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◆◆◆◆◇◇◇ 転

 車を運転しながら久遠が聞いた。

「晴海ちゃん教えてよ。先生が解いた謎を」

「ちょっと黙って、今計算してるんだから」

 晴海は白鳥から預かった商店街の資料の数字を計算していた。

「少しでいいから」

「だめよ。私が解決するんだから、かっこよく、よしできた」

「危ないときは僕が守るからね」

「いらないわよ。それより本部に応援呼んでおいてよ」


 商店街は夕闇に包まれアーケードには明かりが灯っていたがところどころ電球が切れている。

「ほんと、夜になるとさびれた感が半端ない。久太郎、クリーニング屋と大気軒と八百屋の安岡さん呼んでスナック・洗濯板に集めて」

「はいわかりました」


 そしてスナック・洗濯板に容疑者が集められた。

「おいおい、刑事さんなんだよこんなところに呼び出して」

 クリーニング屋の花田はけげんな顔で文句を言いながら座っていた。

「なんで俺が呼ばれたんだよ」

 久遠に連れてこられた大気軒の馬場

「実太が見つかったとかでも言ってくれるのかい」

 八百屋の安岡が何が始まるのかスナックの中をきょろきょろ見ていた。

「皆さんしばらくお待ちください。事件の謎が解けました。逮捕令状が間もなく届きますので」

 全員が顔を見合わせた。そしてドアが勢いよく開かれた。

「この事件!妖怪探偵水無瀬晴海がスパッと解明してあげる」

 なぜか探偵ハットをかぶった晴海が現れた。

「なんだよこのお嬢ちゃん、昼間もちょろちょろしてたな」

 花田が言った。

「黙って!全部わかってるのよ。この商店街のアーケード維持費の不正使用」

「やっぱりそうなのか花田さん説明してもらおうか」

 八百屋の安岡が詰め寄った。

「待てよ安さん、そんな小娘の言うことはでたらめだ!」

 晴海は書類をカウンターに叩きつけた。

「収支が全くあってないのよ!集めた維持費は別の経費に使われてるわ」

 安岡は赤丸のついた決算書とアーケードに使われた経費を見比べた。

「本当だ。どういうことだ会長さん」

 花田は黙り込んでしまった。

「それが親父さんが襲われたことに何の関係があるんだよ」

「それはここで一昨日口論になったことに関係があるのよ。おそらくこう」



 スナックでの回想晴海バージョン

「花田、やっぱりこの会計は間違ってる。正しく維持費を使わないとみんなに申し訳が立たないぞ」

「仕方ないだろう矢板、組合員が減って商店街費だけではイベントもチラシもちゃんとできないんだ。樺木会計の言う通りやるしか方法がないんだ」

「こんな女のいい加減な方法で乗り切れるわけがないじゃないか。会員の出資金も全部なくなっているじゃないか。会長としての責任はないのか!」

「そんなに怒ることないじゃない。いざとなれば商店街を解散してしまえばいいのよ」

「この出戻り女!黙れ、俺は帰る。明日維持費を払っている人に説明をする」

 そう言い残して矢板は出て行ってしまった。

「どうしよう小町姉さん」

「明日私が説得してみるから安心して」



「と、こんなところでしょ!樺木小町(かばきこまち)!あんたが矢板さんを襲ったのよ」

「何を言っているのかしら、そんな証拠がどこにあるというの」


「あなたは事件の朝、成層軒を訪れたその時にまた馬鹿にされ追い返されたが、怒りが収まらず。キャベツを持ってきて矢板さんを襲ったのよ」

「キャベツは矢板さんに餃子用に足りないから頼まれてもらってきたのよ」

「それが嘘よ!馬場さん、言ってあげて」

「えっ俺が、そうだよ。親父さんの餃子は白菜で作るんだ。キャベツは使わない」

「こんなか弱い手でキャベツが砕けるほど叩けるわけがないじゃない」

「久太郎だして」

 久遠はカバンからキャベツと犯行現場に落ちていたブラジャーを取り出して晴海に渡した。

「見ててこうするのよ」

 ブラジャーのカップにキャベツを入れて紐を持ちぐるぐると回し始めた。

 そしてカウンターを叩きつけた。大きな音とともにキャベツは粉々になった。

「すごい威力だね。晴海ちゃんこれなら非力な女の人でも強打ができるな」

 久遠は感心していた。

「チャモロ族の武器でスリングストーンっていうのよ。これで矢板さんを襲った。指紋を照合すればまるわかりよ。そして配達に来た味岡さんに見られ拉致したでしょ」

「私は関係ないよ!弟がやったことよ」

 と言ってスナックから逃げ出した。

「外には警官がいるから大丈夫。久太郎、二階にきっと味岡が捕らえられてるわ。早く助けてあげて」

「了解であります」

 二階に上がっていくと

「居ました!蜘蛛の糸でぐるぐるに縛られてます」

 声が聞こえた。

「やっぱり、外の警官たちが危ないわ」

 晴海も樺木を追って外に出た。

 警官たちに取り囲まれた樺木が異様な姿に変貌しているところだった。

 背中から足が四本生えてきて大きな蜘蛛の姿になった。

 二階から降りてきた久遠がその姿を見たとき

「えぇえー蜘蛛男じゃなくて蜘蛛女!」

 腰を抜かしてスナックの壁にもたれ込んだ。

「だらしないわね。久太郎、秒で始末するから見てて」

 恐怖でひきつる久遠に壁ドンした。


 そして壁から錫杖(しゃくじょう)を引き出して三回地面を叩き、遊環(ゆかん)を揺り鳴らした。


 キラキラと晴海が輝きだす。錫杖は小さな黒い日傘へ、遊環(ゆかん)の四つが離れ手足に巻き付き、髪はこんもり盛り上げられリボン、フリルのあるゴスロリの法衣へ厚底の編み込みブーツ姿へと晴海を変えた。


「水無瀬晴海!妖怪お祓いしちゃうわよ!」


 日傘を肩に担いだ姿で啖呵を切った。

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