◆◆◇◇◇ 転
「根角秘書はどこへ行った」
入口の警備の黒服に聞いた。
「敷地内の物産売り場で権化森さんへのフルーツを買いに行くとおっしゃっていました」
「農園の方へ向かったみたいだな。晴海様行きましょう」
久遠は内ポケットから利用ガイドのマップを取り出してそれを眺めていた。
「僕たちが入ってきた北ゲートの反対側の南ゲートがあるじゃないか。そのまま逃げるつもりかも。僕は走って追いかけますこの道をまっすぐです」
久遠は駆けだした。
五分ほど走ると南ゲート近くの果樹園にたどり着いた。売店にいる根角を見つけた。
「はぁはぁ、ち、ちょっと、根角さん、はぁはぁ・・」
走ったせいで息も絶え絶えとなっていた。
「なんですか刑事さん」
こちらを振り向いた根角は答えた。
その顔まじまじと見つめた久遠は確信を得た。
「は、話をちょっと聞かせてください」
息を整え尋問を始めた。
「あなたはあのメダルが何か知っているんじゃないですか」
「メダル?脅迫状と一緒に送られてきたやつですか。さあ、何かの景品ですかね」
キーと自転車のブレーキ音が鳴った。晴海が自転車でやってきた。
「レンタサイクルを借りてきたわ。何でもあって便利ねこの施設」
尋問をしようとしていた久遠のそばまで晴海は近づいた。
「このメダルよ。見覚えないの本当に」
袋に入ったメダルを根角に投げてよこした。
受け取った根角は、はっとして顔色を変えた。
「やっぱり知ってるわね。久太郎!逮捕してその男!」
「えっ!逮捕ですか。いいんですか根拠は」
「そのメダルを受け取った時の表情見た。それは本物の妖怪メダルよ。さっき私の持っているものと入れ替えたの、それを取り戻して逮捕よ」
言われるがまま久遠は根角の手をつかんでメダルを取り戻した。
「一緒に署まで来てください。詳しくお話を聞きたい」
「くそ!謀りやがったな」
手を振りほどき走り出した。
「何してんのよ。久太郎、早く捕まえるのよ」
逃げる根角を久遠が追いかけたが、一人の男が現れ根角と共に走り出していた。
「ざまあないな。滋襟、ばれてはしょうがないな」
と言い、根角にメダルを突っ込んだ。
根角は大きな鼠へと変化した。
「あれは、鉄鼠じゃない。やっぱりあいつも憑き人だったのね」
晴海は壁から錫杖を取り出し遊環にキスをした。
「オンキリキリバザラウンバッタ!日輪、月光、二人を捕まえて」
現れた二体の鬼は鉄鼠となった根角と謎の男の方へと向かっていき二人を拘束した。
「放しやがれ、吐夢、なんとかしろ」
根角は男に言った。
「しかたねえな」
というと自分にメダルを差し込んだ。
男は炎をまとった大きな猫へと変化した。
「今度は火車、あの二人とも憑き人よ。久太郎さがって」
錫杖を三回打ち鳴らした。
キラキラと晴海が輝きだす。錫杖は小さな黒い日傘へ、遊環ゆかんの四つが離れ手足に巻き付き、髪はこんもり盛り上げられリボン、フリルのあるゴスロリの法衣へ厚底の編み込みブーツ姿へと晴海を変えた。
「水無瀬晴海!お祓いしちゃうわよ!」




