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スタンドプレイ

「こら!!!二人とも勝手なことをして!無事帰れたからよかったものを」

 貴具はいつの間にか姿を消して本部長室には晴海と久遠が舎利弗から雷を落とされていた。

「まさか、貴具さんがあんな爆弾まで用意して乗り込んでいるとは知らなかったもので」

「貴具のスタンドプレイということか。わしが彼から聞いていたのはメダルを確認した時点で別件で捜査令状を取って押収するはずだったんだがな」

「もう、いつも勝手にどうしてチームプレイができないのかしら」

「何か特別に教団にうらみでもあるのでしょうか。本部長御存じですか」

「何も聞いておらんが、爆発事故の捜査班に根まわししておかないと、面倒を増やしてくれるな」

 舎利弗はどっかりと椅子に腰を下ろしてため息をついた。

 本部長室のモニターには配送センターの爆発事故をテレビが告げていた。ヘリコプターからの空撮の画像の下のテロップには死亡者やけが人がいるとは報道されていなかった。

「ネオベゼルの名称が一切報道されていませんね」

「表向きは教団との関連は確認されていなかったようだ。一般の企業として登録されているからな」

 舎利弗は腕を組み上を向いていた。あれこれと厄介ごとに思いをはせているようだ。

「とにかく、久遠!貴具の動きをよく観察しておけ、それと宝蔵院君、君も」

 モニターには宝蔵院が映し出されていた。

「すみません。どうも僕の倫理観は一般常識からかなりずれているようですね。修正します」

()()()()()()という言葉を知っているか。報告、連絡、相談、特に相談は必ずわしに頼むよ」

 宝蔵院は超天才児だが如何せん若すぎた。舎利弗はその危うさを心配しているようだ。

「学習します。でもこれで教団に大打撃を与えたことは確かなんですけど。これでメダルのストックはほとんどなくなったと思います。あれだけのメダルを製造するには十年以上かかるでしょう」

「結果がすべてじゃないんだよ。問題はその道筋なんだよ。手段を択ばずに目的を追うことはやつらと同じなんだよ」

 さらに厳しい顔の舎利弗だった。

「しかし、宝蔵院君、よくやった。あまり委縮しないでくれ、君は賢い男だ。次は正攻法で頼んだぞ」

 舎利弗の顔はいつもの優しく頼もしい顔へと戻っていた。

「お小言(こごと)はこれくらいにして今回の件を検証しよう。久遠くん経過報告」

 久遠は捜査手帳を取り出し読み始めた。

「九月初旬、貴具、宝蔵院の両名により銀羽配送センターが教団施設であることが判明、さっそく貴具は配送センターに忍び込みコンピュータにスパイウェアをインストールして経過を観察。その後内部に実験施設と多量の妖怪メダルの存在を確認、本部長に連絡と言った最初でした」

「わしは、別件を探し捜査令状を使用してメダルの押収を命じたはずだったが」

「今日、令状を申請するためにここで待機をしておりましたら、貴具さんから晴海さんと至急現場に来るように連絡を受けたんです」

「うむ、それでなぜ爆発したんだ」

「宝蔵院君の特殊爆弾を携帯していたようでそれでメダルを爆破して、配送センタを飛び出してきたんです」

「宝蔵院君、彼に渡した爆弾は一つだけだったのかな」

「はい、あそこまで建物を破壊するようなものは持たせてませんでした」

「やはり証拠隠滅のため自爆したようだな。それであの君たちを襲った怪物、あれは何なんだ」

 モニターには晴海と餓鬼の闘う姿が映し出されていた。

「ヨーロッパなどで伝説の怪物としてその姿を確認されていますがおそらくは異世界の生物かと思います」

「天鼓君、それがなぜこの日本にいるんだね」

「配送センターの研究室に培養室がありました。何らかの手段で過去に捕捉した個体にメダルを媒介してクローン製造したのではないでしょうか。興味深いですね。そんな方法で化け物を作り出しているとは」

「感心している場合じゃないぞ。大変危険な生物兵器じゃないか、道理で発覚を恐れて自爆するわけだな」

「久太郎の弾丸で倒せるくらいなのでそれほど脅威じゃないんですか」

「何を言っているんだ。君が苦戦した銀のメダルで製造されたらどうする」

 晴海は沈黙した。

「あの施設に銀のメダルはなかったようです。銀のメダルは特別な製造法があるんじゃないでしょうか。せめて手に入れられれば分析できるんですが」

火車(かしゃ)鉄鼠(てっそ)を倒せばいいのね。でもそんな重要な施設なのにあの二人が警備していなかったのはなぜかしら」

 素朴な疑問が口をついた。

「もしかしたら、貴具さんは二人の居場所を知っているんじゃないでしょうか。それで不在の時を襲った」

「久太郎、いい感してるじゃない。あの男ならあり得るわ。今度会ったら口を割ってもらいましょう」

「貴具の件はわしに任せておいてくれ。いずれしっかりと話をせねばならんからな。今日はもう帰っていいよ。久遠くん、送ってやってくれ」

「あれ。久太郎、胸ポケットから紙がはみ出してるよ」

「あれ、なんだろう?」

 久遠が取り出して読むと貴具からのメッセージだった。

「本部長あてのメッセージです」

 久遠は舎利弗にメモを渡した。

 舎利弗は無言でそのメモを握りつぶしていた。

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