奴隷メイド
少し硬いだけで他には普通のベッドと変わらないためそこに腰掛ける。
ギシギシと軋む音は嫌いではない。ステータスの確認をしながらここを出る作戦を立てる。
「……意外に思いつかないものだな。いい案が出てくれればいいんだけど。出来れば死にかけるとかは無しで」
そんな時に部屋の扉からノックの音が聞こえる。日本人らしく「どうぞ」と答えると、首に首輪のようなものを付けた少女が中に入ってくる。顔は日本人特有とはかけ離れた西洋人の顔。そして何よりも美少女だ。転移してきたクラスメイトの中で一、二を争うだろう。
「はじめまして。カナクラヨーヘイ様に付けられた専属メイドのサーシャと申します。御用があればお申し付けください」
本当のメイドはこのような感じなのかと感嘆した。背筋はしっかりと伸び約九十度の礼。軽く笑顔を見せることによって相手に不快感を与えないようにしている。
「……じゃあ話を聞きたいから俺の隣に座ってくれるかな」
「はい」と表情を崩さずに隣に座るサーシャ。下心がありそうな文面だったから少し強ばっている。
「あっごめん、手を出す気はないから安心して。それで聞きたいことはここの国のステータスの平均なんだ」
「ヨーヘイ様のステータスは全ステータスが十と聞きましたがそれよりも高いです。大体は非戦闘員も合わせたら二十程度ですが」
「うーん、まあ言ってもいいか。ステータスの開示方法とかある?」
サーシャは少し首を傾けてから「有りますよ」と答えた。
「ステータスオープンと言えばいいだけですが」
「ステータスオープン。……これだと偽装は抜けないか。だったら偽装抜き、ステータスオープン」
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カナクラヨウヘイ
職業 召喚士
レベル 1
体力 185
物攻 185
物防 185
魔攻 205
魔防 205
俊敏 185
幸運 200
固有スキル 召喚、四聖獣の加護(白虎)、聖剣術、空歩、鑑定眼、心理眼、魔剣術、空剣術
スキル 錬金術、回復魔法、異空間倉庫、偽造、威圧、房中術、料理
称号 異世界人、四聖獣の加護
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「……? あれ意外とそっちの経験もあるの?」
「そっちの経験とはなんでしょう。一応お客様のために処女でなければここににはいられませんが」
威圧感がたっぷりとあるサーシャに「ごめん」と謝りながら答える。俺が悪い事言った気はしないんだが。
「戦闘の方さ、俺のステータスは見えてるだろ」
「はい、聞いていた値と違います。まさか国一番の鑑定士を欺けるほどの偽造が使えるなんて」
「もちろん、言わないでおいてくれるだろ?」
「はい」と答えるサーシャに嘘の反応はない。鑑定士と言われたローブの人から手に入った鑑定眼と心理眼にはとても助かる。
「あんまり教えられないけど他の人とは違うスキルを持ってるんだ。それこそ相手のステータスが高ければ高いほど俺のステータスも高くなる」
「……外れだからと私が付けられたはずが一番の有能株だったんですね。あの馬鹿たちに悪いですが良かったです」
「わかるよわかる、どうせあれでしょ。勇者を囲い込むために全員に綺麗なメイドを送ってるんでしょ。襲ってこなかったら襲ってこいとか。いやそこまではないか」
「有りますよ」と変わらない表情をしたサーシャが言った。
「私すらも言われています。外れ勇者でも捨て駒としては使える、と」
「あーそっか。まあ襲ってきたとしてもいくつか身を守る手はあるから襲ってこないでね」
「当たり前です」と言うサーシャ。少し笑った表情は変えないところを見ると哀れに思う。
「無理に笑わなくていいよ」
「そうですか」と言うサーシャはやはり表情を変えない。
「そういえばさ。処女じゃなければいられないとか、首輪はなんのためについてるの」
「私は奴隷です。ここの国の王様や貴族に死ねと言われれば死にます。そう設定されているため自分から表情を出すことは出来ません。ですが哀れむ必要性はありません。こんなこと、この国では日常茶飯事ですから」
少しだけ悲しそうにしたように見える。
「ちょっと待っててくれ」
もしかしたらと思って首輪に触れる。ステータスには変化はない。やっぱり生物にしか効かないようだ。
「無理か……同じ転移者で奴隷関係のスキルを持つ人はいるか」
「私に構わなくてもいいのですが。まあいますよ。水無月誠人という方です」
水無月は俺に敵対視を向ける人ではないか。それなら大丈夫か。
「わかった、明日もう一回ここに来てくれ。その時には君を解放させる」
「そうですか」と言うサーシャは少し喜んだように見える。表情は変わらず声音もさほど変わっていないが。
「あっあと、なにか金属はないか。出来ればあまりお目にかかれないもの」
「そうですね。……もう一人勇者の方で同じことを言う人がいらっしゃったようですが彼には何も渡されなかったようです。もし必要であれば二時間程度かかりますがよろしいですか」
「お願い」と答えると音も立てずにサーシャは消えた。それからきっちり二時間後にまた扉をノックする音が聞こえる。
「こちらでどうでしょうか。練習用の鉄と少量ですが七属性の魔石です。二種類とも捨てるものでしたのでご安心を」
「ありがとう」と言ってまた隣に座らせる。鉄は錬成すらされていないようで少し手に力が入った。
鉄の、というより鉄鉱石に錬成と言ってみる。すると体から少し力が抜け何かが鉄鉱石を通じて入って抜けてを繰り返しているような気がする。
「これが魔力か」
サーシャも「その通りです」と答えたため間違っていないようだ。俺は鉄鉱石を三十分かけて錬成しきった。
ステータスは魔力の値が少し大きくなっている。と言っても五だけだ。
「もしかして使えば使うほどステータスって伸びるのか」
「その通りです。私もそれのお陰でいくらか強くなれましたし」
体験談だととても納得しやすい。
鑑定眼を使用して七属性の魔石を見てみる。
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七属性の魔石
火、水、風、光、闇、聖、影の全属性を司る魔石。ダンジョン内で数パーセントの確率で出てくるがこれを扱えるものは少ない。この大きさであれば二つアクセサリーを作ることが可能。
錬金術で作れる能力は状態異常無効、全属性魔法ダメージを軽減。
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どうやら捨てる理由は使える者がいなかったからだろう。まあ使えるだけありがたいか。
チーターの彼はより強くなっていきます。
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