【第8回】ファンタジーはどこまで作り込むのか問題
私は今『輝く星の国』という短編シリーズを連載している。
異世界である。具体的にはエルフ(妖精)が主人公だ。エルフのくせに寿命は短い。70歳まで生きれば御の字だ。『夢のないエルフ』である。
彼らは15歳で幼虫から成虫に変態する。その際まゆを作り全くの別人の外見で大人になるという設定になっている。
背中には透明で、それでいながら光に当たると7色になる蝶のようなハネがある。額には触覚があり、髪の毛は透明で集まると何色かに見える。耳はとがっている。
ハイファンタジーだ!
ここまではいい。
書き始めてすぐに気づいた。
『この人たちの主要産業はなんなのか』と。
具体的には何を食べているのかと。米なのか小麦なのか蜂蜜なのかなんだ、と。
私のイメージだと一般庶民は割と高地に住んでいる。それで鶏飼ったり山羊飼ったりして栄養を得ている。
なぜならば『飛べる』からだ。
作物をしやすい(水が豊富な)低地を一面畑にしてそこに毎日出勤し、あまり作物がとれない場所は住居にしているのでは?と考えた。
『空』が移動場所になるというのは大きい。かなりの広範囲を簡単に移動できるということになる。
それならば部族単位で牛を飼いながら草を求めて移動する必要はない。あれは『飛べない』人間の行動様式だ。
定住して元々ある平地を探し出し作物を育てる方が効率がいいはず。
つまり、肉はあまり食べ(られない)が穀物はさまざま育てられるということになる。
それで『小麦』と書こうとして思った。
そんなバリバリ地球産な食べ物、書いていいのかと。
モノホンのファンタジーを書こうとしたらそらもう食べ物から新たに創造しなければならないのではないか。
だがしかし。駄菓子菓子。
食べ物から『創造』するのはかなり高度なワザだ。上橋菜穂子先生ならよかろう!あちら様はモノホンの文化人類学者だからな!!
この世にない食べ物を実に美味しそうに書いてくださる。
でもそんなん私がやってもヤケドするだけである!!!!アッチッチー、アッチッチー、焼き芋焼けましたーである!!
余計なことをするんじゃない!ついでに栗も焼けましたー。
ところであなたは
フレスケスタイ
という食べ物をご存知だろうか?ググらないで欲しい。想像してみて欲しい。どんな食べ物であろうか?
「フレスケスタイ、お好きですか!?」と聞かれたところで「はぁ………まあ……知らないので……」としか言いようがないのではないか。
ちなみに『フレスケスタイ』とは『デンマーク風豚肉のロースト』のことである。
「豚肉のロースト、お好きですか!?」と聞かれたら「好きです!」とか「肉はちょっと……」とか言えるのではないか。
私が『フレスケスタイ』という食べ物を知ったのはYouTuberカジサックのYouTube動画であった。
アンタッチャブルの柴田英嗣に『日頃のお礼を込めてご馳走したい』とカジサックが秘伝カレーを自宅に招いて作ろうとしたのだ。
ところがロケ中、柴田にいきなり言われるのである。
「そんなんよりフレスケスタイ作ってよ!」
フレスケスタイとは!?
「調べないで!想像でいいから作ってよ!!」
無茶苦茶である。柴田英嗣は無茶苦茶な男なのである。あんな『野比のび太の上位互換』みたいな顔してキレッキレなのである。
具体的には
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【飯テロ!?】アンタッチャブル柴田さんの思い出の味を想像だけで作ってみた〜フレスケスタイ〜 1
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という動画で詳細が見られる。
「柴田 フレスケスタイ」で検索していただいてもいい。
大好きな動画なのでぜひ見てほしい。インパルスの堤下敦にあんだけツッコめるカジサックが完全後手後手に回る様がサイコーに面白い。
これでわけわからない料理を作らされ、しかも食べてもらえなかったカジサックは仕返しに
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【ドッキリ】アンタッチャブル柴田さんに手作りフレスケスタイを持って突撃してみた
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という動画を作るのでこれも見て欲しい。
「してやったりカジサック」である。ハリケーン柴田には勝てないが。
いやー。フレスケスタイね。マジ美味しそうですよ。デンマーク料理店に行ったらぜっっったい頼むね。
何を言いたいかというと、このように『聞いたことのない食べ物』を想像してもらうのは難しいのだ。
私はここで『ファンタジーとしてのリアルさ』を1つ諦めた。もういいではないかと。『地球産食べ物』ガッシガシに出してやろうと。『俺の宇宙では出るんだよ』でいこうと。
そんなわけで私の『なんちゃってファンタジー』では「小麦」も「鶏」も「りんご」もでます。『なんちゃって』なので仕方ないのです。
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やるのなら米原万里の『ハルヴァ』くらい攻めたい。ハルヴァは米原万里ファンには憧れの食べ物である。とにかく美味しそう。それでいながら日本にはない。手に入らない。
輸入品を買ってみたのは私だけではないはずだ。
実際食べると『ゴマペースト』みたいだった。
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いや……美味しいのは美味しいが米原万里の『ハルヴァ』はさあ。天国の食べ物っていうかさぁ。万里さんが食べたやつ食べたいなぁ。
なんでも本当に美味しいのはカンダラッチという『ハルヴァ職人』が作るやつで。地元で消費され我々の口には入らないようなのだ。
あああ〜。夢の食べ物よ。
聖書にでてくる『マナ』も食べてみたい。
毎日降ってくるらしい。そんで甘いせんべいっぽいやつらしい。
安息日には降ってこないらしい。翌日には腐るらしい。
平安時代の食べ物『蘇』は子供にねだられて作ったことあるがよくわかんなかった。
味のないミルキーみたいなやつだった。
まあ。どうせファンタジーやるならこのくらいの精度の食べ物を書いた方がいいかなと思います(個人の意見です)
それができないならジョージルーカスのように『俺の宇宙では出るんだよ』って言っときゃいいかなと。
俺のファンタジーにはあるんだよ!!!
言ってやった。言ってやったぜ。後は逃げるだけだ。えーっと非常階段はこちらですか?
【次回】『同人女の感情』
『俺の宇宙では出るんだよ』
スターウォーズ監督のジョージルーカスが「宇宙で音は出ないのでは?」という質問に答えたと言われている名言。実際はちょっと違うニュアンスだったようです。下記を参考とさせていただきました。
ibenzo様『ネットロアの冒険』
『ジョージ・ルーカスは「俺の宇宙では出るんだよ」と言ったのか。科学と非科学の世界
https://www.netlorechase.net/entry/2016/08/14/080000
ジョージ・ルーカスは『適当で良い』と思っていたわけではなく、科学的には間違いでも『創作物』としてのリアリティを追求したとのことのようです。
『嘘はついていいけど嘘くさくなってはいけない』というか。難しいですね。創作は。