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サーカスの謎

 サーカスで飛び回り演技するギアーレ、異世界の魔獣だ。晴海は青龍の祠、山の竜宮で散々倒してその肉の味まで知っているから見間違えるはずはない。

「このサーカスには何か秘密があるわよ、久太郎、調べるわよ。おじさま後で説明します」

 舎利弗(とどろき)に言い残すと晴海と久遠は客席を後にした。

 サーカスのテントの裏に回った二人はスタッフ用の小さなテントのような所にたどり着いた。

「晴海様、どうしたんですか。一体何があるというんです」

「それを調べるのよ。馬鹿ね」

 晴海はイラつきを押さえることができなかった。異世界の魔獣がなぜサーカスの一団としてここにいるのか不安を抑えきれなかった。

 テントにはうまく忍び込めた。本番中とあってあまり人影がいないのが幸いとした。

 明かりの灯っていない部屋は薄暗く、しかし誰かがいる気配があった。


「こんなところに迷い込んだというわけではなさそうだが何の用だ。不思議な気配を持つお嬢ちゃん」

 突然女の声が聞こえた。

「どなたですか。決して私たちは怪しいものじゃりません。無断で立ち入って失礼しました」

 と答え、あたりを見回す晴海と久遠、そこには(おり)があるだけであ

った。よく目を凝らすと真っ白な虎が横たわっていた。

「まさかこの虎がしゃべったのかな。そんなわけはないか」

「久太郎、そうかもしれないわ」

「なかなか聡明な子ね、お名前は」

 虎がしゃべりだした。

「なにかトリックでもあるのかな」

 久遠は辺りを見回している。

「水無瀬晴海と言います。虎さんは?」

「ほう、水無瀬家のものか。私はフー」

「フーさん、満腹寺のことを知っているの?どうして」

「そうか、やはり永晴(えいせい)百花(ももか)の娘か道理で、ところでこんなところに何だ」

「お父さんとお母さんのことまで知っているのですか」

 晴海は驚いた。どうしてこの白虎が両親のことを知っているのか、混乱してしまった。

「すみません、警察の久遠と言います。あのサーカスの舞台に出ているギアーレとかいう獣について調べているんです」

「そういうことか。あれがよくこの世界のものでないことをよく気が付いたな。ということは竜宮へ行ったのか晴海よ」

「そんなことまでわかっているなんて・・フーさん、あなたは何者なんですか。どうしてサーカスにいるのですか」

「やれやれ、話すと長くなるのだが、簡単に言うと私は西の神獣、白虎である。東の神獣、青龍と対なす存在なのだ。おぬしの両親らとともにこのサーカスの団長の娘を助け出すために行動した結果ここにいるということだ」

 ますます混乱する晴海は

「お父さんとお母さんがどうしているかも知っているのですか」

「なに、永晴がどうかしたのか」

「五年前に母さんと行方不明になってしまったの」

「それは心配だな。私と別れた後のことは知らない。おぬしもまたやつらを追っているのか」

「ネオベゼル教団がお父さんたちの失踪と関係があるのですか」

「その通りだ。永晴はネオベゼルと戦っていた。私も手伝いをしていた」

「やっぱり、やつらを追えばいつかお父さんたちに会えるのね」

「よかったね、晴海様。ところでフーさん、どうしてまだこのサーカスにいるんですか」

「居心地がいいからな。それだけだ」


「誰だ君たちは!ここは部外者立ち入り禁止だぞ」

 山高帽のでっぷり太ったサーカスの団長があの美しい猛獣使いの女とともに入ってきた。

「団十郎、この娘は永晴の娘だ。怪しいものじゃない」

 白虎は晴海たちを団長に紹介した。

「なに、永晴さんの娘だと、どうしてここに」

「水無瀬晴海と申します。すみません勝手に入ってしまって、あのギアーレがどうしてここにいるかを調べていたんです」

「ああ、あれはフーさんの食事代わりにミシエルさんのとこから連れてきたんだが、娘が操れることがわかってな。それでサーカスの目玉にさせてもらたんだ。わしは軽足(かるあし)団十郎(だんじゅうろう)、永晴の旦那の助手をしていたんだ。それでこいつは娘のヤーシャ、ところで永晴の旦那は元気にしているのかい」

「お父さんはお母さんと五年前に行方不明なんです」

「それは大変だな。でもきっと大丈夫さ、タフな旦那だ」

 軽足の言葉は晴海を勇気づけてくれた。

「ありがとうございます。きっと元気にしてますよね、お父さんたち」

「あなたの両親には助けられたわ。私にできることがあったら何でも言ってね」

 ヤーシャがそう言って頭を撫でてくれるといい匂いがした。

「ところで、旦那のお嬢ちゃん、晴海ちゃんだったか、なぜこんな探偵ごっこをしているんだい」

「あっ、私は県警の久遠と言います。晴海様も警察官でして超常現象を捜査しているんです。ネオベゼルの捜査をしているんです」

「なんだって、警察は何をやってやがるんだい!こんな小さな子を危険な目に合わせることをさせるんだい」


「だいじょうぶです。私もこれでも結構タフなんです」

 晴海はテントの壁から錫杖を取り出して変身して見せた。

「おお、これは結構すげえな。うちで働かないか」

「その錫杖を使うものを久しぶりに見たぞ。さすが永晴と百花の娘だな」

 白虎も驚いたようだ。

「お久しぶりでやんす。フースーさん、元気そうでやんすね」

「バットリかおぬしも相変わらずじゃな」

「ところで晴海ちゃん、サーカスはもうすぐフィナーレだ。席に戻って見てくれ。またあとでゆっくり話そうじゃないか」

「軽足団長、サーカスを観に来たのに、申し訳ありません。久太郎戻るわよ」

 変身を解き舎利弗のところに戻っていった。


「フーの姉さん、あの子を手伝う時が来たようだな」

「無理をせずともいいのだよ団十郎、私だけでもいいんだぞ」

「私も手伝うわ。あの子の両親には返し切れない恩があるからね」

「よく言ったヤーシャ!忙しくなるぞ」


 そして二人はフィナーレにテントに向かって行った。

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