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1ー2ー7 重要?

少し拙い部分が多いですが大目に見てください……。

 王の間をイメージしているかのような厳かな場所に彼はいた。


 ゴブリンナイト、それが今の彼の種族であり周りは何度も夢見た自分の国だ。小国とはいえ王位を継承されなかった彼には今の状況がとても心地よかった。


 忌まわしき過去を思い出して歯軋りした。




 なぜ私が殺されなければいけなかったのか。私はただ一つの村を復興させ私財をなげうっただけ。それがなぜ国家財政の圧迫となるのだろうか。


 彼の頭に自分の首が飛ぶ瞬間が何度もリピートされる。無抵抗で何も出来ないままで首を飛ばされた従者達、自分を守るために盾になったメイドや執事。


 彼は首をさすりながら瞳を閉じる。思い出されるのは恨みから自身が霊体となった時のことだ。


 極僅かだが未練を強く残した者の中で霊体、いわば幽霊として世界に残る人がいる。彼もそのうちの一人で陽の光すら浴びれない不自由な生活を送りいくつもの魔物を呪い殺してきた。


 今でさえ寝る時は暗い日の刺さない空間でなければ寝付けないほどにその生活は彼を変えてしまう。


 そんな中、一人の女性と出会った。


 真っ暗な空間とは不似合いな真っ白いローブを装備した女性。その表情はどこか憂いげで彼を一目見て「憐れね」と微笑んだのだ。


 それが彼の心をどれだけ傷つけたか。いつも通り霊体固有のスキル、呪殺魔法を使用して女性を殺そうとした。だが何をしても効かない。


 女性はただ彼からの攻撃を全て受け止めて彼の荒くなる呼吸が凪ぐのを待っていた。


 おかしい、おかしいおかしいおかしい。


 彼の頭の中はそんな言葉で覆い尽くされる。今の今までこの力で倒せなかった者はいない。それに女性は彼を殺すつもりもない。


 憐憫、それがこもった視線を彼に向け何度も何度も展開される魔法をその身に受けた。


 自分なら耐えられるか?


 耐えられるわけがない。ただでさえ今の自分よりも弱い暗殺者に殺されたのだ。


「あなたは……可哀想ね。……もう一度、人としてはいられないかもしれないけど、やり直せるならどんな人生を送りたいのかしら?」


 先程までとは違った憐憫すらない、ただ愚直に疑問に思っているだけの素直な視線。彼は口角を吊り上げながら小さく「国を作りたい」とだけ呟いた。


「違うわね。本当は?」


 彼は黙ったものの女性には何をしても勝てないと悟り瞳を閉じる。




「復讐を果たすため。そして兄達を見返すためにも自国を発展させなくてはいけない」


 それが本音であった。


 だから彼は何度も戦い殺し殺してここまでの地位を築くことに成功したのだ。


 出来ればこれからもこのままで、自分を解き放ってくれた女性、彼女に忠誠を誓い集落を国に、そして魔王となることを夢見ていた。


 そのための知識もあるのだ。そして足りない部分は彼女から教えて貰っている。例えいいように扱われている事を知っていながらも、彼は彼女に恋をしていたのだ。彼女のためなら国を、夢を捨ててもいい程に。彼女のおかげで生まれ変われたことを知っているから。


 彼は国を築くためにゴブリンに力を見せつけていた。そのうちゴブリンソルジャーへと進化をし、時間も経たずにゴブリンナイトへと進化していた。


 だが足りないことを理解しているからこそ、彼は驕らずに戦い続けある程度信頼をおける配下を得て、自分はステータスがかなり上がっていることを確認している。


 民のためにも廃村となった村の家々の改築方法を教えた。当の教えられたゴブリンたちはゴブリンビルダーという新種に進化して、彼さえ知らぬ知識でコロニーを発展させ始めたのだが。


 だが今日になって少しだけ異変が起きる。まずは偵察部隊が三隊とも消えたことである。気配察知の力で探りはしたものの何が仲間を消したのか分からない。分かっているのは死体ごと消えた仲間の死体。


 内心焦りながらも幾らかのゴブリンソルジャー、つまりは幹部達を送り込んだのだ。結果は誰も殺されなかった。それはいい。


 ただし何の情報も得られなかったのだ。焦りが酷くなる。だが場所を動くことは出来ない。


 王はいつまでも王なのだ。こんなことで焦燥に駆られようとも民のために、心配をさせぬためにも動くことは出来ない。


 彼は逃げずに迎撃、そして侵入者を殺すことを決めた。何度も経験した修羅場をまた乗り越えてみせる、と。


 そんな彼にある一報が知らされた。


 優秀な気配を探ることに特価したゴブリンである。ゴブリンアサシンとしてなりたてではあるものの、その位はゴブリンナイトと同じ。それに特価といえども彼と同格なこともあり、能力ですら、油断すれば彼がやられるほどの力を誇っていた。


