1ー2ー14 約束3
書けました……。
このまま休みが続いてくれれば楽なのに……。
大好き?
大好きってあれだよな。お兄さんとして好きであって結婚したいとかではないよな。うん、多分そのはずだ。
どうも共感というものはオンオフが可能らしい。まあここはプライベートの問題でありがたく感じるけどね。
さすがに俺も男だから夜になればそういうことを想像するわけで、それがリコに届いてしまったら困るし。
だから安心してリコが俺のことを恋人にしたいとかって意味で言っていないことは分かる、うん。いや、そう信じたい。
よく考えろ?
妹もしくは娘から結婚してくれとかどこの同人誌だ。あいにくと家族に手を出そうとするほど性根は腐っていない。……血が繋がっていないと言えばそれまでだけど。
「ふにゅ……」
「そういうのは今度な」
頭を撫でて後回しだ。
高校生だったし妹がいなかったから対応に困るけど、本とかで読む限りこれで間違いはないはず。少なくとも朝倉さんはこれで誤魔化すことが出来た。大丈夫……なはず……。
それにここから逃げることが一番大切だしリーナさんとの約束も守らないといけない。最悪はこの街から出ることも視野に入れて行動しないとな。本当はランクを上げてから帝都に行きたかったんだけど。
それにしても俺のステータスに変化はないな。リコが俺からステータスを奪ったと言っていたから見てみたけど。
うん、これなら行けるはずだ。
自身がいる場所の座標にピンを刺し確認してからシャノンに魔法を構成してもらう。戻る場所は決まっている。リーナさんの待つ宿だ。
体から力が抜けていく。
ダメだ! まだ倒れてはいけない!
なんとか力を振り絞るけど歩くのが精一杯かな。ここに来てミドラ戦の影響も来たようだし。早く帰って休みたい。
『すみません! 敵が来ます!』
『分かった! 早く準備を整えてくれ!』
俺はまだ休めない!
リコを守るために!
「お兄さん? ……誰か来るですね」
「……そうだ、だから待っていてくれ」
リコに手を払われた。
「……くまさんに手を加えたのはお兄さんですね? ……この子がいればリコも戦えるです。そんなにボロボロの体で戦ってはいけないです」
「……そうも言っていられないだろ。俺はリコを助けるために来たのに」
「戦えるです! リコだって! ママと一緒で戦えるです! リコのためにボロボロになったお兄さんを守るです!」
固く閉まった扉が開く。
オーソドックスなスキンヘッドの男が三人、ステータスは俺に比べればとても弱い。でもリコにとっては同格と言える存在だ。
……リコが死ぬかもしれない。
戦えるか? ……違う! 片方で戦うからダメなんだ!
「……それならリコ! 一人は任せるぞ!」
「! ハイです!」
駆ける。
まずは分断からだ。この後、倒れてもいくらでもやり方はあるさ。問題なのはここで俺が倒れてしまうこと。リコだけを返させるとかそういう手を取るしかないかな。
大丈夫、これくらいならエヴァの時の方が辛かった。違法手術を使えば具合の悪さを軽減させられるみたいだしな。……ドーピングでこういう効果を得られるってことは麻薬なのかな。そうじゃないことを祈りたい。
男二人の首根っこを掴み部屋の奥へと投げつける。そのまま扉を閉めてから蹴り出す。
『魔力は集まりました! 後は構成するだけです!』
『早くしろ! 俺もどこまでもつかは分からないからな!』
そう恐怖はそこだ。
違法手術で動けるようにしているけど圧倒的に練度の低い手に入れたばっかりのスキルだからな。いつ効果が切れるかは時間の問題だし分かりっこない。
だから早くやる。
悪いが生かしてなんとかするという手は取れないからな。殺す覚悟でやらせてもらうぞ。
ダーインスレイヴを下から振り上げる。
剣でガードの体制を取ってきたが剣ごと切り裂いた。血飛沫と共に隣の男の表情が驚きの者へと変わるが知ったこっちゃない。
まだ、怒りが収まっているわけではないからな。リコを連れ去ったやつの仲間達なら生死をさまよう覚悟はあるだろ?
そうは思っていても男の体を、首を狙っていない自分の甘さに苛立ちを覚える。未だに人を殺すことに抵抗があるのだろうか。
あっ、ダメだ!
再度体から力が抜けていく。
違法手術が切れたんだ! こんな大事な場面で!
