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脱出

 フーが先頭に次いで並んで宝蔵院と晴海が進んでいる。

「ここが出口なの洞窟が続いているだけなんだけど。どこへつながってるの」

「昔は京都の愛宕山というところだったんだけどにゃ」

「京都までつながっていると言うことは結構歩くのかな」

「それはないかと思います。空間が歪んで結合されている状態かと」

 ヤーシャが突然、前に躍り出て武器を身構えると御堂と貴具も続いた。晴海も察して弓を構えた。じりじりと緊張した空気が流れた。

 軽足が先ほど調理しかけて食べ損ねたギアーレの肉の塊を前方に投げ込んだ。

 その肉の塊に黒い影が飛びついた。大きな犬の魔物ヘルハウンドだった。

 ヤーシャは鞭を手に取り、身構える御堂と貴具を制してハルハウンドに近寄った。

 激しく鞭をたたきるけると

「ダウン!」

 ヘルハウンドは伏せをして燃えるような赤い目でヤーシャを見つめた。

「すごい!さすが猛獣使いだ」

 久遠が感心してつぶやいた。

「あいつは生まれながらのビーストティマ―なんだ。小さい頃からどんな獰猛な犬も懐かせてしまったんだ」

「天、この魔物の名前は」

「ブラックドッグまたはヘルハウンド呼ばれる魔獣かと」

「わかった。ネロ!カム!」

 その言葉に従いネロと名付けられた魔獣はヤーシャのそばに付き添い進んでいった。

 しばらく歩くと池が進路をふさいだ。ボートはあるのだが底に穴が開いていた。

「向こうに扉があるのに困ったな進めないじゃないか。そうだ、晴海様、さっきの氷の弓で凍らせてくれないか」

 久遠と軽足はボートを池から引き揚げた。

「久太郎も機転が利くようになったわね。氷結(ギアッチョ)付与(エンチャント)」 弓を放ち池を凍結させて、ボートをネロにひかせて対岸へと渡り次の部屋への門の前に立った。

 フーがその門に手をかけるとネロがうねり声をあげた。

「フー、用心して開けるのだ」

 ヤーシャが注意を喚起した。

「あんまり驚かさないでにゃ」

 そろそろと扉を開けた。

「なーんだ。何も起こらないにゃ」

 と言った途端、地面からスケルトンがせりあがってきた。

「やっぱり出口までは罠が仕掛けてありましたね。アンデッド系ののモンスターですか。御堂さんと貴具さんにお任せしましょう」

 宝蔵院が指揮を執った。

「久遠がリーダーじゃなかったのかよ。御堂師匠、魔法陣はセットしますのであとはよろしく」

 貴具は舞うようにスケルトンの間をすり抜けていく。

「これが禹歩うほというやつですか。興味深い」

 御堂は印を結んでいる。

「ぬばたまの その夜の命をわずらわず おきつ来にけりあかぬわかれ」

 と歌のような呪文を唱えると、まばゆい魔法陣が広がり、地面から無数の黒い手が現れスケルトンを地中に引きずり込んだ。

「冥府送りというものですか。すばらしい」

 宝蔵院は手を叩いて賞賛したが、ゴブリンの一団が奥から現れてきた。

「そろそろ出口も近いということですかね。水無瀬さんとヤーシャさん頼みましたよ」

「まかせて、水無瀬晴海!モンスターお祓いしちゃうわよ!」

 戦闘鬼を召還した。ヤーシャはネロとともにゴブリンを退治していく。

 ゴブリンは晴海の付与した爆裂呪符を受けて倒されると魔石を残して消えた。

 十数体いたゴブリンは晴海とヤーシャによって駆逐された。

 数体はネロが食べていたが、魔石を拾い上げた宝蔵院は

「匂いがちょっと気になりますが残りの死体も焼いて魔石を回収してくれませんか」

 晴海は火炎呪符で傘を火炎放射器に変えて焼却し始めた。

「ほんと酷い匂いね。でもネロ君はこいつらを餌に生きてきてたのね」

 十数個の魔石を拾い集めると宝蔵院に渡した。

「研究のし甲斐がある素材ですね」

 にこにこと笑っていた。

 さらに進むと大きな門が現れた。

「やっと出口ね。さあ帰りましょう」

「ちょっと待ってください」

 宝蔵院が外に出ようとする晴海を止めた。

「このパソコンでマッピングしながら進んだんですがここに隠し部屋があるような気がするんです」

「しかたがないなぁ。みんなで手分けして調べてみよう。財宝があるかもしれないぞ」

 久遠も興味を持ったようだ。

 宝蔵院の示した壁面を調べ始めた。

「天ちゃん、ここに穴があるんだがその杖と同じサイズだぞ」

 軽足が見つけ出した。

「試してみますが皆さん警戒してくださいね」

 杖を差し込むと壁面い扉が現れた。

「鬼が出るか蛇が出るか。開けますよ」

 久遠が取っ手を引いた。

「おー図書室だ」

 かび臭い匂いと共に開かれた部屋は本棚が並んでいた。

「どうやら奠胡(テンコ)という鬼の書庫ですね。興味深い」

 宝蔵院は目を輝かせて中に飛び込んで、何冊か本を取り出し中を夢中で読み始めた。

「すごい!すごい!なんて書物なんだ。僕はここで暮らします」

「天鼓君、何冊かは私が持って帰ってあげるから帰りましょ」

 晴海が言うが宝蔵院は言うことを聞かない。

「天、また今度もう一度来て運びましょう」

 ヤーシャがなだめてみた。

「塗壁くんに全部は無理だけど運んであげるから。選んで」

「わかりました。じゃあここからここまでの本をお願いします」

 しぶしぶ納得して持ち帰る本を選んだ。本棚十基分はあった。

「塗壁くんお願いね」

 塗壁は本棚を次々と塗り込んでいった。

「気が済んだかい宝蔵院君、本部長が心配してるといけないここを出るよ」


 書庫を出て出口の門を開けて外に出ると青空が広がっていた。

「うーん、すがすがしい空気だな。宝蔵院君場所を特定してくれないか」

「やっぱり、議員の権化森がネオベゼルの家に売却を斡旋した遺物の発掘現場だ」

 埋蔵調査中の穴だらけの広場であった。

「本当に京都まで来たのね」

 久遠は舎利弗に電話をして無事を報告した。

「早く帰ってくるようにとの命令だ」

「貴具と俺は元の場所に戻って車をピックアップして本部に向かう」

 御堂と貴具は去っていった。

「僕はタクシーで団長とヤーシャさんと研究所に戻ります」

 宝蔵院たちも去っていった。

 晴海は変身を解いて

「じゃあ、私たちは電車で帰りましょ」

 晴海と久遠は歩みだした。

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