「気配を探ることが出来ないが何か不可解なことが村の中で起きている」


 彼の直属の部下であり、幾度となく死線を乗り越えたアサシンにとって、今回の件は初めてであった。何度も感じた死の恐怖、それが一番安心出来るはずの拠点で起きているのだ。


 彼にそう知らせた時のアサシンの体は酷く揺れ今にも膝をつき泣き出してしまいそうな程だった。


 こんな姿を見たことがない。


 アサシンは例え格上であるワイバーンと対峙した時でさえ、泣くことも怖気付くこともなかった。アサシンが初めて見せた姿である。


 そんな中でアサシンが気配を消す。それに反応するかのように彼は席を立った。アサシンが消えた理由は分かっている。いきなり展開された何かの存在だろう。


 考え事に耽っていた彼は扉をノックする音に少し肩をビクつかせてから、中へ入るように促した。そこに居たのは村の見張り役であるゴブリンソルジャーである。


 どうした。


 そう言おうとした時に彼は口を大きく開けたままで武器を構えた。ゴブリンソルジャーの首がいきなり飛び血溜まりを作ったからである。


 ーー誰もいないーー


 微かな殺気、それだけを頼りに彼は魔剣である炎の剣を振るった。金属音が響きそいつは彼の目の前に現れる。


「さすがはボスだな」


 黒いフードを被った見目麗しい少年。齢は彼が死んだ時のような年齢だ。だがその力は進化してレベルも高くなった彼よりも強い。


 弾き飛ばされバックステップをとる形で彼は武器を前に突き出した。


 ーーいない!ーー


 反撃は遅くそこには少年はいない。


「遅いですよ?」


 横からの一撃、彼は何とか剣を腹に当てダメージを減らす。それでも骨の何本かは折れ口の端から血を垂らした。


 縦に振るう剣、金属音が再度鳴り響く。一回二回三回と少年の剣とぶつかり合うが、折れる気配がない。それどころか魔剣である彼の獲物の方が限界が近づいてきている。


「チッ!」


 剣の腹で相手の漆黒の剣を抑え鍔迫り合いを起こす。ゴブリンナイトの膝が笑い始めた。自慢の力も知能も武器も、何もかもで少年に勝てる気配がない。


「ここ!」

「遅い!」


 どこからか現れたゴブリンアサシン。


 気配もなく完全な奇襲、それでもダメージを与えることが不可能であった。少年が仲間達を殺しまくっているのは彼にも理解出来た。


 ーーこのままで誰も守れないーー


 剣を強く握る。


 ーーせめて民達はーー


 そのためには勝たなくてはいけない。


 気がついていたのだ。村を覆うかのような魔力の渦が。彼が結界というものを知っていればすぐに理解出来ていただろうが、あいにくと魔法面では昔も今もからっきしである。それでも彼の何かが警報を鳴らす。


「勝つ!」

「……今更だけどゴブリンって会話が出来たんだな」


 体から力が溢れてくるのが分かる。


 彼女への忠誠と国のために彼は進化を始めたのだ。だが少年は動こうとはしない。


 まるで分かっているのに動いていないようであった。余裕ぶったその姿に彼は苛立ちながら新たな姿を見せる。


「ゴブリンジェネラル、か」

「怖気付いたか!」


 そんな時に少年はニヤリと口角を上げた。


「こんなもんなんだな! 来いよ!」


 戦闘狂、とは違う何か。


 どこかが欠けたその姿に彼は恐怖を覚えたが剣を振るう事しか出来ない。さすがに剣と剣の打ち合いは剣のグレードからして出来ないことを悟り、ステータスを駆使して少年の首めがけて攻撃を始める。


 初撃、一般人には視認出来ないほどの速さで剣が振るわれるが少年は難なく躱す。それを理解していたかのように連撃を仕掛けるが、嫌らしくヒビが入り始めた部分に剣を打ち付けてくる。


 速度でも攻撃でも、まだ足りない。


 それを悟り魔力を放出させ始めた。前世で好んで使っていたそのスキル。だが未だにゴブリンナイトの体では行うことが出来なかったのだ。


 白い光が彼を纏わり付きその速度を上昇させ始める。


「成長してんのかな。厄介この上ない」


 少年はそう言うものの表情に焦りというものが存在しない。何回も繰り出される連撃を武器で受けることもなく、跳んだり、仰け反ったり、バックステップをしたりして躱しきる。


