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レザーバインディングブック

 10月になるとあんなに頻繁にテレビに出演していた南風野(はえの)天風(あまかぜが)全く出演しなくなっていた。貴具たちが調べ上げた神戸の山荘も取り壊されていた。晴海も警察に協力するようになって半年が経っていた。

「久太郎、すっかり教団は動きを止めちゃったわね」

「あの銀羽配送センターのメダル壊滅作戦が聞いたんですかね。宝蔵院君のスパイウェアも見つかったみたいで情報が途絶えてしまったし」

 晴海の父の書斎で話し合っていた。

「この半年で力強い仲間をできたな晴海ちゃん、超天才児の宝蔵院(ほうぞういん)天鼓(てんこ)君、まだその力の一部しか披露していないが警視庁公安部陰陽課の貴具(きぐ)(すなお)氏、永晴(えいせい)さんの昔なじみの元自衛隊情報保全隊呪術班の軽足(かるあし)団十郎(だんじゅうろう)氏とその娘、諜報部で暗殺部隊のエリート、ヤーシャ、極めつけは四神獣の二人、ミシエルとフー。なんとも頼もしい仲間たちじゃないか」

 恋愛小説家にして仏師の白鳥(しらとり)道真(どうしん)は言った。

「軽足さんのユニバーサル・サーカスが突然解散しちゃったわね。びっくりしちゃった。あの二人とフーさんはどうしているのかしら」

「昨日のニュースですね。僕も驚いて宝蔵院君に連絡したら、なんと彼の研究所に居候してるみたいなんですよ」

「あら、天鼓君喜んでいるんじゃないの、憧れのヤーシャさんと一緒に住めるなんて」

「うらやましいなぁ。あんなセクシーなヤーシャさんがそばにいたら宝蔵院君寝れないんじゃないかな」

「もう、変な想像しないでよ久太郎、あんたも早く彼女見つけなさいよ。これから銭形のところにお祓い行くけどついてくる」

「そうだな。捜査も行き詰っているから気分転換に行ってみようかな」

「よっし、電車代浮いた。さっそく連れて行ってよ」

「ちゃっかりしてるな。わかりましたよ晴海様」

「白鳥先生、今日は晩御飯食べていってね。舎利弗(とどろき)のおじさまからお肉もらってるから」「あ、いいなぁ」

「いいわよ久太郎、電車賃分食べさせてあげるよ。さあ行きましょう」

 二人は出かけていった。

「ふふっ、一番心強い仲間は久遠くんかもしれないな。すっかり甘えられるお兄さんみたいなもんだな」

 白鳥は笑って見送った。



「悪いな宝蔵院君、団員たちのほかのサーカスへの移籍手配や、住むところまですっかりお世話になってしまって」

「僕も無理やり来ていただいて、水無瀬さんたちといると一人でいることが寂しくなって願ったりかなったりです」

「天鼓ちゃん、ありがとうね。こんなプレゼントまでもらって」

 ヤーシャはボディラインのよくわかる戦闘用のスーツを着ていた。

「薄い素材ですけど防弾性能は任せてください。それとこのナイフもどうぞ」

 鋭い刃のナイフを二丁差し出した。ヤーシャはナイフを受け取ると早業でジャグリングして見せた。

「いいわね軽くて」

「ダイヤモンドの硬度に近い特別製の合金です。大抵のものは紙のように切れますよ」

 それを聞いたヤーシャはナイフの刃をぺろりとなめ、冷たく恐ろしい目をして見せた。

「ぞくぞくします。ヤーシャさん」

 宝蔵院はうっとりと彼女を見つめた。

「おいおい、物騒な顔をするんじゃないヤーシャ、あくまで護身用に使えよ」

 軽足は言った。

「団長さんにもなにか装備を用意するので、別室で能力を披露してもらえますか」

「わしにまで何かくれるのかい。こう見えても自衛隊時代は軽業師と呼ばれていたんだぞ」

 でっぷりと出たお腹をさすって見せた。



「晴海ちゃん久しぶり、何か大人っぽくなったね。運転手君も元気そうね」

 いつものようにボディラインがよくわかるスーツを着た銭形が店で出迎えた。

「いろいろと修羅場をくぐってきましたからね。今日の依頼は何でしょう」

 銭形(ぜにがた)響子(きょうこ)の経営する西洋骨董店は晴海の営むお祓い業の顧客だ。

「ちょっとやばそうなものなんだけど、この本を調べてもらいたいの」

 アンティークな革装本を取り出した。

「普通の洋書じゃないのかなり古そうだけど」

 晴海が手に取りパラパラとページをめくった。

「えっ!開けるの、私には開けなかったのに、糊付けされた様子もないしびくとも開かなかったのに」

 久遠は晴海から本を受け取って見て開こうとしたが開けなかった。

「本当だ。開けそうで開けない。これはどういう来歴の本なんですか?」

「南風野天風って知ってるわよね。彼の山荘が解体されたのよ。その解体業者が持ち込んできたのよ。ほかのアンティークな家具と一緒に」

「南風野天風!」

 久遠が口にして晴海と顔を合わせた。

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