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妖怪メダル運び人

 蝉の声だけが響く石段を本堂へと向かう、久遠(くえん)

「やっぱり車で来たほうがよかったな。散歩がてら宿から歩いたが、この石段がこんなにきついとは」

 汗だくになりながら、いつものように宿で缶詰めになっている白鳥を待つため満腹寺(まんぷくじ)へと向かっていた。

「こんにちは、久遠(くえん)です。こちらでまた先生待たせていただきます」

「上がって書斎で待つといいわ」

 晴海の声が聞こえてきた。

「では、おじゃまします」

 あがりかまちに靴をそろえて書斎に向かった。

 しばらくの間本棚とにらめっこして久遠は晴海が来るのを待っていた。


「お待たせしました。お茶でもどうぞ」

 今日は一番茶を持ってきてくれた。機嫌がいいのだろう。

「どんな要件なの先生への頼み事は」

 久遠の前に座り晴海は聞いた。

「先生にも用事があるんだけど晴海様へも報告が、配属替えがあって新部署に移ったんだ」

 名刺を晴海に渡した。

「特務捜査課(れい)係、捜査ファイル()担当ですって、なにこれ?()担当って」

「署にある捜査ファイルはいろは順に並んでるんだけどその番外事件て意味で科学で解決できなかった事件のファイルを担当することになったんだよ」

「面白そうな部署じゃないの」

「それとこれを晴海様に」

 警察手帳と名刺を差し出した。

「えっ、これ私の手帳なの!」

 手帳を開くとゴスロリに変身した晴海の写真が付いていた。舎利弗(とどろき)が撮ったものだろう。名刺には特務捜査課零係、特別捜査官 水無瀬晴海と印刷されていた。

「うそっ!私、警察官になったの」

舎利弗本(とどろき)部長の直属の捜査官に任命されたんだよ。むやみに人に見せちゃだめだよ」

「拳銃はないの」

「何言っているんだよ晴海様には拳銃よりもすごい錫杖(しゃくじょう)ってのがあるじゃないか。それを行使するためにも特別捜査官にしたんだよ」

「警察の苦肉の策ってやつね」

「舎利弗本部長がどれだけ苦労したか。よく考えてくださいよ」

「わかってますよ。今度はしゃぶしゃぶ用の神戸牛だったし、とても感謝してます。舎利弗本部長さんには」


「やあ、お待たせしたね。車、ありがとう久遠くん」

 鍵を渡す白鳥だった。

「今、お茶入れてきますね。先生」

 晴海は部屋を出ていった。

「白鳥先生ありがとうございます。先生のご提案通りに晴海ちゃんの処遇が決まりました」

「ほう、よく特別捜査官なんて提案が通ったものだ舎利弗さんには感謝だな」

「これでよかったんですかね」

「ああ、あの子を守るための手段だよ」

「先生お待たせ、アールグレイですよ」

「ありがとう晴海ちゃん」


「さて先月の河田精密機械の事件のご報告ですが、警備員の門田はライバル会社からの依頼で開発の妨害をしていたようです」

「そのライバル会社というのは」

「宝蔵院産業という河田の会社より大きな精密機械メーカーです。同じく軍事機密の不正流出で検挙いたしました。

「河田さんの会社はどうなったの」

「どちらの会社も流出前に検挙したので行政処分がなされるでしょうが、河田精密機械は娘の圭子に社長を譲る形で対外的には沈静化を図ったようです」

「お父さんはどうするの」

「なんでもあの収穫日庵(とれびあん)で蕎麦打ち修行するそうです」

「もの作りが根っから好きなのね。でもその不正流出って大きなお金が動くんでしょ。まさかそのお金も」

「ネオゼブルの家との関連も調査中です」

「前の事件の樺木(かばき)や門田に圭子さんにしてもどこから妖怪メダルを手に入れたのかしら?」

 メモ帳を開き久遠は言った。

「インターネットのウェブサイトからじゃないかと言うんです」

「こんなものがネットで買えるの!警察はしっかりしないとだめじゃない」

「そのサイトは悩み相談のサイトなんです。テレビにも出ている有名な人物が開設しているサイトなんです」

「誰なの?」

「霊能者の南風野天風(はえのあまかぜ)です」

「あっ!よくテレビで見るわ。ズバズバと毒舌で人のこと(けな)すデブじゃない。その人が黒幕なの」

「いえ、まったく関係ないと言っているんですよ事務所に問い合わせをすると、妖怪メダルは相談者のところへ直接持ってくるそうで、そんな人物は知らないと言っているんです。逆にハッキングされて個人情報を取られているのじゃないかと被害届を出すというんです」

「つまり関係はないと言っているんだね。しかし怪しいと言えば怪しいな。南風野天風(はえのあまかぜ)とネオゼブルの家の関係はどうなんだい」

 ここで白鳥が口をはさんできた。

「南風野という人物のデータが存在しないのです。出自も本名すら公開されていないので調べようがないんですよ」

「警察の力をもってしても調べられないとは不可思議だな。ますます怪しいとしか言いようがないが今はその行動を注意してみるしかないか」

「すみません。調査不足で」

「その妖怪メダルを持ってくるやつの調べはどうなの」

「三人のところへ行った人物は同じみたいです。似顔絵を作成したのですが」

 久遠は一枚の似顔絵を白鳥と晴海に見せた。痩せて貧そな無精髭の男だった。

「ネズミのような顔をしてるな」

「このねずみ男を探さないと久太郎、がんばってよ」

 久遠の背中を思いっきり引っ張叩いた晴海だった。

「じゃあ、今日のところはこの辺で失礼たします」

 久遠は背中をかきながら帰っていった。


「晴海ちゃん、くれぐれも気をつけてこれからの捜査にかかるんだよ。敵の姿がおぼろげながら見えていたからね」

「白鳥先生、任せておいてね。晴海テンション上がってきたから」


 見え隠れする敵の姿、果たしてその目的は

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