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【第6回】3度の飯より好きなアレ【その2】

まだまだ『伏線』の話が続きます。死ぬほど好きだから。


私が初めて『伏線』に打ちのめされたのはとある児童書であった。


なんと伏線が堂々と表紙絵に描いてあったのである。『表紙絵が伏線』だったのである。そんなんあり?『伏線』だよ?


小学生だった私は伏線が回収された瞬間に表紙を見た。高速で見た。そして書かれている人間の人数を数えた。


いち、、にい、、さん、、し、、。


ゲッッッッ。本当だ!!本当に文章の通りになっている!!!


白目になったよ。本の題名と、表紙の絵が合っていない。『()()()()()()()()()()()が伏線』


そんな大胆なことある!?


考えてみればこんなトリックを使われたのはあれから何十年も経つけどあの本だけだ。恐ろしい本だった。


ここでは『ネタバレ』はしないけれども。私はネタバレがキライだからしないけれども。



オートフリートプロイスラー!!!お前だよッッッッすっかり騙されたわ大好きッッッッ。



今回この文を書くに当たって該当の本を検索したのだが、存在しなかった。でもあの本は間違いなく存在している。もはや私の心の中にしかないようだが実存している。わかった人はコッソリメッセージください。ねぇ?あのシリーズだよね?


いやー。あの絵だよあの絵。ぜっったいプロイスラーが書いた本だって。なんでググってもでてこないんだろう。最高の『伏線児童書』なのに。


@@@@


映画『キサラギ』にもやられた。


如月(きさらぎ)ミキ』というアイドルが焼身自殺。一周忌に集まった5人のファン。ところがそのうち1人が「あれは自殺ではなく他殺」と言い出すのである。


最初は『アイドルファンの自慢』みたいな何気ない話が繰り広げられるが、徐々に5人は()()()()()()()()()()()()()()ことが判明していく。


なんでもない話……つまり『伏線』がだんだん意味を持ち始めラストに向けて怒涛のように1本の線ー真実に向かってー走り始めるのだ。


私の中で『好きな映画TOP30』には入ると思う!これぞ伏線!これぞミステリー!!


たが、最大の『伏線』は『如月ミキ』そのものにあった。


映画の最後の最後に『生前の如月ミキ』が映る。


その瞬間に雷に打たれたような気持ちになる。



『あっ!これは売れないわ』と。

『D級アイドルだわ』と。

『だがこの5人が執着するのわかるわ』と。



キャスティング大勝利だ。よくあんな子見つけた。『如月ミキ』役はあの子しない。


キャスティングが映画に無限の説得力を与えた例というか。如月ミキが出てこないことそのものが『伏線』というか。


ぜひ、見れる方は『キサラギ』ご覧になってください。面白いです。


@@@@


『キサラギ』に関連して「表に出るものだけが伏線ではない」という話を重ねたいと思う。


私が真っ先に『好ましい伏線』として思い浮かべるのが『あしながおじさん』。『日本育英会』のキャラクターになってるホラ。山高帽の。足の長ーいあの人。


『あしながおじさん』というのはアメリカの作家、ジーンウェブスター小説で、ほぼ手紙で構成されている。


ジュディは匿名のお金持ちに大学にいく資金を出してもらうことになる。手紙で状況を報告することが条件だ。


ポイントは『主人公のジュディからの手紙』しか載っていないこと。故意に『あしながおじさん』の気持ちが隠されていることにある。


『あしながおじさんが出てこない』ことそのものが伏線なのだ。


あしながおじさんはせっかく楽しみにしてたキャンプ(?)を妨害したり不可解なことをする。


最後に、あしながおじさんが誰かわかることによって『なぜそうしたか』が一挙にわかる。回収の見事さ。


『書かない伏線最高だなぁ』と思い出す度感じる。


@@@@


『伏線の存在』そのものが最後に現れる『伏線』というのもある。何言ってるかわからないだろうが最後まで聞いて欲しい。


映画『12人の優しい日本人』だ。この間NHKBSでやってた。


裁判員制度を扱った映画だが、ある事件に12人の裁判員が集められる。一般人。

これがもうひどい。12人中11人がやる気なし。

ある者は帰ることしか考えてないし、ある者はフィーリングで『無罪』を主張したりして。


しかしたった1人だけ、相島一之演じる裁判員だけが「真実を求めて話し合いましょう!!」とまともな裁判をやろうとする。


これ、普通に考えたら『伏線』は『事件の真相』に掛かる。この事件がー故意による殺人か、偶然起こった不幸な事故かーを我々がミスリードしながら伏線が張られると、映画を見ている人間は思う。


その通りなんですけれども。


最後の最後になって、たった1人の『裁判の良心』だった相島一之が、実は『私怨』以外の何物でもない動機で裁判に参加したことかわかる。


ここで初めて、私たちは『存在すら予想していない伏線』が張られていたことに気づく。


唯一の良心 VS 無責任でひどい11人



利己的な目的のために裁判を進めようとした男 VS 良心の11人


に逆転する。


ここで映像を振り返ると『そういえばあのシーン!あのシーンもあのシーンもあのシーンも!!畜生。伏線だったのか!!!』と悶絶するんですね。


これだから『伏線』は止められない。『回収』はもっと面白い。


私は『伏線』が大好きだ。最後まで読み切ってからもう一度記憶している文章をなぞり『ここが伏線だったのか』と気づき一瞬呆然として、次の瞬間「騙されたーっ!!」って言いたい。


もっと鮮やかに騙して欲しい。もっとたくさんの『伏線』が知りたい。



【次回】物語にはロマンが必要だ(10月15日予約投稿済み)


【2020年10月1日初稿】

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― 新着の感想 ―
[一言] うむう、深い物語の読み方! 私もミステリーは好きですが、そこまで伏線に着目したことはありませんでした。実はなろうで交流始めてから初めて 『伏線』 という言葉を知ったほどに無知で(笑) 伏線が…
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