「ガッ……」


 彼の右腕に大穴が空いた。


 剣ではなく腕で貫かれたのだ。そう気づくまでに少し時間がかかる。


 ーー慣れたのか?ーー


 その考えをすぐに消し去る。最初から攻撃を躱していたところから、それはありえないと思ったからだ。それよりも利き腕がやられたことに内心焦りながら武器を左手で持ち変える。まだやれる。


「呪操・地獄」


 少年の周りを囲むかのように、それでいて渦をまくかのように空気が張り付き始める。刹那、少年は口から吐血を起こした。


 霊体の時にしか使えなかった力。それが死にかけの彼に力を貸し与えようとスキル欄にそれが輝き始めたのだ。


 呪殺、殺害の反対は何か。


 癒し、回復こそが呪詛の最高の力である。


 何度も使ったことで熟練度は他のスキルよりも扱いやすい。なくなった腕に呪詛をかけ新しい腕を生やし始める。


 限界などとうに過ぎている。消え入りそうな意識を無理やり留まらせ対峙しているのだ。ここで踏ん張れるかどうかで、これからが決まってしまうのだから。


「……油断し過ぎたかな」


 大きなダメージを受けているはずの少年は口の端から血を垂れ流しながら剣を構えた。真っ黒かった刀身は若干赤みを帯び弱き魔物ならば畏怖するほどの威圧感を放っている。


 瞬間、治りかけの彼の右腕が再度飛んだ。そして彼は理解した。彼の剣から斬撃が飛んでいるのだと。


 理解してからは早かった。大幅に上昇したステータスで、少年が行ったように斬撃を躱していく。


 初撃、躱しきる。二激目、躱しきる。三激目、腹への強烈な攻撃。腹に大きな横一文字の傷が出来すぐに回復を施したが、それは悪手であった。


 まだ少年の攻撃は止んでいない。連撃が何度も何度も彼の体を引き裂き、最後の力を振り絞り剣を振り下ろす。


 あわよくばこれで少年が死んでくれれば、


「後ろだ」


 少年の声で引き戻される。無駄であった。


 彼は仕方なく剣でガードしようとするが遅すぎた。剣を振るうことに慣れてない左腕ごと少年の手刀によって手が飛んだのだ。


 それはアサシンの首が飛んだ時と同じような軌道を描き、そして、彼の首が飛んだ。


 最後に見えた景色は剣を漁りながらアサシンを虚空に消し去る少年の姿だった。少年を恨みながら、守ることが出来なかった民を、最愛なる彼女を思いながら彼は瞳を閉じた。




 ◇◇◇




「……あら、魔王候補の一人が消えましたね」

「私が作り出した存在ね。一応は成長しやすいように施したのに、それでも負けるなんて誰が倒したのかしら」


 真っ暗な空間の中で微かな声が響き合う。


 明かりはない。それこそ彼が幽霊としていた空間に近い場所だ。


「エシア様、この後はどうするつもりですか?」

「……まだ動けないわね。計画の途中だというのに片鱗が消えてしまうなんて。仕方ないわ、もう少しだけ回復してから動き出しましょうか、ルカ?」


 エシアはクスクスと笑い、従者らしき少女、ルカも不気味に笑った。ただ真っ暗な空間に笑い声だけが響く。


「全ては我らが主神のために」


 そんな二人の少女の声が重なり合った。


 ルカはその後そこから退出する。彼女の頭にあったのは魔王候補を倒した人族の存在だけであった。


 先程の室内と比べればいくらか明る長い廊下を歩きながら小さく零す。


「そんな楽しそうな存在、見に行かない理由がないですよね」


 鏡張りの廊下、そこに映る少女は幼い腰まで伸びたロングヘアーを携えている。そして何よりも理解し難かったのはルカの目の色であった。


 白も何もない、ただ目の色が黒いのだ。それに黒の境界線もない。


「それなら準備をしないと。エシア様と会うにふさわしいかどうか、判断をしないといけませんね」


 鏡に映る少女は一瞬にして姿を変え影の中へと消えていく。その行動の先に待つのは敬愛する主への利益となるか、それとも不利益となるかは誰も知る由もない。

次話は洋平視点に戻ります。

もう少しで大きなイベントに入るので、そこまで俺の気力、止まるんじゃねえぞ、ですね。


次回投稿予定日は9月11日です。モチベーションが切れかかっているのと忙しいのとで、出来る限り早めに出せるようにはします。もちろん、小説にいきなり感や面白くなくなる要素が出ないように慎重にです。


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