青龍のバングル
「さあ、早く起きて晴海、コーヒーが冷めるよ」
「もうあと10分、お願い」
朝が苦手な晴海であっが、何とか起き上がった。
「朝ごはん食べたら瞑想だよ」
2日目の修業が始まった。午前中はチャクラを開く座禅をして軽く昼食を取り場所を移動した。
「結構、森深くまで来たけどどんな修業ですか」
文句をつけていたジャージ姿で聞いた。
「ここら辺は異世界の魔獣がいるので狩りをしてもらう」
「どうやって狩りをするんですか」
「この弓を使いなさい」
ミシエルは金色に輝くバングルを晴海に渡した。
「これが弓?」
「左腕にはめて、不動明王の真言を唱えてごらん」
龍の絵柄のある黄金のバングルを左腕にはめた。
「かわいい、似合う」
「いいよ似合っているよ。錫杖を使えるんだからこれも大丈夫だろう」
「不動明王ね。ノウマク サンマンダ バザラ ダン センダ マカシャダ ソウワカ ウンタラタカマク」
輝きだすバングルは弓へと変化した。
「青龍の弓だよ。君にプレゼントするよ」
「ミシエル師匠、ありがとう。でも矢はどこなの」
「オートチャージになっているんだ。弦を引いてごらん」
右手で弦を引き寄せると光の矢があらわれた。
晴海は近くの木に撃ち込んだ。光の矢は実体化して刺さっていた。
「うまいうまい、そんな感じだ。その弓は丈夫にできているか打撃用に使っても防御に使ってもいいよ」
晴海は狙いをつけて色々な木をめがけて弓矢を撃った。
「あれ、矢が出ないわ」
「12連発で、チャージに一時間かかるんだ」
「5分に一発撃てるということですか」
「その通り、よく考えて撃つんだよ。今は練習だから僕が矢の補充をするから思う存分練習しなさい」
指を鳴らすと28メートル先に的が現れた。
「さあ、鼻先で的を狙うような気い持ちで打ってごらん」
晴海が放った矢は的の上に外れた。
「重力を考えなくていいよ。放った後は光の速さで飛んでいるから、チャクラを開いてまっすぐ狙いなさい」
次の矢は的のど真ん中を射抜いた。
「私って天才」
「あゝ、才能あるよ」
晴海の額には第三の目が開いていた。
「では実戦と行こうか。着替えていいよ」
錫杖を打ち鳴らして、ゴスロリ戦闘服へと着替えた。
「なるべく早く獲物を見つけて距離を置いて狙うんだよ。接近を許すと弓を射る時間が無くなるからね」
晴海は精神統一をすると開いたチャクラのおかげで視覚、聴覚、嗅覚が鋭敏になるの感じた。
「師匠、感じます」
草むら目がけて弓矢を放った。
「おしい、ちょっと外れたね。来るよ」
足音か近づいてきた。晴海は矢を構えている。
大きな猪に似たギアーレという魔獣が晴海に一直線で向かってきた。
晴海が矢を放つ、ギアーレの額を打ち抜いた。
前のめりなった魔獣はそのままこちらへ転がって息絶えた。
「グッドジョブ!今夜はボタン鍋だな」
「この魔獣食べれるんですか」
「豚肉と牛肉の間くらいの味なんだよ。各種肉料理に代用可能だよ。僕がさばいてみるから覚えておくといいよ。何かの時に必要だからね」
「こんなこと覚えて役に立つのかしら、異世界なんて行かないし」
と言いながらミシエルの肉捌きを見学していた。
「狩りの修業はしばらくお休みだ。この肉を使い切ったらまたやってみよう」
「こんな量二人で食べきれるのかしら」
「問題ないよ。僕が本来の姿になれば一回分くらいの食事だから」
晴海はミシエルを見つめた。
「本来の姿って・・」
「一度見せておこうかな」
というと飛び上がった。
くるりと回転すると体長五、六メートルもある龍が空に浮かんでいた。
晴海は目を見開き口をポカンと開けて眺めていた。
「かっこいいです。一度、龍を見て見たかったんです」
「昔はもっと大きかったんだけどやっとここまで成長できたんだよ」
くるりと回ってミシエルの姿に戻った。
「確かにこのくらいの肉ならペロリですね師匠」
「さあ、次はお楽しみの組み手だよ晴海」
「はい、望むところです」
「攻撃するための組み手じゃないよ。防御を主眼にした組手だ。受け切って見なさい」
ミシエルは木刀を持ち晴海に打ちかかった。
晴海は弓を巧みに使い受けた。
「そうじゃない。力をそらすように受けるんだ。もう一度」
夕暮れまでその稽古は続けられた。
「まだ動きが硬いな。私をこの木刀で攻撃してみなさい」
へとへとになっている晴海は木刀を握りミシエルに打ちかかった。
素手で木刀を受けてくるりと体を変えいなした。打ちこんだ勢いで晴海は転んでしまった。
「どうだい何かつかんだかい」
「もう一度お願いしていいですか」
なんども前のめりになってしまう晴海、さらに打ち込みを続ける。
そして、撃ち込んだ木刀をいなされた瞬間、晴海もくるりと体を変えもう一撃ち込めた。
木刀を素手でにぎったミシエルは
「よし、その呼吸だ。今度は僕が撃ち込むよ」
撃ち込まれた木刀を弓をくるりと回転させ後ろにそらすことができた。
「今日はここまで、お風呂に入ってご飯にしよう」
「ありがとうございました。師匠」
一礼をした。
晩御飯はギアーレの鍋だが、晴海は恐る恐る口にした。
「あら、美味しい。ポン酢もいいけどゴマダレも美味しいかも」
「そうだろ、焼いても美味しいから明日は焼肉にしようかな」
「うんうん、食べてみたい」
「明日は少し畑仕事をして野菜も収穫しておこう」
「畑なんかあるんですか。スローライフにうってつけな場所ですね」
「修行以外にも遊びに来ればいいよいつでも、普賢菩薩の真言を唱えればドアが開くから、でもあと30日修業があるからね。しっかり楽しみしっかり修行だよ」
「はーい」
そして30日が過ぎた。
「晴海、これでしばらくお別れだ。よく頑張った」
半泣きになる晴海
「ありがとうございました。ミシエル師匠、必殺技まで授けていただいて、がんばって鉄鼠と火車をやっつけます」
深々と礼をして竜宮を出ていった。
「ただいま、久しぶり。先生、久太郎」
境内で待っていた。白鳥と久遠に挨拶をした。
「久しぶりって、10分ほど中に入って戻ってきただけじゃないか。あれ、ちょっと大きくなってない。ほら」
久遠は手を晴海の頭の先に宛て自分に近づけた。
「やっぱり、一センチくらい伸びてるよ身長」
「ほんと、久太郎」
晴海は自分の胸に手を当ててみた。
「むふふっ、今に見ていろ銭形、成長してんだぞ。新しい下着買いにこう」
スキップをして白鳥のところへ行った。
「先生もありがとうございます。ばっちり修行できました」
ウインクをし首を傾げた。
「久遠くん、晴海さんを家に送ってくれたまえ、僕は歩いて百貨店に向かう」
「久太郎、私、買い物してから帰りたいから付き合ってよ」
「わかりましたよ晴海様」
神社を後にした三人であった。




