19話 変態、愛人に見つめられ身バレ直前オワタ
どうでもいいキャラ紹介
更科夏輝、固有スキル【変態】。好きな食べ物、うどん。だし汁まで全部ちゃんと飲む。
武藤愛、固有スキル【??】。好きな食べ物、冒険者マンチョコ?
「状況は?」
俺は時間稼ぎの為に風魔法で壁を作り、妹である秋菜に問いかける。
ぶっちゃけ、このチームで一番状況判断が出来ているだろうし。
「チーム【疾風怒濤】は生徒たちを庇いながらの戦闘で手一杯。魔力消費、ダメージ共に大きく、もって10分。ただし、武藤愛さんはまだ十分戦闘可能です、が」
歯切れが悪い。俺も、です、が、だ。
「うん、任せてよ。あんたと一緒になら、あたしやれるよ……!」
キラキラした目でこっちを見てくる愛さん。キラキラし過ぎて怖い。
「わたしも手伝いたいですが、生徒たちの安全確保のフォローも考えれば、先生とともに援護が精一杯かと。生徒たちはほとんどが戦闘不能状態です」
だろうな。見渡す限りゴブリン、に見える。
赤ホブの作戦なんだろう。
実際は薄い囲みだが隙間なく並べられ、殺気だって叫んでいる。
冒険初心者は心折れるわ、こんな光景。
「おれ、いけるぜ! くれくらさん!」
アホはいいな。心が丈夫だ。
「僕も大丈夫です。ただ、経験値が圧倒的に足りないので指示に従います」
眼鏡をクイと上げながら立ち上がる男子。ウチの学級委員長だ。
新井慎一郎。
めっちゃ勉強出来るコイツが冒険者志望なんだろうか、ちょっと驚いた。
「僕は固有スキル【看破】です。悪意ある罠や攻撃を事前に感じ取れたり、相手の弱っているところや弱点を見つけられます。レベルが違い過ぎると時間はかかりますが、あの大きなゴブリンの弱点も見つけられると思います」
「分かった。ア……じゃなくて、君はすごく元気だから、クラスメイトを励まし心を守り続けるんだ。そして、眼鏡の君は、チームを安全なところまで誘導を」
あぶねえ、思わずアホといいかけた。アホは気づいてないが、流石だありがとうアホ。
委員長は不満そうに眼鏡を上げているが、理解して欲しい。
「チーム【疾風怒濤】は生徒たちの護衛を、先生と更科さんは殿を。武藤さんは先頭で道を開いてほしい」
全員が目を見開いている。そりゃそうか。要は、俺がひきつけとくからさっさと逃げろと言っているのだ。
正直、戦闘になると足手まといだ。それに、イレギュラーが出張ってきている以上、何が起きてもおかしくない。
むしろ看破持ちの委員長がいて、本当によかった。
「眼鏡の君、戦闘で頼りにされず不満かもしれないが君がいて本当に助かった。今、このダンジョンは異常事態が起きている。君のスキルでみんなを救うんだ」
委員長の眼鏡がクイされる。光っているようにも見える。
「任せてください、この僕に」
委員長……チョロ!
だが、この状況ではチョロい奴の方が助かる。
不満そうな円城や【風騎士】はマジめんどい。
あと、
「そんな……あたしも戦います!」
愛さんも黙って、めんどい。
ただ、今は恐らくこいつ、チョロインと化しているはず!
「君の力も必要なんだよ、愛ある姫」
「え……もしかして、あの時のこと、覚えて……!」
「勿論。だから、頼む。俺の頼みを聴いてくれ」
ぶっちゃけ、狂気の仮面道化は愛に遭遇し、助けたことがある。
なので、イケると踏んだが大当たりだったようだ。
ただ、過去のやらかしを思い出し俺の心に大ダメージ!
「なつ……くれいじーくらうんさんの頼み、聞きます!」
『なつ……』って言いかけたし、『くれいじーくらうんさん』が棒読みだし、気にあるところいっぱいあるが、マジ気にしたら負けな気がするので、無視だ!
「ただ、お願いが……あの、パワーをください。手を握ってもらえませんか?」
黒髪ショートスポーティー美少女が上目遣いに聞いてくる!
こうかはばつぐんだ!
あと、ぶっちゃけ、風魔法で塞いどくのも結構限界なので、さっさと行って欲しいのでとっとと握ります!
秋菜さんの目が駆逐する人くらい白目多めだけど、無視します!
手、柔らかいです! ありがとうございます!
「ありがと! あたし頑張るね!」
タメで喋ってるけど無視します!
なんかオーラ漂っているように見える愛が、武器を構えてクラスメイト達の先頭に立つ。
彼女が決めたら、円城も【風騎士】も従わざるを得ないだろう。
ウチの妹もなんかオーラ漂っている、というか、炎が立ち上っているように見えるが無視します!
「とりあえず、来た入り口まで退避! 通路で相手の攻撃を絞って待機!」
「「「「はい!」」」」
愛(満面の笑み)、秋菜(鬼)、古巣、雑賀先生が大きないい返事。
俺は、壁にしていた風魔法を解除し、入り口方向に【変態】した風鬼の腕を向け、風魔法プラス風鬼の風で竜巻を作りゴブリンの壁を吹き飛ばす。
「行け!」
愛を先頭にチームが走り始める。
俺は、別方向、赤ホブに向かって駆けだす。
それにより、赤ホブは俺に意識を回さざるを得なくなる。
しかも、今まで散々跳ねていたのが、走り出したので警戒心マックスだ。
実は、走っているのはただの魔力の節約だ。
あの跳躍は相当魔力を使う。その上、スピード着替えアンド救出に向かった為に、ずっとベース『紅の蜥蜴飛蝗』に【変態】したままなのだ。
魔力量に自信はあるが、常時魔力を垂れ流し状態が久々過ぎて多少不安がある。
秋菜達の退避が完了すれば、策があるので、それでなんとかなる。
それまでは時間を稼ぎつつ、魔力を温存させたい。
なので、これ以上の【変態】は避けつつも赤ホブには跳躍の素振りを見せ続けながら、ゴブリンを削っていく。
愛たちは、入り口へと駆けていくが、赤ホブも予測していたのか、俺が竜巻で開けたゴブリンの穴が埋まるのも早い上に、横からの挟撃も早い。
ただ、今日の愛さんは違うようだ。
「どっけえええええええ!」
愛の武器、『破壊の大槌』が火を噴くぜ!
すっごいホームラン。大谷翔○みたい。
投げるのもすごいのかしらと思っていたら、ゴブリンぶん投げた。
ゴブリン飛んだ。屋根(天井)まで飛んだ。屋根(天井)までとんで壊れて落ちた。
いや、動画で実力は知ってたけど、今日凄くない?
ほら、同じチームで活動してる風騎士も驚いてるっぽいし、すごくない? 今日。
引き締まった身体をしならせて、大槌振り回し肩に担ぐとニカッと笑いながら愛は叫んだ。
「【青姫】、武藤愛! 固有スキルは【愛人】! 好きな人を好きになるほど、好きになってもらえるほど、愛の力でステータスを分け合って強くなれる!」
おい、おまえ、固有スキルは非公開だったじゃないの。
なんで今こっちを見ながら頬赤らめて言っちゃったの?
うんうん、なるほど。俺と同じで誤解受けそうなスキル名だね。
なんでだろうね。
ずっとこっちを真っ直ぐ見ているね。
へー、好きな人か、誰なんだろう、わっかんないなー。
わっかんないなー、ぴえん。
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