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あなたは魔物を退治して生活している

 俺は目を覚ました。

 体が怠いのは寄生虫のようだった。

 虫下しの丸薬を荷から取り出すと、少なくなった水で飲み込んだ。

 しばらくすると激しい吐き気とともに胃の内容物を嘔吐した。

 昨日食べたベリーの種やたんぽぽの花のかけらの中に動く生き物がいた。

 何匹もいた。

 ゲロの中でクネクネと身を震わせている。

 俺はブーツの裏でそれを踏みつぶした。

 体の重さは時間とともに楽になっていくのを感じた。

 やはり寄生虫のせいだったようだ。

 念のためもう一丸だけ虫下しを飲むと俺は水場へと向かった。

 山の中腹に池がある。

 小さな池だがカエルもいればザリガニも取れる。食事には事欠かない場所だった。

 池の水で水袋をいっぱいにした。一口飲むと少し泥臭かったが問題はないだろう。

 カエルとザリガニを数匹捕まえた。

 カエルは腹を割いて内蔵を捨てた。

 火を起こすとよく焼いて食べた。

 カエルの骨を噛み砕きながら自分の体を確認する。服には魔物の返り血が付き生臭い臭いを発し、ここのところ洗っていない髪は泥と血で頭に張り付いたように固まっている。伸ばしっぱなしの髭もここらで剃るべきだろう。とにもかくにも評判が大事なのだ。

 俺は服を脱ぐと池の水で体中を洗う。洗うほどに頭や体中のいたるところが痒くなり疼いた。

 体を洗い終えるとナイフでヒゲを剃った。

 頬に数箇所切り傷を作りながら剃ることになる。当然のように剃り残しもあったが仕方のないことだった。

 服は洗い終えると焚き火の近くに吊るした。

 俺は裸のまま剣だけ手元の残し、服が乾くまでの間周囲を注意しながら村についたらどうするのかを考えることにした。

 ヨブの村はどこにでもある貧困の村だ。

 村長は今にも死にそうな爺さんで、半分ボケてしまっている。

 ここでいくら頑張ろうと評判は上がらないだろうが、しかしながら見捨てるわけにもいかない。

 服が乾く頃には日がだいぶ高くなっていた。

「よし行くか」

 焚き火を消すと俺は村へ向かった。



 ヨブの村は周囲を木で作った高い塀で囲まれている。

 塀の外側には畑が広がり、その畑も木で作られた小さな囲いで囲まれていた。

 村の近くの木々は切り倒されており、周囲の見晴らしは良いものだったがそれでも森の近くに有ることが災いし魔物が現れやすい環境にあった。

 街へ行くにははどうしても森の中の整備されていない道を通ることになるから行商も来ることはない。

 何か必要なものがあれば村人が街に買出しに出る必要があるような村だ。

 俺は村に一つだけある門の前に立つと見張りに声をかけた。

「誰かいるか?俺は討伐者だ。仕事があるか知りたい!」

 門の上から男がこちらを覗いてくる。

「ああ、あんたか少し待て」

 声とともに男の顔が引っ込み、少ししてから門の裏で閂を外す音が聞こえた。

 門が僅かにだけ開いた。その隙間から俺が村に入ると、裏にいた男がすぐさま門を閉じ閂を付けた。

 見知った顔の男だった。

 村によっては中に入れてもらうことさえできない。門の外で話を聞き最後に金の入った布袋を門の上から投げ渡されることも多かった。ヨブの村への数度の訪問の結果ある程度の信頼関係を築けたのではないかとそう思う。始め来た時は村の中に入ることはできなかったからだ。

 魔物の駆除の間は村の中で休むことが出来るのはありがたかった。

「村長のところへ行って話を聞いてくれ」

 そう言うと男はまた見張りのため門の上に戻って行った。


 門から細い道を真っ直ぐに進んだ突き当たりが村長の家だった。

 道の両脇の家の中からこちらを覗く顔がいくつも見えた。余所者が珍しい田舎の小さな村ではよくあることだ。子供たちがキャッキャと家の影から顔を出しこちらを見ては隠れている。村人の話し声がポツポツと耳に入る。

 俺はそれらを無視しながら歩いた。

 村長の家に着くと玄関扉の前に女が立っていた。

 歳は20代だろうと思われる髪の長い女だった。

 村長の孫だろうか?