違う意味で驚いた男は体勢を立て直して剣を振り下ろしてきたが見えない何かにぶつかる。結界を張ったからだがいつまで持つか。
……もう一度ドーピングをするか? いや、効き目が薄くなる可能性もある。それに中毒性でもあったら余計に意味がない。
最後の力を振り絞りダーインスレイヴを上に突き上げる。……剣を持っていた利き腕を持っていっただけだ。
「……死ねぇ!」
そういえばこの男の声を聞いたのは今が初めてかもな。余裕がなかっただけなんだけど。最後の抵抗だ。
ダーインスレイヴで剣を受ける。そのまま弾かれて壁へと突き刺さった。やっぱり力が入らなかったからなぁ。もう、限界みたいだ。
仕方ない……もう一回だけ……違法手術を……
「入れさせないです!」
「……ッツ!」
俺の目の前の虚空からくまの右手が現れ男の頬を傷つける。そのままそこが発火しその周囲を燃やしていく。パチパチと何かが弾ける音が聞こえ虚空からくまが体をひょっこりと出す。その姿はとても可愛らしく男に大ダメージを与えた存在とは思えなかった。
そしてそのまま躊躇することなく、くまの左右の手は男の首を飛ばした。俺でさえ初手で怖くて出来なかったこと。それをくま、いや操っているのであろうリコが行ったのだ。
あいにくとシャノンは魔法の構成に、俺は能力の反動でくまを操る余裕なんてない。だからリコがやった以外に出来る人はいないのだ。それに……くまの背に繋がる糸はリコの両手から出ているもの。
そのまま出てきたくまは俺が最初に傷つけ動けなくさせた男の首を落とす。……日本人だからとか元の世界のマナーとかそういうものを持っていても仇になるだけなのに。それを俺はまだ守ろうとしているのか。
『マスター! 考えるのもいいですが早く戻りましょう!』
準備が整ったのか。
……早く帰ろう。ここまで気分が悪いのは久しぶりだ。主に自分に嫌気がさしてくる。
「リコ! 動けないから俺の手を取れ!」
トテトテと可愛らしく走ってきたリコの手を取ってそのまま飛ぶ。そこからリコを抱え俺はついに意識を失ってしまった。
◇◇◇
明るい。
ここはどこだろうか。シャノンがいるから転移失敗はないはず……。
うん? 柔らかいな?
俺は少しずつ瞳を開けていく。
手探りでまさぐっていたもの、そして頭で感じた柔らかな感触も全てが分かった。そのまま俺は頭を撫でられる。優しいが職業のせいか、少しだけ大きな手だ。
嫌な感情は湧かずそれを受け止める。
心地いいな。また眠りたいほどに気持ちがいい。いっその事、もう一回寝ようかな。
「目が覚めましたか?」
「はい、ありがとうございます。ところでなんで頭を撫でているんですか? リーナさん」
「……私がしたかったからです。凄く心配したんですよ。私の前に現れた時にはリコもあなたも気絶した状態だったんですから」
微笑みながら指さしていた方を向いた。
壁際で布団に包まり涎を垂れ流し眠るリコの姿が見える。ああ、そうか。俺はリコとリーナさんを救えたんだな。感慨深いものがあるなぁ。
「感謝しています。私のこともリコのことも助けてくれて。……さっきユラさんとSSSランクを名乗る少女が来ていましたし、ヨーヘイが目を覚ましたと聞いたら喜びますよ」
「……それなら二度寝は出来ないですね。魔力も回復したみたいなので起きます。……すいません……ちょっと起きれないです……」
起きるというのに手を握って起こさせないのはどういうことか。……もう、どうすればいいの!
困惑していると俺の小指にリーナさんの小指が絡みついてくる。そこでようやく気がついた。ああ、約束を守ってくれてありがとうって言いたいんだなって。
頬に何かが当たる。
少しだけしょっぱくて、それでいて顔の上から降った水滴。一粒落ちるとその後はとり止めもなく俺の顔へとそれが落ちてきた。
「……ごめん……なさい……」
「……いいんですよ」
水滴を拭うために離された手。
自由になった自身の手で体を起こし何度拭っても止まらないそれを一緒に拭いた。
いたたまれない気持ちが強くなる。
なぜか俺が泣かせてしまっている気がするから。そんな気持ちを払拭するために無理やりリーナさんの小指を取る。
さっきやっておけばよかったな。
再度絡めてリーナさんにも聞こえるように、それでいてリコが起きないように小さな声で魔法の言葉を呟いた。
「……ただいま。約束は守りましたよ」
そのせいで余計にリーナさんのそれの勢いは強くなったけど変わらずに拭うだけだ。今言うことではなかったかもしれないけど、本当に約束を守れてよかった。
いつまでそうしていたか。
途中で起きたリコに「ママを泣かせたです」とからかわれるまでそんなことをしていた気がする。
笑いながら抱きついてくるリコを見て助けてよかったと心から思いユラ達が待つ場所へと向かった。
次回も2週間以内に投稿出来るようにします。
次のイベントが終われば孤独編の最後なので、それが終われば1ー3ー1が始まりますね。……帝国編とか付けなきゃよかったorz
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