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共同生活

 結局、強化合宿はそのあと二日後に始まった。

「ほんとは僕だけでやりたかったんだけど。晴海様、おじいさまを一人にしていて大丈夫なのかい」

「塗壁くんとぬっぺふほふ君以外の妖怪たちにお世話を頼んできたから問題ないわ。お料理が得意な子もいるし、小豆洗くんなんて洗濯が好きなのよ」

「まだそんなに沢山いたんだ。ぬっぺふほふ君はどうして連れてきたの」

「私に化けてもらってリモート授業を受けてもらうためよ。ところで久太郎はどんな特訓をするの」

「ヤーシャさんに射撃や格闘術を習おうと思っているんだ」

「向こうはプロ中のプロよそんな贅沢をしていいの」

「私は別に構わない。一人でも使える駒が増えればそれでいい」

「サーカスを離れて寂しかったから大勢のご飯を作るのは大歓迎さ」

「団長さんはサーカス時代から炊事当番していたの」

「ああ、食べることも作ることも大好きさ」

「ヤーシャさん、天鼓君の姿が見えないけれど」

「あれからずっと徹夜で本を読みふけっている。飯も食わないでな」

「あらまあ、体に毒よ」

「なんでも一週間くらいは徹夜で本を読んでも大丈夫だとか言っていたが、そろそろ引っ張り出してやろう」

 ヤーシャは書斎へ向かって行った。

「ところで団長さん、御堂さんと貴具はどうしたの」

「彼らはもうこちらに泊まり込んでいてね。人に見られては困ると裏山で修業してるよ」

「師弟揃って相変わらず秘密主義ね。陰陽師の修業って見て見たかったのに」

 ヤーシャが戻ってきた。

「天鼓君の様子はどうだった」

「いうことを聞かないので気絶させてベットに寝かせてきた」

「手荒ね。天鼓君かわいそう。久太郎には手加減いらないからバシバシ鍛えてあげて」

「そのつもりだ」

 久遠は情けない顔になった。

「ところで晴海さまはどんな特訓するんだ」

「私もヤーシャさんにお相手してもらおうと思ってたけど。久太郎に譲るわ。団長さん、あのバーチャルとレーニンマシーンって操作できるかしら」

「それなら問題ない。天ちゃんに使い方を教えてもらって、ヤーシャのトレーニングに使っているから」

「よかった。それではお願いします」

 晴海はお辞儀をしてその日の特訓が始まった。


 夜になり、陰陽師師弟も戻ってきてにぎやかな夕食となった。

 宝蔵院も起きてきて本を読みながら食事をとっていた。

「天鼓君、だめよ。読書はご飯を食べてから、栄養が取れないよ」

「わかりましたよ。水無瀬さんに心配かけちゃだめですね」

「よしよし、どんなご本を読んでいたの」

「奠胡テンコが書いた手記を読んでたんだ。古代のテクノロジーに精通してたんだ。興味深い新しい発見があったよ。僕たちが牢獄から戻った場所で人型の遺物が見つかったでしょ。あれは彼が作った物だったんだよ。今でいう戦闘用パワードスーツみたいなものなんだ」

「あれは兵器だったの物騒なものだったのね。古代のロマンを感じてたのにがっかり」

「二、三日あれば解読できると思うんで作ってみようと思うんです」

「教団と戦うためならいいわよ。久太郎実験台になりなさいよ」

「えー、今日一日で体ボロボロの状態だよ。ヤーシャさんの特訓厳しいんだよ」

「ヤーシャさん、久太郎はどう」

「そこそこ筋はいいがたいした役には立たないな。ハッキリ言って無駄だ。しかし銃の腕前は鍛えればものになりそうだ」

「ヤーシャんの組み手の寝技も捨てがたいけど。明日からはそれを中心でご指導願います」

 にやけ顔で久遠は射撃のトレーニングを願い出た。

「いいじゃない。後方支援が久太郎の役目ね。きまり」

「さあ、みんなどんどん食べてくれ」

「団長さんどれも美味しいわ。このちょっと酸っぱいスープのレシピを教えてほしいわ。お家でおじいちゃんに食べさせてあげたいから」

「このサリャンカが気にったのかい。いいよいくらでも教えてあげるよ」

「ところで御堂さんたちはどんな特訓しているんですか」

「久遠くん、貴具があまりになまり過ぎているので筋トレだけだよ今日は」

「師匠、私も後方支援ということでお手柔らかにしてもらえませんかね」

「馬鹿もん!それも基礎体力あってこそじゃ」

「よかった御堂さんがいて」

 散々振り回せられてきた貴具が怒られる姿を見て晴海は笑っていた。


 一週間の共同生活は特訓以上にチームの為となった。

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