教団本部
「とりあえずここなら安全だろう」
永晴は印を結び真言を唱えた。
「オン サンマヤ サトバン!」
青龍の山の竜宮の扉を開いた。呼ぶまでもなくミシエルはそこにいた。
「どうしたんだい。永晴、そのお嬢さんは?」
「ミシエル、悪いがこの娘をかくまっていてくれないかい。モモと言うんだが」
「永晴さん、この方は」
「四方の神の一人で青龍のミシエルです。お見知りおきを」
「神獣なんですね。モモと申します。よろしくお願いします」
「この世界の人間じゃないようだね」
「ユートガルトという異世界から参りました」
「千年ぶりに聞く地名だな」
「ミシエル知っているのか。ユートガルトを」
「その国から来た者たちに助けられたことがあるんでな。モモを助けかくまうことも何かの縁だな」
「興味深いな。その話はまた今度詳しく聞かせてくれないかい」
「まあ、おいおいと。ところでモモは靴も履いていないし、服もボロボロじゃないか」
「今から買い物に行くので、よろしく頼んだぞ」
言い残し永晴は竜宮を出ていった。
「やれやれ、お茶でも飲んでいけばいいものを。さあ家に案内しよう。ついてきなさい」
「久太郎、こんな山奥まで連れてきて、山登りができる服装ってこういうことだったのね」
一時間余り舗装されていないかろうじて車が通れる山道を歩かされた晴海だった。
「ネオベゼル配食センターを調べていたら、根角滋襟が配達の車に乗っていたんだ。いそいで宝蔵院君から配備されたGPS追跡装置を貼り付けて調べていたら、この場所で泊まったんだよ」
木陰に身を隠して晴海は通信装置を取り出し装備した。
「天鼓君、この場所で間違いないの、先に進もうにも鉄格子に門があって進めないわ」
「この一帯は教団の私有地になってますが、何の施設か不明なんです。久遠さん周りを見せてください」
久遠は通信用の眼鏡で門の付近をぐるりと見渡した。
「門の右上に監視カメラがありますね。晴海さん、僕の渡したメダルで付喪神にしてください」
「ノウマク サンマンダ バザラ ダン センダ マカシャダ ソウワカ ウンタラタカマク」
晴海は不動明王の真言を唱えて青龍の弓を召還し構えた。
「久太郎、矢じりにメダルをセットして」
メダルは溶け込むように矢じりに吸収された。
狙いを定め監視カメラに撃ち込んだ。
「すごい!命中だよ」
「当たり前よ。どれだけ練習したか知ってる」
得意げな晴海に宝蔵院がいった。
「これでシステムにハッキング成功しました。ナイスジョブです水無瀬さん、門のところまで近寄ってください」
門のはエントリー用の端末があった。
「解錠します。気を付けて先に進んでください」
「しかし、令状もなしでいいのかな」
「いいのよ。気にしなくても、やつら自体が正規のルートから外れているんだから」
しばらく歩いていくと二人が驚愕する風景が現れた。
「なに、これ・・・」
「すごい!ヨルダンの遺跡みたいだな」
「ペトラ遺跡に酷似してますね。こんなものが日本にあるなんて」
「久遠さん、水無瀬さん!引き返してください。舎利弗本部長からの命令です」
通信ラインに舎利弗の声が加わった。
「こら!勝手なことをするんじゃない。危険なことだとわかっているのか!」
雷が落ちた。
「とりあえずシステムへのハッキングに成功したので今日のところは引き返してください」
「仕方がないな命令だよ。晴海様、引き返しましょ」
「わかったわよ。実はすごく嫌な予感がしだしたのよ」
二人は急いで下山していった。
車のところに戻ると突然人影が現れた。
「誰だ!」
久遠と晴海は身構えた。
「忘れてもらっては困るな。いいお土産をもらったのにさ」
警視庁公安部陰陽課の貴具侃が待ち伏せをしていた。




