母の真実
「天鼓君、どうして私のお母さんの写真がここにあるの」
「この人が水無瀬さんのお母さん?そんなことはないはずですよ。写真の横のキャプチャーによると昭和45年確保と書いてあります。50年前の写真なんですよ」
「似ているんだけどな」
「親戚かなんかじゃないかな。晴海さん、お母さんの親戚は」
久遠も不思議に思い聞いてみた。
「じつはお父さんとお母さんは国際結婚なの。お母さんは龍百花と言って向こうの人なの」
「へーじゃあ日本には親戚がいないんだね」
「でもお母さんが母国語しゃべっているところを聞いたことがないの」
「謎の多いお母さんだね」
「取込中に申し訳ないが捜査の話をしてもいいかな」
貴具が話を遮った。
「貴具君、どんな捜査なんだい」
舎利弗が身を乗り出した。
「奴らがなぜ妖怪メダルを市中に配布しているのかを考えてみたんだ。異世界へのゲートを開けるものを探しているのじゃないかと思うんだ。まずはこのルートの壊滅を進めてみてはどうだろう」
「それでどこまで掴んでいるんだ」
「霊能者の南風野天風を探ろうと思います。奴が流通ルートの責任者だと睨んでいます」
「テレビにも出ている有名人だぞ。慎重に動かないとマスコミがうるさいぞ」
「南風野の別荘と思しき物件をネオベゼル配食センターを調べたときに見つけそこに盗聴装置を設置しました」
「貴具さん、そのデータを僕の方にも回してもらえませんか」
宝蔵院が願い出た。
「頼むよ、俺一人では手が回らない、調べてくれ。あとでデータを送らせてもらう」
久遠は宝蔵院との通信装置を貴具に渡した。
「ありがとう、じゃあ俺はこれで失礼する。これが俺の電話番号だ渡しておく」
貴具は本部長室を後にした。
「大変、白鳥先生が待っているわ!久太郎急いで送って頂戴」
「本部長、行ってきます」
残された舎利弗は宝蔵院と何かを相談していた。
青龍の竜宮では数カ月がたっていた。
「永晴いつまで通い夫をしているんだい。君もここでモモと暮らしてはどうだ」
ミシエルは気がついていた。永晴は異世界の情報を聞いては文献をまとめていたがどうやら女性としてモモを見ているようになっていることを。モモも永晴に強く惹かれていっているようだった。
「ミシエル、冷やかすなよ。でもモモさんに悪いじゃないか。こんな三十にもなるしがない男が相手じゃ」
「あら、私は千歳以上よ。年上はお嫌いかしら永晴さん」
「女性から告白させるなんて、ちょっと無粋じゃないか永晴」
「わかったよミシエル、モモ、俺と付き合ってくれないか」
「いいわよ。あなたならこの呪いを解いてくれそうだから」
「まかせてくれ、一生かけても君の呪いを解いてみせるよ」
モモは永晴に抱き着いた。
「お願いよ」
ミシエルはうしろを向いた。
「モモ、俺の家に住むか。親父に紹介するよ」
二人は竜宮を出て満腹寺に向かった。
永晴たちが寺に戻ると仏師の白鳥が来訪していた。
「永晴さん、その女性は?」
白鳥は長年の友で信頼できる人物だ。永晴はありのままを話した。
「結婚するにしてもモモさんは戸籍がないんじゃないか」
「そうだな。いろいろ不便がありそうだな。どうしようか」
「私が彼女のパスポートを工面するよ。あの国なら偽造のパスポートも金さえ出せばなんとかなるだろう。国際結婚をすればどうだ」
「よくそんなことが思いつくな。君の悪知恵には恐れ入るよ。頼んでいいかな」
「まかせてくれよ。これで一週間ほどで結婚式だな。妻と参列させてもらうよ」
白鳥は笑って出ていった。
そして一週間後白鳥は書類をそろえ龍百花と記されたパスポートと婚姻に関する書類を集め寺にやってきた。
「いろいろ面倒をかけたな白鳥君」
結婚式は白鳥夫妻とともに仏前で晴山が取り仕切り行われた。
「おぬしらの結婚は前世からの因縁であり、先祖の慈悲によるものじゃぞ。来世までの結びつきをご先祖様に誓うがよい」
モモは百花と改め満腹寺に住むこととなった。
「先生、お待たせしてごめんなさい」
「捜査が優先だからね。かまわないよ」
晴海は今日の出来事を白鳥に報告した。
「そうか、本当のことを話す時が来たようだね。覚悟はいいか晴海ちゃん」
晴海は白鳥の目を見つめ頷いた。
「君のお母さんは異世界人だ。教団に拉致されているところを永晴さんが助け出して結ばれたんだ」
当時のことを話しだした。
それを聞いた晴海はなぜか驚くこともなく納得する表情で言った。
「ありがとうございます。白鳥先生、これで心置きなく教団と戦っていけます」
ほほを涙が伝っていた。




