結構楽しそうにしている。

 二体の餅つきはそれはもうパワフルでよく伸びるお餅が出来上がった。


「保育園の方がいつもよりにぎやかだから覗いてみたら、日輪と月光がいるからびっくりしたよ」

「久太郎も手伝っていく」

「こんにちは、刑事さん。よろしければお餅ついていきますか」

「久遠です。こんにちは、晴海様の叔母様ですね。まかせてください」

 上着を脱いで杵を持った。

「つくのは結構ですわ。子供たちがつく合いの手をお願いします」

「そうですか」

 晴子はヒョロヒョロの久遠と二体の鬼を見比べてそういった。

 十臼をつきあげて餅つきは終わった。


「久太郎、ありがとう。意外と子供たちの扱い慣れてたわね。この保育園で働いたらどう」

「楽しかったけど。それより早く宝蔵院君のところへ向かいましょう」

「そうそう、忘れてたわ。晴子さんのペースにすっかりはまっちゃたわ」


 車に乗り込み研究所に向かった。

「でも楽しかったなあ。保母さんもかわいいしいいとこだな」

「晴子さんに言って誰か紹介してあげようか。三奈さんなんて久太郎に見とれてたわよ」

「本当」

 にやつく久遠に

「嘘よ。みんな彼氏いるから。ふっふっ」

「からかわないでよ。ついたよ」


「興味深い事件ですね。証拠品を渡してもらえますか」

「宝蔵院君、頼んだよ」

「逃げた被害者が誰か知りたいの」

 宝蔵院は証拠品を受け取り分析室に向かって行った。

「やあ、久遠くんに晴海ちゃん年の瀬なのに大変だね」

「団長、こんにちは、ご機嫌はいかが」

「暇だよ。何か手伝えることないかい」

「教団の件は進展ないしお餅つきでもしたらどう。日輪と月光もお手伝いできるわよ」

「昨日、天ちゃんたちともうやってしまったよ。いっぱいついたからあとで持って帰るといいよ」

「ヤーシャさんの丸めたお餅いいなぁ」

「あいつは今アルバイトで海外のサーカスの公演に行っているぞ。年明けまで帰ってこない」

「そうよね。ヤーシャさんの演技を埋もれさせておくなんてもったいないわよね」

 お茶を飲み世間話を続けていた。


「久遠さん、少しわかりましたよ」

「さすが天鼓君」

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