「討伐者さんね。中で話を聞くわ」

 そう言うと彼女は家の扉を開き中に入るように促した。

 家の中に入るのは初めてだった。大抵は外での会話になる。というのも討伐者というのは誰でもなれる職業という関係上まともな奴が少ないのだ。盗賊崩れや犯罪者でもなれるのだから村の中に入れることも少なければ、家の中に上げることなど通常は考えられないことだった。

 リビングに通され木で出来たガッシリとした椅子に座るよう促された。

 俺が椅子に座るとテーブルを挟んで正面に女が座った。

「村長と話をしたいんだが……」

「祖父は1月前に死んだのよ。今は私が村長よ」

 そう言うと女は顔を赤らめながらニコリと笑った。

「あなたのことは知っているわ。討伐者としてこの村に来るのは4回目ですものね。ふふっ。畑の近くまで出て来る魔物がいるみたいだから、今回も出来る限り森の魔物を駆除して欲しいわ」

 彼女は俺を観察するよう視線をあちこちに巡らせている。

「わかった。報酬はいままで通りでいいな」

「ええ、もちろんよ」


 話が終わると俺は村長の家から出た。

 村の中を奇異の目で見られながら村の隅にある物置小屋へと向かう。そこが俺に使うことが許された居住スペースとなるのだ。

 扉がひとつだけで窓もないその小屋は、本来は薪の備蓄を保管するためだけの薪小屋だった。

 床なんてものはなく地面がそのままむき出しになっている。

 壁と天井があるだけいつもよりはマシだった。

 山のように積まれている薪をどうにかよけて寝るためのスペースを確保した。

 横になることができれば何でもよかった。

 小屋の中で腰を下ろすとこれからのことを考えた。

 どの程度の働きをするのかを。

 魔物を駆除すると言ってもし過ぎてもいけない。

 魔物の駆除は歩合制で魔物の種類で一匹あたりいくらと相場が決まっている。村にある金貨の量によって何匹まで駆除してくれと細かく指示を受けることも多い。今回は出来るだけ多く駆除してくれということだったが、果たして金はあるのだろうか?

 報酬は後払いになるため討伐者が死んだ場合は金を払う必要はなくなる。それだから村人が必要以上に良くしてくれる場合は身の危険を感じるのだ。暗殺を考える必要が有る。魔物に困っていても金はない村などいくらでもあるのだ。食事や寝床など言われるままにしていると、毒を盛られるか、寝ている間に襲われ殺されてしまうことになる。

 この村は何度か来た村だが村長が変わった。考え方も変わっている可能性がある。気を付ける必要があるだろう。気を付けるといっても駆除が始まってもいない今は問題ないだろうが。

 俺はわずかに持っている銅貨を握り村の食堂に向かった。

 金をある程度使えば情も沸く。ある程度の知り合いにでもなれば、殺される危険があればそれとなく雰囲気が変わるのだ。

「いらっしゃい。……討伐者さんだね!」

 食堂にはいると店は閑散としていた。

 昼食にはあまりに遅く夕食には早すぎる時間だからだろう。

 席に着くと店主の娘だろう女の子が注文を聞きに来た。

 俺は芋のスープと黒パンを頼んだ。

 食事時なら温まったものが出るだろうが、今の時間でるものにそんな期待はしていなかった。腹に貯まれば良かったし、碌な食事を取っていない今ならまともな料理なら何でも美味しく感じるからだ。

