俺TUEEEEは好きじゃない、どちらかと言うと恋愛系が好きさ
戦闘訓練という名の武器を手になじませる行為が終われば、やはりと言うべきかアルさんに止められる。
朝倉さんには後で来てくれればいいよ、とサーシャのことも伝えてからアルさんの後ろを歩く。
「どこへ行くんですか?」
「安心しろ、王宮の庭の噴水に行くだけだ。そっちの方がムードがあるだろ」
クスクスと聞こえるように笑うアルさん。顔を見てはいないため反応に困る。怒りながら笑う人もいるくらいだから。
格闘場から数分でその場へとつく。見た感じは作った感満載で煌びやかさのない噴水。
確かに夜に男女が出逢えばそのようになるのも致し方ないだろう。
へりに腰掛けたアルさんの隣に座るとすぐさま口を開く。
「それでなんで僕が女だってわかったんだい。それに聖騎士は男子がなるという差別があることも」
甲冑を外さないで話す姿は想像すればかなり滑稽だ。そんな感情を表には出さないようにポーカーフェイスを装う。
「簡単ですよ。元の世界ではそんなこと小説の中でよくある話でしたので。それになんでわかったかは手の内を晒すことになるので話せませんが」
笑いながら甲冑の奥の瞳をじっと見つめる。なるほど、心眼ともいえる俺の隠しスキルは彼女は綺麗だと言っている。まあ勘でしかないのだが。
「……済まないね。こちらが手の内を晒さないと見せるわけには行かないよな」
そう言いながら甲冑を脱ぐアルさん。予想通り美しく短髪のブロンドヘアーは風に少しだけ抵抗している。タレ目の瞳からは感じられないほどの威圧感があるがそれが聖騎士として必要なものだったのだろう。
「そうですね。……俺が鑑定眼を持っているだけです。それ以外に聞きたいことはありますか」
「そこが問題なんだよ。僕の鎧は鑑定を阻止するんだ。それこそロイドでも無理だろうね」
「ロイド? ローブの男の人でしょうか?」
「そうだ」と答えるアルさんはニコニコと笑っている。これが地なのだろうか。
「多分、それが俺の与えられた力なんだと思いますよ。召喚士で鑑定士。なんかかっこよくありません?」
アルさんの近くで笑ってみせる。
「俺は戦闘員であり非戦闘員です。サーシャの首のネックレスも作りましたし。ここを出ても生きていけるでしょうね」
ちょっと口を滑らした感は否めないがアルさんにならいいだろう。
「面白いな。僕もなんだよ。僕の天から授かったスキルは料理なんだよ。料理を上手く作りやすくなるっていう。それでよくここまで来たよ」
「俺はなんて言うかあいつらとは合わないんですよね。他人を見下すだけで」
「わかるよわかる」と手を取ってくるアルさん。いつの間にか外した篭手は横に置いているようだ。
ふにっとした感触はとても心地よい。もっと触れていたくなる。
「僕もこの鎧をダンジョンで手に入れるまでは騎士なんて夢のまた夢だったからね。今では僕が女だってわかってても力で叶わないから何も出来ないのさ。この国で二十番くらいには入るからいいように使いたい気持ちが丸見え」
ため息を吐くアルさんの手を強く握る。
「少なくとも俺はわかりますよ。綺麗だからとか女だからとかは関係なく。そんな気持ちは辛いですからね。……まあ境遇として違うとすれば俺は自分からっていうところですかね」
「自分からかい?」
「めんどくさいんですよ。有象無象の相手は。大きなことを言うだけで他人を虐げることしか出来ないなら能無しと代わりないですよね」
そう言うとアルさんは「違いない」とケラケラ笑った。俺もそれを見て笑ってしまった。それがバレたからか、
「それだよ、君には笑顔が似合う」
アルさんは俺の頬に手を当てそう言ってきた。至近距離で。呼吸の触れ合う距離で彼女の匂いが鼻腔をくすぐる。
「……そうですね、笑うことにします。後アルさんも笑った顔が良く似合いますよ。出来れば俺にはその姿を見せていて欲しいです」
笑い返してアルさんを見つめる。不意にアルさんは一言、
「アルでいいさ」
そう呟いた。その時の彼女の笑顔が頭から離れることは無かった。彼女と王宮内で別れるまで。
アルフラグがピンピンたっております。
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