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65話 変態、先生に怒られて諦めオワタ

四方山高校。

何かという特徴はない。

強いて言うならば、ハンドボール部が強い。顧問は雑賀先生。

あと、去年の陸上と水泳部は凄かった。愛さんのお陰で。

魔力なしでも全国クラスの身体能力である。

進学校というほどではないが、有名大学へ進学する人間も少しはいる。

冒険者も捕まったけど、【風騎士】さんもいたし、今は特例冒険者が二人、いや、計五人か。男三人はまだ仮免扱いだけど。

とにかく、冒険業界にも進路を持つ卒業生もいる。

自由度の高さが魅力と言えるのではないでしょうか、うん。


そんな愛すべき四方山高校の校長と自分のクラスの担任に睨まれている。


「学校を辞める……か。まあ、別に辞めるのはかまわない。個人の自由だ。けどね、君、謝罪もなしとはどういうことかね?」


謝罪をしなければならないらしい。

理由はこうだ。

朝、担任に退学の意志を伝える。

馬鹿にしたように溜息を吐き、受け取る。


「お前の妹も、ごまかしてるが、あんな髪の色してるもんなあ」


襟首掴む。校長登場。連行。以上。


「校則で髪の色の指定ってありましたっけ? 推奨はあっても指定はないし。罰則もないですよね?」

「今はその話をしていない! 私の襟首をつかんだ話だ」


いや、その前にお前の発言の話だろう。


「変わった子だとは聞いていたが、まさかここまでとは」


どこまでだよ。


「君の話は聞いている。【変態】なんだってね」


固有スキルがな。


「いじけたい気持ちは分かる。だが、もう少し周りを見てみたまえ」


自己中心的な視点しか持たない大人たちが見えます。


「私も娘に言われたよ。お父さんの学校に変態がいるんだってねって」


で?


「分かるかい、変態を生み出した学校なんだよ! ウチは!」


生み出してはないし、生んでいただいた覚えもございません。

なんだろうか。学校ってなんであるんだろうか。


「……まあでも、変態でもなんでも生徒を正しい方向へ導くのが学校なんじゃないですか?」

「「は?」」


ぽかんとした顔でこっちを見ている。

え? うそ? 俺間違ったこと言った?


「先生は本当に大変な仕事だと思いますよ。モンスターペアレンツ、モンスター生徒、モンスター地域の方々。冒険者よりよっぽどモンスターと戦っていることでしょう」


俺が喰らったあの感じ。あれが先生に向かうことだってあるだろう。そんなモンスター候補を毎年迎えるなんてすごすぎる。


「でもね」


少しずつ大人になっているだろう俺にも分かる。

大人ってのは大変だ。

辛いこと、汚いこと、耐えなきゃいけないことがいっぱい見えてるんだろうから。でも、子供だってあるんですぜ。


「じゃあ、なんでもかんでもモンスター、化け物扱いしていいわけじゃねえと思うんすよ。思春期の繊細さ舐めないで下さいよ……!」


大人が守ってくれないなら俺は俺を自分で守らなきゃいけない。

学校というダンジョンの、人間というモンスターから。


「俺が何か悪いことをしましたか? 固有スキルが明らかになって、いじめが始まって、それに乗っかった先生は悪いことをしてないんですか?」

「それはお前……解釈の違いだ」

「解釈の違いであるなら違いでいいです。俺は傷つきました。変態かもしれませんが、傷つきました。先生は、何か傷ついたんですか?」


眉間に皺を寄せて、困った奴だと首を振る。

ああ、この人は理解できない上に理解することをやめた。

俺とは違う世界の生き物。そう、モンスターになった。

なら、もう会話は無用だ。

生き残るために、戦う。


「分かってくれるとは思ってないです。だから、選ぶだけです。僕は、この学校と違う道を歩きます。今までありがとうございました。失礼します」


俺は部屋を出ていく。扉を閉めても声は漏れ聞こえる。

うっすいなこの壁。うすい。薄すぎる。ぺらっぺらだ。


「な! なんなんだ! あの失礼な生徒は!」

「ああいうスキルをもって生まれたせいでしょうね」


あー。


「失礼します」


ガチャリと音がして、俺の横を人が通りすぎていく。


「誰だ急にっ……って、ああ! 武藤さん、古巣君、それに、君は全国模試9位の新井君、と……さ、更科さんじゃないか? どうしたのかな?」

「私達、退学します」

「「「退学します」」」

「「は?」」

「ま、待ってくれ! ど、どういうことだい!?」

「更科君を馬鹿にするような学校にいたくないので」

「ま、ぶっちゃけ、教育者の発言じゃないっすよね。いやー、やっぱ日本は教育への力の入れ方が違うと思うんだよなー」

「今、その話はいいだろう……。外まで漏れ聞こえていた先ほどの会話は然るべきところに報告させていただきます。私の友人を貶めた罪だけは償っていただきたい」

「この、下衆共」


言いたいことを言って、四人が出てくる。

ニコニコしながらこっちを見ている。

まあ、なんだ。


「嬉しいのは嬉しかったよ。ありがとな」


ドアをドンドンと叩く音がするけど、聞こえない。


ドアの隙間を蜘蛛糸で敷き詰めたのは俺だけどなんで出てこれないか、分からない。


そして、その後の学校の大混乱は、知らない。


特例冒険者、しかも、美人二人がいなくなるという話は生徒の間で持ち切りになるだろうし、アホは大企業のボンボンだし、なによりもしかしたら一番は眼鏡かもしれない。我が校初のT大合格者になると担任が偉そうに言ってたから、その皮算用のダメージは大きいのではなかろうか。まあ、どっちでもいい。俺がしたくてしたことじゃない。


放課後、この学校とも本格的にお別れが決まり、俺はちょっとおセンチな気分で廊下を歩いていた。


「さらしなぁあああ! おいぃいいい! 出て来いぃいい!」


校庭であの声。

マジか、久しぶりー。円城。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


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