 注文はすぐに来た。

 出されたスープは湯気が立つほど温かく、パンも焼き直したのか表面が温かくなっている。どういうことかと顔を上げると娘が得意げな顔をしていた。

「温め直すにも時間はなかったはずだが……」

「ふふふ。新鮮ですねこの反応は。村の人は慣れちゃってもう何も思わないみたいで……。ふふふ。実はですね魔法を使ったんですよ」

「魔法?」

「ええ、炎の魔法を精霊さんと契約できたものですから。な~にサービスですよ」

 娘はウインクすると厨房の方へと帰っていった。

 魔法が使えるのか。

 精霊と契約できる者は100人いれば1人か2人といったものになる。

 炎の魔法となればどんな効果かはわからないが当たり能力になるだろう。

 俺は少しだけ羨ましく思うと食事を取った。

 久し振りに食べるちゃんとした料理はやはり美味しかった。体に染み渡るように感じた。

 金を払い小屋に戻る。

 魔物の駆除は明日からだ。

 炎の魔法で焼き殺される危険を考慮にいれると床に横になり眠りに就いた。

 瞼の裏で文字が流れ始めた。


 あなたは目を覚ました。地面の上で寝てしまった。体が痛い。あなたは荷袋から虫下しの丸薬を取り出した。あなたは虫下しの丸薬を飲み込んだ。あなたのおなかの中で何かが暴れている。あなたのおなかの中で何かが暴れている。あなたはコポエヒルの幼体を吐き出した。あなたはコポエヒルの幼体を踏みつぶした。あなたはヨブの森を歩いている。ゴブリンの投石。あなたは軽い傷を負った。ゴブリンの投石。あなたは体を屈め攻撃を避けた。あなたは安物の剣をゴブリンに突き刺した。ゴブリンは死んだ。あなたは虫下しの丸薬を飲み込んだ。あなたのおなかの中で何かが暴れている。あなたはヨブの森を歩いている。あなたはコポエヒルの幼体を吐き出した。あなたはヨブの森を歩いている。あなたは汚泥の溜池に到着した。あなたは水を汲んだ。あなたは泥水を手に入れた。あなたは汚泥の溜池を探索した。あなたはカエルを拾った。あなたはザリガニを拾った。あなたはザリガニを拾った。あなたは周囲を探索した。あなたは木の枝を拾った。あなたは木の枝を拾った。あなたは焚き火を起こした。あなたはカエルの死体を焼いた。あなたはザリガニの死体を焼いた。ガサガサ。襲撃だ。ゴブリンが木の棒を振り落としてくる。あなたはひらりと木の棒を避けた。オークが棍棒を振り回した。あなたは吹き飛ばされた。ゴブリンは致命傷を負った。ゴブリンは死んだ。あなたは安物の剣をオークに突き刺した。オークに軽い傷を負わせた。オークは棍棒を振り回している。あなたは体を屈め攻撃を避けた。あなたは安物の剣をオークに突き刺した。オークは死んだ。あなたは焼け焦げたカエルの死体を食べた。あなたは焼け焦げたザリガニの死体を食べた。あなたは汚泥の溜池に入った。体が濡れた。あなたは体を洗った。ゴシゴシ。あなたの清掃度が30回復した。あなたは体を洗った。ゴシゴシ。あなたの清掃度が30回復した。あなたは体を洗った。ゴシゴシ。あなたの清掃度が30回復した。あなたの魅力は元に戻った。魅力-30→18。あなたは休憩した。あなたは休憩した。あなたはヨブの森を歩いている。あなたはヨブの森を歩いている。周囲に麦畑が見える。襲撃だゴブリンが短剣を振り回した。あなたは軽い傷を負った。あなたはゴブリンに安物の剣を振り下ろした。ゴブリンは致命傷を負った。ゴブリンは死んだ。周囲に麦畑が見える。あなたはヨブの村に到着した。門番があなたの動きを観察している。「良く来たな」「ここはヨブの村だ」あなたは村の門を通過した。村人達があなたの動きを観察している。ひそひそ。村の子供たちがあなたの後をついてまわる。「わーい」「お兄さんだれ?」村人達があなたの動きを観察している。ひそひそ。「討伐者だって」「犯罪者じゃないかしら」「村長に伝えてくる」「ドキドキ」あなたは村長の家に着いた。灰色髪のアリアが話しかけてくる。「わたしが村長よ。忙しい。忙しい」灰色髪のアリアはあなたを熱のある目でジッと見つめた。「あなたの話は聞いているわ」灰色髪のアリアはあなたを熱のある目でジッと見つめた。あなたは灰色髪のアリアから魔物討伐の依頼を受けた。「もう少しお話しましょうよ。聞きたいことはいっぱいあるのよ」灰色髪のアリアはあなたを熱のある目でジッと見つめた。あなたは村長の家から出た。あなたは薪小屋に入った。村人達があなたの動きを観察している。ひそひそ。あなたはリズの食堂に入った。「いらっしゃい、何にする?」食堂の娘カリンがあなたに話しかけてきた。「わたしは魔法が使えるよ」食堂の娘カリンはあなたを見てニヤニヤと笑っている。「地獄の炎よ全て焼き払え」食堂の娘カリンはスープの鍋に攻撃した。鍋が燃えている。あなたは芋のスープを食べた。あなたは黒パンを食べた。「おいしい」あなたは満腹になった。あなたは薪小屋に戻ると床に横になった。あなたは眠った。悪夢を見た。



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