わたしを拾った義父が遺したのは実の息子の居所でした
タイトルで既にネタバ……
両親に見捨てられたわたしを拾ってくれた義父がつい最近他界した。
交通事故だった。
交通量が多い時間帯に発生したことで、何台もの普通車と大型車がもみくちゃとなったそうだ。
頭蓋骨を骨折し、病院に搬送された時点で既に息を引き取っていたと聞く。
再び天涯孤独となったわたしは先々週まで通っていた高校を自主退学すると、
わずかな私物をまとめて、今では思い出すだけで胸を締め付けないばかりの思い出が
詰まった我が家を後にした。
ふと角を曲がったところで男性に呼ばれた。
「ああ、よかった。さっきアパート見てきたら誰も出ないから心配したんだ」
「……確か佐々木さんでしたっけ?」
職場の同僚の方で、義父の葬儀でもお世話になった。
「なかなか連絡をとれずにすまなかった。何分このところバタバタとしていたものでね」
少なくとも事後処理に追われている、なんて言い方をする人ではなくてよかった。
ただあまり親しい間柄でもない。
「すみません手間を取らせてしまったみたいで」
「キミが気遣う必要はないよ。生前の恩もあるし」
義父の仕事についてはあまり知らない。しかしぶっきらぼうでいて、口下手なお人よしという性格はどこでも変わらなかったようだ。
「それよりキミのことだ。学校辞めたそうじゃないか?」
「…………」
死んだという現実も受け止められないまま、いつの間にか作られた私名義の口座には常人の半生の労働対価に値するであろう額が振り込まれていた。
学校を卒業できるだけの貯蓄はあったはずだ。
「いいんです。少し気持ちを整理する時間が欲しかったところでしたし、あまり思い入れもなかったので」
「まあ、キミがそういうのなら……」
佐々木さんは少しだけ目線を下げた。
しばらくはお互い沈黙が続いていたが、彼が何か思い出したように一通の書類を取り出した。
「そういえば亮から渡されていたものがあったんだった」
そう言って手渡された書類には一つに住所が記されていた。
「……ここは?」
「……身寄りのない子供たちが暮らしている施設という話だ」
「なるほど」
もしかしたら自分の身に何か起こった時のためにこれを佐々木さんに預けていたのかもしれない。
やや崩れているが味のある義父の字を見ていると、また涙腺が緩んだ。
施設の責任者の方はきさくな女性だった。
あまり感情を出さないわたしとの会話も落ち着き払って続けてくれた。
「実はね。一応、私が責任者という扱いにはなっているけど、実際をここで実働面で支えてくれている人がいるから、よければその人とも話をしてくれないかしら」
頷くと、キッチンと思わしき部屋へと通され、そこで鍋を煮込んでいる少年と二人きりとなった。
「……えっ」
振り返った少年の顔立ちを見て衝撃が走る。
「どうやらもう察してくれただろうけど、僕の名は愛場陽。愛場亮の血の繋がった息子です。初めまして愛場遥さん」
一人称の物語が書きたくて始めましたが、難しいですね。
この後の展開も考えていますが、連載で続けられるか未だ検討中。何分自分にとっては難しい内容であるからです。
もしこの短編を御一読くださったなかで、何かインスピレーションを得られた、自分ならもっとよくこの後の展開を書けるだろう、さらにいい設定に活かせる、というかもう続き書くわ、と思われた方がいましたら是非。
あと気軽に絡んでいただけると幸いでございます。長文失礼しました。