48話 変態、肌色見せられてシーツ一枚オワタ
目を開けるとそこは雪国美人の肌だった。
山と呼ぶにはあまりにもなだらかな起伏に白いシーツという雪が被っていました。ナイスブロック。
ちょっと待て。
更科夏輝feat.レイラ氷室in一つのベッドなんだが?
え? ノクった?
夜の大相撲でノクったノクったしちゃった?
国技に謝れすみませんでしたっ!
いやでも何故か氷室氏裸でござるし拙者今パンツを装備しておれど夜戦開始時に枷を外し『ってー!』したのやもしれぬでござるし氷室氏がとても満足げな表情でとても睫毛長いでござるなまるで佐々木小次郎の物干し竿か、なれど、更科夏輝のなまくらは物干し竿とはいえぬゆえ燕返しならぬ唾を飛ばしでおなごに馬鹿にされてもおかしくないゆえに戦の際は変態すべきか偽りなき己の太刀で挑むべきかと二刀に悩む宮本武蔵なれど、『武蔵早いぞ』と言われたら鞘捨てて更科破れたりと言われるこれノクってない大丈夫? 巌流島ていうか終わってない?
という下ネタが俺の脳内を走ること数秒。
佐々木小次郎、もとい、氷室レイラ殿起床。
「起きたか、夏輝」
起きました。
「既成事実を作るつもりが眠ってしまったよ、ふふ」
よかったです。
「今からでも「起きましょう」」
ドロー! ノクのターン! する前に俺はベッドを抜け出そうとする。
「待て。しないから、待て」
場に伏せたトラップカードでないことを祈りつつ氷室さんの声に応えターンエンド。
レイラのターン。
「あの、な……ありがとう」
「え?」
「助けてくれて! ありがとう!」
照れたように叫ぶ氷室さん。
「私は……うれしかった。不謹慎かもしれないが。お前が、死の可能性があっても飛び込んで来てくれて。私を……」
氷室さんが綺麗な青い瞳を潤ませながら俺を見る。
「私を助けに来てくれて。私の所に来てくれて」
涙が零れる。
「泣かないで下さいよ」
「無理だな。溢れてくる。【人狼の塒】を出るまでも、出て救護院に着くまでも。お前が無事だと分かっても。溢れてくるんだ」
「ずっと、泣いてなかったんですね」
「……! ああ、ずっと泣けなかった。泣いてはいけなかった。泣きたくなかった。泣いたら、私は【女帝】でなくなるから」
「泣きたいときは泣いた方が身体にいいらしいですよ」
「だろうな。今、凄く満ち足りた気分だ」
「『泣けばいいと思うよ』」
「誰の、言葉だ……?」
「アニメのパクリです」
「変なヤツだ」
「変なヤツなんです。変なヤツだから、氷室さんもいつもと違うことしても変なヤツは変だと思いませんよ」
「じゃあ、泣く」
「レイラさんのしたいように」
泣きたくても泣けないことが多すぎる。
俺は氷室さんの背中を出来るだけやさしくポンポンと叩きながら、氷室さんが泣き止むまでじっとしていた。
それから、氷室さんはたくさん話してくれた。
「学生の頃、な、流石にこの髪色や目は目立つ。いじめというヤツだ。けれど、私にも意地があった。とにかく身体も心も頭も鍛えた。あからさまないじめはなくなった。が、誰も近寄らなくなった。完全な異物扱いだったよ。でも、私は負けたくなかった。その頃だ。【雪女】というスキルが覚醒し、私は【モノノフ】に誘われた」
氷室さんは淡々と語る。
出来るだけ、自分の心を揺らさないように、淡々と。
「私は、逃げたんだ。その時は微塵も思ってなかったがな。私は、奴らを見返すつもりだった。だが、」
氷室さんの眉間に皺が寄せられる。
俺は話を聞きたい。けど、こうじゃないんだ。
「氷室さん、もしいやじゃなかったらなんですけど」
「なんだ?」
「友達に話しかける感じで話してみてくれません? よかったらですけど」
青い瞳が大きく見開かれ、輝く宝石のように見えた。
「……! いい、のか?」
「いや、よかったらですけどって」
「お前は……変だな。変にも程がある。わ、わかった。……あ、あのね」
「ぶふっ」
「わ、笑うな!」
「はい、だうとー。そこは『笑わないでよ!』のほうがそれっぽいっす」
頬を膨らませる氷室さん。
「……わかった。代わりに、夏輝も友達のつもりでしゃべってよ?」
「ぐふっ」
「わ、笑わないでよ!」
いや、かわいすぎてダメージが。
それから俺達はゆっくり話し始めた。
それは修学旅行の夜のように。
友達だけのお泊まり会のように。
ただただ、静かにおしゃべりを続けた。
なので、関係者各位の皆様、鬼のようにMINEを送ってくるのをやめなさい。私達は健全です。
ラ! と、パンイチ! ですが、健全です。
300件超えてます。やめなさい。
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