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「何処から話していいか分からないんだけど、みんなが噂してるのは違くて私は...何も...してない。」

「やっぱり...じゃあなんで尚更やってないと言わないの?」

「ああいうの、やってないと話していても通じないでしょ?だから別にいいやってなってさ。話すだけ無駄だなって。」

「でも...」

「私さ、中学ん時凄く仲いい子がいたんだ。私も含めて3人組でいてはじめは良かったんだけど、1人がちょっとワガママっぽい子でよくその子のお願いとか我慢してきいてたんだ。ある時私もちょっと耐えられなくなってケンカ?みたいになった。そしたら徐々に1人になっていってさ。それでちょっと塞ぎ込んじゃって...でも、今思うとそんなのバカらしいんだけどね...」

2人の顔を伺いながら話す。なるべく嫌われないように、疎まれぬように。話しながらも本当に言って良いのだろうかと何度も決意が揺らぐ。

「二月。」

ふいに手を掴まれる。

「ん?」

「無理して笑おうとしなくていいんだよ。」

「そんな事ないよ...?今となっては本当にバカみたいで...」

「それでも二月にとっては大事だった人で、とっても傷ついたことなんでしょう?」

「でも、そうしないと私は泣いてしまうかもしれないのに...そんなの2人に迷惑かけちゃうよ...ただでさえさっきも迷惑をかけたのに…」

「泣きそうなのに笑おうと話す二月を見てる方がよっぽど辛いよ。吐き出そうともせず、ずっと抱えてきたんでしょ?言いたくないのなら無理にきこうとはしないけど、もし二月のそれを話したことで、二月が少しでも軽くなるんだったら話をききたいんだ。」

「で...でも、もし話したとしてもめんどくさいと2人が離れて行ってしまうと考えただけで怖くて...」

「そんな事思ってたの?友達ならききたいって思うのは普通じゃないかな?」

キョトンとした顔で飛鳥ちゃんが言う。

「じゃあ私が腐女子で、妄想とかよくしちゃうような奴だって知ったら二月ちゃんどう思う?ありえないって突き放す?」

「そんな事ある訳ないじゃん!飛鳥ちゃんは飛鳥ちゃんだし、変わらないよ!」

「それと一緒だよ、二月ちゃん。私はともかく、何かをよっぽどの理由に離れたりしないよ日向は。」

「そんな...照れるじゃんか、飛鳥。」

「いいのよ...っていうかそんな反応しないでよ。こっちが恥ずかしい。」

「ははっ。」

ずっと肩にのっていた重みは少しとれて、強ばっていた体もほぐれた。

「二月...?」

「ごめん、話すよ。」

「辛くない?無理強いしてない?」

「まぁ、確かに少し強引だったけどさ...ちゃんと腹くくれたから大丈夫。」

「そっか。」

「うん。じゃあ話すね。」

「お願い。」

「仲良かったのは3年の時にクラスが一緒になった子だった。はじめは普通だったんだけどだんだん2人とは微妙な価値観のズレがある事に気がついた。それでもいいって思ってたけど、あっちも気づいたみたいで溝は深くなる一方だった。2人のうち1人は女王様みたいな子だった。その子と私で合唱コンクールのピアノのオーディションを受けた。そしたら私がオーディションに受かった。最後だし、凄く私としては嬉しかった。2人に言ったらきっと応援してくれるって思った。だけど、今まで真面目にやっていた2人はそれからの練習は真面目に取り組んではくれなかった。」

「そんな...」

「2人との距離は遠くなったけど私は頑張ってその場所にいたかった。そこが私の居場所であるって思ってた。でも、ある時2人の会話を聞いた。

『二月ってなんであんなに私達に必死なんだろうね。馬鹿みたい。』

『それね。あの子、自分がハブられてるって分からないのかな。』

そっか...って思った。私はその時はじめて気づいた。自分にははじめからあのふたりの中に居場所はなくて無理して頑張った意味もなんにもなかったんだって。それからは卒業まで何にもないフリして終わり。そんな感じ。」

「うぉぉぉぉん。」

凄い形相で日向ちゃんが泣いていた。

「ぞんな...卒業まで...づらがったでしょ。はなじ...しでくれで...ありがとう。」

「そうだよ。友達と思ってた子にそんな事言われたら...きっと辛くてたまらない。」

飛鳥ちゃんも泣いていた。

「2人とも...。でも、こんな小さな事ずっと根に持ってて...こんな自分になって...」

ぽたぽたと熱く落ちてくる。制服が涙で滲む。拭っても拭っても変わらずに落ちてくる。

「ずっと抱えて...。他人からどう思われてても二月ちゃんが大変な事だったんだったらそれは大きな事だったんだよ。」

「たくさん泣いて...いいんだよ。二月...。」

2人が私を抱きしめる。

「あんたが1番泣いてるじゃない、日向。」

「そういう飛鳥も泣いてるじゃん。」

怖がって話をしない選択をとらなくて良かった。私の話をきいてくれて、私の為に泣いてくれるそんな友達がいた。それだけで今まで我慢してた事が良かったって思った。

今まで分の涙をたくさん、たくさん流してその後に笑って

「ありがとう!」

って言ったら2人はまた泣いて大変だ

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