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16話 変態、授業中に妹に呼び出され内申オワタ

どうでもいいキャラ紹介

更科夏輝、固有スキル【変態】。好きな食べ物、うどん。きつねうどんが最初のブーム。

更科秋菜、固有スキル【念者】。好きな食べ物、本当はふかし芋。


さて、水曜日。


『更科夏輝の変態情報、完全に消えてなかったことになってる説』を検証すべく登校。


「変態、来たんだ」


はい、けっかはっぴょー!!! おれ、しゅーりょー!!!


ざわつく教室。

嫌な視線が方々から突き刺さる。


「おおー! 夏輝来たんか!?」


一方、アホキング、古巣正直は何も気にせず話しかけてくる。


「いやー、お前すごいな! 昨日はただの変態だったのに今日は変態ハッカーに進化してるなんてな」


おい、そんなことが起きるなら進化キャンセルだ。もしくは、おれのかわらずのいしどこかにおっこちてない?


アホに聞いたところによると、どうやら昨日の秋菜の画像削除魔法は俺によるハッカー的なアレではないかという話になっているらしい。

まあ、魔法使用はあまり広めるべきではないし、別に訂正するつもりもない。

が、本当に大衆というのは凄い。

見たいものを見たいように見て、聞きたいことを聞きたいように聞く。

そして、都合よく悪者をより悪者に進化させていく。


「おい、変態ハッカー。オレのスマホ弁償しろや」


キングオブ大衆、円城が俺に絡んでいる。


「は? どういうこと?」

「オレのスマホが昨日壊れたんだよ! これもお前の仕業だろ!」

「いやいや、俺が? どうやって?」

「知らねえよ。でも、お前だろ!」


円城、ヤバ。アホより阿呆だぞ。理由とか根拠を述べよ。


「オレこのあとダンジョン研修なんだよ。スマホなくてどうすんだよ」


襟首掴んできた。

流石に俺も腹立つわ。


「……知らねえよ。金持ちなんだろ、自分でなんとかしろよ」


学校では大人しくするつもりだったの猫被っていたが、まあ、もうクラスでの立ち位置は最悪に近いので、素でかます。

お、円城ビビってる、へいへい!


「て、めえ……更科のくせに生意気だぞ!」


先日の姉ジャイア●の方が怖かったぞ、円城ジャイ●ン。

俺は首の辺りの皮膚を小さな針に変態し、ちくり。


「いてえ!」


円城、痛がってる、へいへい!


「てめえ、マジでいい加減にしろよ!」


嘘だろ、円城。お前どうしちまったんだ? 昔のお前はそんなじゃなかっただろ!

昔のお前知らんけど。たぶん、そうだろ。だって、頭おかしすぎるだろ。


「円城! 何してる! ダンジョン研修なしにするぞ!」

「……ち!」


先生がようやくやってきて、円城も渋々引き下がる。


「おい、更科。お前のせいでただでさえ大変なんだ。これ以上みんなに迷惑をかけるな」


ブルータス、お前もか!


担任の言葉に俺はかなりショックを受ける。

クラスメイト達はまあ仕方ない。こんなもんだろう。

ただ、担任てめーはダメだ。

話も聞かずに一生徒を責めるとか本気だろうか。


「お前はK大志望だったな。内申も欲しいなら大人しくしとけ」


内申を盾にとる畜生の所業。

だが、俺は内申点は欲しいのだ。

冒険者ではなく普通の生活がしたいのだ。

だから、我慢するのだ。

のだクリスタ●。


電車で転ぶマッチョ敷かれた担任の姿で心を落ち着けた俺は、何も言わず席に着く。

アホがアホなりに心配そうな顔でこっち見てた。

気使うな、アホ。でも、ありがとな。

担任の登場、そして、俺への攻撃で、再び自分たちの立ち位置を取り戻したのかクラスメイト達が、『オレ達に迷惑かけるなよ』的な目で見てくる。

アホがいなかったら、変態全力で暴れてたかもしんない。


「さて、今日はさっきも言ったが『ダンジョン研修』の日だ。希望生徒はもう準備は出来てると思うが、しっかり持ち物を確認したうえで校庭に集合だ」


マッチョの尻に敷かれていた(想像上では)担任が偉そうに説明している。


ダンジョン研修。

いわゆる職業体験的なアレだ。

冒険者を進路に考えてる、もしくは、気になってる生徒が、上級冒険者と一緒にダンジョンに潜り、ダンジョンの怖さや大変さを知る。

あと、これで授業単位もとれるので、とるっていう奴らも一定数いる。

なんといっても、安全のためにレベルの高い冒険者が同伴するのだ。

なら、話のタネにという奴もいるだろう。


「今回うちのクラスは、チーム【疾風怒濤】さんが同伴を務めてくれる。もう校庭で待っているはずだから、準備できたものから校庭へ。ああ、円城、貸し出し用の現代魔法用スマホが職員室にあるからそれで代用しなさい」

「……うす」


俺を睨みながら円城が頷く。俺じゃねえ! 俺じゃねえよ! ウチの妹だよ!

