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 12月初め、久遠は現場に復帰してきた。舎利弗を指揮官に教団に対して一斉捜査が開始されていた。

 感染病は宝蔵院のワクチンが彼の持つ製薬会社によって安価で大量に製造されたことによって鎮静化していった。

「宝蔵院君のおかげで世界が救われたよ。国民栄誉賞ものなのになぜ開発者として名乗り出ないんだい」

「久遠さんや水無瀬さんの協力でできた薬だから僕一人の功績じゃないよ」

「もう、恥ずかしがり屋さんなんだから、でも私たちは知ってるわ。誰が世界を救ったか」

 晴海たちは研究所で舎利弗の来るのを待っていた。

「天鼓君の会社のマークはなんで青い鬼みたいな印なの」

「あれは平安時代の故事に習ってつけてみたんだ。当時の陰陽師が()()とかいう薬を作って疫病を収めたんだけど、その時に薬袋に青い鬼の絵をつけていたんだ」

「へえ、天鼓君もその陰陽師みたいだね」

「いやいや僕なんて足元にも及ばないよ」

「いや、遅くなった、本部での会議が長引いてね」

 舎利弗がやってきた。

「本部長、お疲れ様です。どうでした教団幹部たちの行方は分かったのですか」

 ネオベゼルの家は捜査の手によって壊滅状態となっていたが教祖や幹部たち四人は行方をくらまして捕まっていなかった。

「指名手配をしているが全く足取りがつかめない。海外にでも逃げてしまったか。まだリストアップされていない信者たちが匿っているのかもしれん」

「国家転覆罪が適用されるとは、戦争でもするつもりだったんですか教団は」

「信者たちは洗脳されて何を自分たちがやっているかもわかっていないようだった。専門機関で治療が行われているが先は長い」

 がっかりした表情で舎利弗は嘆いていた。

「最初に発見した本部と思われるペトラ遺跡のような神殿が消え失せていたのも気になりますね。我々だけでもう一度現地を調査してみましょうか」

 宝蔵院は画像を出しながら意見を述べていた。

「本庁の捜査員たちが入念に調べたが、我々なら何か手掛かりがつかめるかもしれんな。宝蔵院君、現場に出てくれるかな」

「ええ、興味深い遺物が見つかるかもしれませんね。ぜひ」

「私もご一緒しましょう」

 突然の声に宝蔵院たちは驚いた。

「ああ、紹介が遅れた。自衛隊から派遣された。御堂くんだ」

 存在感の薄い痩せた人物が本部長のうしろに立っていた。

「びっくりした。さっきまで誰もいなかったのに」

 晴海はその男をまじまじと観察した。

「すまなかった。普段から気配を殺して生活をしているもので、御堂(みどう)嘉衛(かえい)と申す」

 時代劇のような言葉づかいで自己紹介をした。

「御堂、相変わらずだな」

「軽足部隊長、お久しぶりです。何度かサーカスは拝見させていただき申した」

「見張っていたんだな。それももう必要ないぞ、俺は足を洗ったからな」

「しかし、またこうして手を貸されているではないか」

「そう言うな。これもさだめだ」

 心なしか貴具がそわそわしていたのを舎利弗が見つけた。

「貴具くん、御堂くんと面識があるんじゃないか。顔色が優れんぞ」

「侃すなお、また迷惑かけているだな。もっと心を打ちとけるようにしなさい」

「御堂師匠、お久しぶりです」

 どうやら二人は子弟関係であった。

「あら、よかった貴具さんのお目付け役ができたわね」

 晴海は少し意地悪い目で貴具を見ていた。

「では研究所のみんなで調査に向かうぞ。わしは捜査本部に戻るが久遠くん、しっかりみんなをコントロールするんだぞ。捜査隊のリーダを命じる」

「えっえっ!この人たちのリーダですか」

「そうだ、君が一番の常識人だからな」

「がんばってね久太郎リーダー」

 晴海が久遠の背中を叩いて気合を入れた。

「あっ痛いて!。では皆さんはりきっていきましょう」

「はりきってはないでしょう。久太郎、はっはっはっ」



 現着した研究所のみんなは辺りをうろつき、忽然と消え失せた神殿を探し始めた。

「何か匂うにゃ。とても嫌な臭いにゃ。昔嗅いだことがあるにゃ」

「フーさん、どこから」

「この壁からにゃ」

 神殿のあった場所を指さした。全員で壁を調べ始めた。

「おい、貴具ここに封印の呪術がかけられていないか」

 御堂が手を触れた場所を貴具が調べ始めた。貴具が解呪の呪符を取り出し貼り付けた。 真言を唱えると見慣れない球体が転がり落ちてきた。

 光を放ち始めるとくるくると回転を始めた。

「みんな、逃げて爆弾のようです」

 宝蔵院が叫んだが遅かった。目もくらむ光が皆を包んだ。


「どうやら成功したようだな。これで邪魔者を一掃できた。南風野様にご報告だ」

 火車は走り去っていった。

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