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異次元牢獄

「ここはどこなの?私たちはどうなったの天鼓君」

「まさかあの世ってわけはないよな」

 晴海とと久遠は先ほどの場所とは全く違う場所であることに驚いていた。

 神獣、フーが頭を抱えていた。

「またここへ送り込まれたにゃ」

「フーさん、ここがどこか知っているんですか」

 宝蔵院は持っていた計器がすべてオフラインになっていることに気が付いていたが、その原因をフーが知っていると悟った。

「異次元牢獄というにゃ。大昔ここへ何年も閉じ込められてたにゃ。あー」

「フー、昔話してくれたことがあったな。時間の止まった亜空間だそうだな」

 ヤーシャはいつもの調子ですまして聞き返した。

「興味深い空間ですね。何か脱出方法があるということですね。教えてもらえますか」

「天ちゃん、だめなのにゃ。昔ここを出たときはもう一人神獣がいて天叢雲(あめのむらくもの)(つるぎ)という神器があって、空間を引き裂いたのにゃ」

「つまり、脱出用のツールが足りないということですか。困ったな。もう少しこの牢獄について詳しく教えてもらませんか」

「場所を変えるにゃ。昔住んでた小屋があるはずにゃ」

 フーは匂いをたどりながら道を進んでいった。

「待ってー」

 晴海たちはフーについて異次元牢獄の野原を進んでいった。

 しばらくすると大きな湖にたどり着いた。

「素敵な湖」

 そう言って晴海が湖に近づいていこうとすると

「あまり近づかないほうがいいにゃ。(ぬし)が住んでいるから、食べられちゃうにゃ」

 慌てて引き返す晴海

「昔のままにゃ」

 懐かしそうに掘っ立て小屋を見つめるフー

「そろそろ話していただけませんか」

 宝蔵院はフーを急かした。

 フーは話しづらそうにしていたがヒントになればと語りだした。

「昔々、天ちゃんと同じ名前の奠胡(テンコ)という鬼がいたのにゃ。我々と戦っていた鬼にゃ。その鬼が使った爆弾のせいでここへ飛ばされたのにゃ」

「名前が気になりますが、その鬼が作り出した空間というわけですね」

「一緒にいた陰陽師はロストテクノロジーとか言ってたにゃ」

「興味深いですね。でもここは青龍さんの作った竜宮と何か似てますね」

「そう、私もそんな感じを覚えたの」

 晴海も宝蔵院の言葉で気が付いた。

「もしかしたら何らかのバックドア、裏口が用意されているんじゃないかな」

 宝蔵院は目をつぶり、ミシエルからもらった杖でポクポクと頭を叩きだした。

「あたりを手分けして探してみよう。何でもいいから気になるような情報を収集して二時間後もう一度ここへ集合しよう」

 リーダーぽい意見を久遠は言ったがフーが何年も住んで気が付かなかったことが見つかるとは思えなかった。

「貴具、私について来い」

 御堂が最初に行動を起こした。貴具は師匠の言うことは素直に聞くようだった。

「フー、私と晴海を案内してくれ」

 ヤーシャはフーと晴海と行動することを選んだようだ。

「久遠くんはおじさんとタッグを組むか、女気はないがな」

 軽足と久遠は森の中へと進んでいった。残された宝蔵院はまだ思案を続けていた。


「ここは狩場とお風呂にゃ」

 湖に注ぎ込む滝へと二人を案内したと思ったら、服を脱ぎだして泳ぎ始めた。

「ここなら主の心配もないにゃ。ヤーシャも晴海も来るといい気持ちいのにゃ」

 ヤーシャは躊躇なく衣服を脱ぎ捨てフーのところへ泳いでいった。

「ナイスバディな二人はいいわね見せびらかしても、でも気持ちよさそうね」

 晴海をそろそろと服を脱いで滝つぼへ身を沈めた。そしてプカリと仰向けに浮いてきた。

「確かに気持ちいわ。これで空が青ければ最高なのにな」

 ボーっと空を眺めていた。

「晴海、フーにあの刻印を見てもらえ」

 ヤーシャの声に我に返った。

「そうそう、見えないから忘れていたわ。フーさんこの印なあに」

 背中をフーに向けた。

「これは封印の刻印にゃ。晴海の中の何かを封印している見たいにゃ。ミシエルの仕業じゃないかにゃ」

「えっ、いつの間にミシエル師匠が・・・フーさん解呪できる」

「ミシエルに聞いてからの方がいいにゃ。何か考えがあるはずにゃ」

「おい、フーこれは食べれるのか」

 「ヤーシャが大きな魚を捕まえていた。

「美味しいにゃ。久しぶりに食べたいから持って帰るにゃ」

「一度元の場所に戻りましょう」

 真っ裸の三人は服を着ようとしたが

「濡れたままじゃいやね。タオルもないし!そうだ」

 晴海は風神呪符をポシェットから取り出した。

「オンキリキリバザラウンバッタ!火球(ボイデ)付与(エンチャント)

 ドライヤーの風を作り出した。

「うまいこと考えたにゃ」

 そして元の場所に戻ると最後のグループだったようで皆戻っていた。

「晴海様、何か見つかりましたか」

「これくらいね」

 監獄鮭を見せた。

「御堂さんと貴具さんと同じですか。軽足さんが調理中ですよ」

 猪に似た魔獣、ギアーレを狩って帰っていた。

「この石窯使わせてもらってるよ」

 小屋のそばにあった石窯で料理中であった。

「なんだかピクニックみたいね」

「こんな状況でよくそんな気軽なことが言えるよ。みんなどうかしてるよ」

 久遠はこの状況に動じていないチームにあきれていた。

「泳いでさっぱりしたら思い出したことがあったにゃ。天ちゃんのその杖、大昔、結界の通路を開いたカギだったにゃ」

「この杖の持ち主は陰陽師だったんですか」

 宝蔵院は聞き返した。

「ちがうにゃ、鬼の奠胡(テンコ)なのにゃ」

「わかりましたよ。これがバックドアの鍵です」

 宝蔵院は杖を掲げた。

「で、どう使うんだい。宝蔵院君」

「さあ、陰陽師家系の御堂さんと貴具さんならないかわかるんじゃないですか」

 御堂と貴具に注目が集まった。

「さて、どうしたものだか。呪文は想像つくがなにか憑り代が必要だな」

「よりしろ?」

「ああ、何か出口を具現化できる物がいるということだ」

「それなら、可能性としてはフーさんが言っていた主ではないでしょうか」

 と宝蔵院は湖に近づき杖を掲げてみた。

 鏡のような水面に泡が立ったと思うとこちらに近づいてきた。

「あぶないにゃ。私は何度も食べられそうになった凶暴な大魚だにゃ」

「私に任せて塗壁くんついてきてる」

 地面から塗壁がせりあがってきた。

「いくわよ。水無瀬晴海!巨大魚お祓いしちゃうわよ!」

 ゴスロリ戦闘服に変身すると青龍の弓を召還した。

 水辺まで近づいた主は大きな口を開けて宝蔵院を飲み込もうとしていた。

氷結(ギアッチョ)付与(エンチャント)

 弓を射ると主に命中した。巨大魚は口を開けたまま凍結してしまった。

「よし、準備は完了、御堂さんお願いします」

 杖を御堂に渡した。


「あまとぶや かりのゆくさきしめしけれ かのちめざしてとぶらう 道を示したもれ」

 杖を地面に突き立て詠唱した。

 巨大魚の口の中が揺らめき始めた。

「早く、みんな飛び込んでください」

 次々に口の中へ入っていった。

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