魔法発動
「天鼓君、本当に私に魔法力があるの?その機械は正確なのかな。フーさんは神獣だから魔法なんか使えるんじゃないの。私の師匠の青龍のミシエルさん使ってたのよ。試してみてよ」
「実証しないといけませんね。ではフーさんも測定してみます」
フーに向けた計測器のメーターは最大値まで跳ね上がった。
「やっぱり僕の測定器は理論通り動いているんだ」
宝蔵院は喜んだ。
「ねえねえ、フーさん、どうしたら魔法が使えるの」
「攻撃魔法が得意なミシエルちゃんと違って回復系とバフなんかの補助魔法だけだにゃ。教え方なんかわからないにゃ。ミシエルちゃんに教われば」
「なんだい、僕の噂でもしているのかい」
突然ドアを開けてミシエルがやってきた。
「この前約束したコーヒーをごちそうさせてもらいに来たよ。天鼓君」
「研究所の警備システムも神獣にかかっては形無しだなぁ。今煎れますよ」
宝蔵院は喜んでコーヒーをたて始めた。
美味しそうにコーヒーを飲むミシエルは
「魔法がどうこうと聴こえていたが興味があるのかい晴海ちゃん」
「ええ、魔法力があると天鼓君に言われたけどぴんと来なくて、私にも使えるのですか」
「あゝ、修行したからね。チャクラを開いただろう」
かつて竜宮で座禅をして、七つのチャクラを開いた晴海であった。
「どこか広い場所はないかな」
「トレーニングルームがあります案内します」
宝蔵院も興味津々で部屋に向かって行った。
「晴海ちゃん、君の使っている爆裂呪符も魔法の一つだよ。ただし呪符という媒介を使用しているがね。杖などを媒介に使うこともあるけど何もなくても発動は可能だ」
晴海はひらめいた、塗壁から錫杖を取り出した。
「これなんかピッタリじゃないかな」
錫杖を振り回した。
「うむ、イメージが発動のきっかけだ。まずは詠唱して試してみようか」
ミシエルは手を開きつきだした。
「炎の聖霊よ。わが力となりて業火で焼き尽くせ火球!」
ヤーシャの使っているナイフの的に向かって火の塊が飛んで的を跡形もなく焼き尽くした。
「すごい!よーし!炎の聖霊よ。わが力となりて業火で焼き尽くせ火球!」
錫杖を的に突き出した。小さな火球が的の中心を少し焦がした。
「水無瀬さん、すごい魔法だよ!」
宝蔵院は興奮してしまったが、晴海は不満足そうだった。
「威力が全然違うわ。どうして」
「魔法力が違うからな。毎日座禅してためておくといいよ。それに魔法のタイプは人によって違うからな得意な系統の魔法があるはずだよ」
「もっと練習しなさいってことか。やっぱりしばらくは呪符で戦わないといけないわね」
ヤーシャがいつのまにか的に向かって手を突き出した。
「焼き尽くしなさい火球!」
鋭い火球が的を射抜いた。ヤーシャは涼し顔をしていた。
「彼女も僕のところで修業したからね。これくらいはできると思ったよ」
「ヤーシャさんも水無瀬さんもすごいよ。ほんの少しのきっかけで魔法が発動できるようになるなんて」
「何を言っているんだい。天鼓君、君にもできるよ。君のその天才的な頭脳はチャクラが解放できているからなんだよ。小さい頃から自然とできていたんだろう。これをあげるよ。大昔のものだけど」
ミシエルは古びた杖を宝蔵院に渡した。
「不思議だけどなんだか懐かしい感触があるよ」
慣れた手つきで杖を振り回して
「火球!」
青白い炎が二人に比べゆっくりとではあるが大きく的に向かって飛んでいった。
ミシエルと同じく的を焼き尽くしてしまった。
「天鼓君、すごいすごい!」
晴海は大はしゃぎだ。宝蔵院は茫然と焼け焦げた的を見つめていた。
「宝蔵院君あの測定器はまず自分に試してみたほうがよかったね」
久遠が言った。
「おいおい、サーカスの出し物にできるよ。おっと解散したんだったな。それよりあの本の解析が済んでるんじゃないかい」
軽足の言葉に宝蔵院は我に返って研究室に走った。
少し遅れて研究室に入るとすごいスピードで宝蔵院が翻訳された文書を読んでいた。
「宝蔵院君、それで何が書かれていたんだ。早く教えてくれよ」
久遠はワクワクとしながら聞いてみた。
「残念ながら魔導書じゃなかったよ。クエンティンとかいう人が作った道具の説明書だった。でも興味深い本だよ。特にこの次元のはざまを探す装置は異世界への道を探すのに役に立つはずだよ。実物があればいいのに」
「クエンティンか。名前が似てるな親近感がわくよ」
「バカね、久太郎、あなたがこんなすごいもの作れるわけないじゃない」
「いずれにせよこの本は興味深いよ。あとでゆっくり読んでみるよ」
「みんな、おなかが空いただろう。晩御飯を食べて行ってくれ」
「ごめんなさい。お家で白鳥先生が待っているの。また今度ごちそうになります。さあ、久太郎帰ろう」
「皆さん、ここで失礼します。軽足さんの料理楽しみに待ってます」
二人は満腹寺へと帰っていった。