流石にもうそんな空気じゃないので、円城も絡んでは来なかったが、教室出るまでずっと俺を見てた。

もしかして、俺のこと……トゥンク。


「ほかの者たちは小テストを受けてもらうぞ。成績優秀であれば、ダンジョン研修よりも良い点が貰えるからな。がんばれよ、なあ、更科」


だまれ、たんにん。

居心地悪く目線を窓に向けると、校庭にウチのクラスの面々と、【風騎士】を含む冒険者たち、そして、愛と、何故か秋菜が居た。

思わず立ち上がってしまう俺に視線が集まるが、担任は理由をすぐに理解し口を開く。


「ああ、お前の妹は【疾風怒濤】さんたっての頼みで急遽参加してもらったらしい。魔法担当がけがをしたらしくてな」


成程、ウチの妹は特例冒険者だし、冒険者志望だ。

学校の授業である以上、点も貰えるのだろう。

じゃあ、断る理由もない。

ダンジョン研修のダンジョン程度なら、アイツ一人でもなんとかなるだろうし。


俺は、何事もなかったかのように座る。

担任は俺の肩をぽんと叩くと笑う。


「心配するな、お前と違って、妹は先生の言うことをよく聞くよいこだそうだ……ぃた!」


肩ニードル~。

俺は肩だけ変態させ、針を突き刺す。すぐに戻したし気づかないだろう。


「先生、急にどうしたんですか? それより、小テスト始めないんですか?」

「……ああ、そうだな。テストを配るぞ、前から回せ」


何か言いたそうだったが、時計を見ると担任はすぐに教卓まで戻りテストを配り始めた。


テストは本気出した。

ひゃくてんまんてんだ!

……う、うそじゃねーし! おれ、がんばったし!

これで内申点も多少はマシになるだろう。

あの担任が余計なことをしなければ。


――げぼく――


「げぼしゃああ!」

「ど、どうした!? 更科」


俺の叫び声に慌てた担任が尋ねてくる。


「あ、ああ、すみません。急にげぼしゃあの事を思い出して」

「なんだ、げぼしゃあって」

「あ、違いました、今のくしゃみですくしゃみ」

「……静かにしてろ」


俺は小さく頷くともう一度頭の中に響いてくる声に耳を澄ませる。

この場合耳を澄ませるのが正しいのかわからんが、とにかく集中する。


――げぼく、わたしわたし――


なんだ、わたしわたし詐欺か。

最近の詐欺はテレパシー使うんだな。

悪戯テレパシーを無視しようとしたその瞬間、耳障りなノイズが差し込まれる。

嫌なノイズだった。

俺の背中に汗が流れる。

こういう予感は本当によく当ててしまう。

暫くの沈黙。

教室のカリカリという音だけが聞こえてくる中、俺は手を止め耳を澄ます。


俺は、


小さな、それでいて、はっきりと妹の声が聞こえる。


――にいさん、たすけて――


俺は立ち上がる。

担任がこめかみに血管浮き上がらせて、ゆらりと立ち上がる。


「おい、更科。みんなの迷惑になるなと言ったよな。お前、内申点欲しくないのか」

「欲しくないっす」

「はあ?」

「家族守るためなら、内申点も平穏もいらないんで早退しまーす」


俺は鞄をひっつかんで教室を出ようとする。

担任は眉間におもっくそ皺寄せて手を伸ばしてくる。


「ま、て……! さら、ひあ……!」


ただ、その手は届かないままに、呂律の回らなくなった担任は床に崩れ落ちる。

小さな悲鳴が教室で聞こえる。

息をのむクラスメイト達を軽く見渡す。


「俺のせいだと思う? ……俺のせいだよ。お前ら、覚えとけ……ああ、いや、覚えてなくてもいいよ。俺は覚えておくよ。このクラスのみんなの顔を、絶対に、忘れない」


もう誰も声を上げない。

声を上げれば変態に目をつけられるからだ。


あー、ちょっとはすっきりした。


俺は教室を飛び出し、外へ向かう。

途中、スマホを取り出し、電話をかける。


「はびっ! 氷室どぅわ!」


焦りすぎ。でも、さっきまでの荒んだ気持ちが少し癒される。女神か。

ありがとう、カミカミメガミ。


「ど、どうした!? 何かあったか!?」

「ウチの学校のダンジョン研修で何か起きました。ウチの妹が対応できないくらいの、恐らく……イレギュラーかと」

「……場所は?」

「ウチは【小鬼の洞窟】が毎回研修で使われてます」

「すぐに人を遣る」

「お願いします。あと、俺のダンジョン攻略許可を特例で出せますか?」

「……すまないが、役所だ。恐らく時間がかかる」

「じゃあ、」

「揉み消すのは私の得意分野だが?」

「……! ははっ! じゃあ、よろしくお願いします! 【狂気の仮面道化】が【小鬼の洞窟】現る! なんて記事が出ないように」

「任せろ、そして、すまん。頼む」

「ええ……変態が暴れてきますよ」


俺は、電話を切ると、顔を仮面の形に変態し、服を脱ぐ。

服の下から、紅く硬い外殻が現れる。

黒い仮面の、紅い鎧の男が街を駆け抜ける。


「あれって、昔動画で……」

「マジ!?」

「実在したんだ……」


ちらほらと風の音に交じって声が聞こえる。

まさか、またこの格好で暴れることになるとは。


【小鬼の洞窟】の入り口前で、慌ててバタバタしている警備員たちを見かける。

恐らく上級冒険者からの救援信号を受け取ったのだろう。

こんな最低級ダンジョンでの救援信号なんて予測していなかったのか大騒ぎだ。

そして、俺の方を見て、さらに騒ぎは大きくなる。


「おい! あ、あれ!」

「え? ひい! ク、【狂気の仮面道化(クレイジークラウン)】!?」


そう叫んだ警備員の上を飛び越えて俺はダンジョンへともぐりこんでいく。


そう、【狂気の仮面道化(クレイジークラウン)】。


それは、俺が生み出した厨二の権化であった。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


よければよければ、他の作者様の作品も積極的に感想や☆評価していただけると、私自身も色んな作品に出会えてなおなお有難いです……。


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