奴隷制度の現実と言いたいところだが予想通り
少し短いですが……
シズが出たことで空いた場所に座る。さっきまでは少し窮屈に感じていたため楽だ。
「それで聞きたいことがあるんだけど。さっき首輪が開いた時に驚いたのはなぜ?」
「首輪は女神からの罰とされているのです。悪いことをすれば罰が下ります。それと同じくたとえ罪がなくても罰が下ることがあるのです。奴隷商人というのは女神から許された非人道的な職業です。奴隷狩りなどもあって高く売れるなら奴隷落ちするしか生きていけない状況に相手をさせるでしょう」
少し震えながら言うサーシャの横髪を手でときながら安心させる。
「……確かに非人道的だな。サーシャもそうだったのか?」
怖がらないようにサーシャの両手を握る。
「……はい。私はメイドの才が生まれながらにあったんです。先天的なスキルの発症は至って珍しくメイドともなれば貴族に高く売れます。それがわかっていたため親に私を売ることを決意させました。それが私が七歳の時、つまりは八年前です」
「……そうだったのか。そりゃあ親には迷惑をかけたくないもんな。……奴隷術を持った俺は怖くないのか?」
「そもそも奴隷にするには長時間かかります。また他人の奴隷を襲うことは出来ません。それこそ私の首輪を解除するためにはこの街の指定の奴隷商でしか出来ませんから。だからこそヨーヘイ様が解除した時に驚いたのです」
サーシャは黙った。俺の言葉を待っているのだろう。
「と言っても俺もわからないんだよな。俺の持つ鑑定眼も鑑定阻止効果のある防具を無視して見れたし」
「……それがヨーヘイ様の力なのでしょうか。イレギュラー過ぎたためステータスにも載っていない、とか」
悩むサーシャの声を聞きながら一つの解釈をする。
「例えば……昇華とか。そんな言葉が合うと思うな。自分の中で模倣したものを昇華させる。その一連の流れが模倣に入っているのか……?」
小声でぶつぶつと言う俺にサーシャが不思議そうな目を向ける。
「いや、すまん。考え事をしていた」
いえ構いません、と言うサーシャを見てみる。すぐに目が合ってしまったため取り繕うために言葉を発した。
「とっとりあえず首輪が取れてよかったよ。俺が付けたっていうことならサーシャが他のやつに取られる心配もないし」
「そうですね」
頬を少し染めたことを隠すかのように両手を頬に当てる。そのせいで余計にわかりやすくなっていた。
「すみません、話が変わりますが明日からどのように行動するのでしょうか」
「戦闘訓練らしいけど。体力作りが主だね。どうしたの」
「ダンジョンで戦闘訓練を行う場合私をお連れください。少なくとも足でまといにはなりません」
いや俺はいいんだけど、と言ったところですぐにサーシャから返答が来る。
「メイドの間ではヨーヘイ様を殺す算段をする不届き者がいるようなのです。ヨーヘイ様が殺すのは外れ勇者という点で誤差が生じるため、それならば私が殺したいと思います」
「……いや殺す方法ならいくらでもあるから安心しな。まあアルにでも言って許可を貰ってくるよ」
サーシャははい、と首を縦に振る。
「ヨーヘイ様が思っているほどヨーヘイ様は死んではいい人間ではありません。先程のアサクラ様の表情を見ればわかるのでは」
「……わかってるさ、ただ俺と関係を持たせることはさせられない。それはあいつにとっては悪手でしかない」
そう思うのは自由ですが、と言いサーシャは黙った。
「エゴだって構わないさ。それがあいつの幸せに繋がるなら」
体をゴロンと横に倒し枕に頭を乗っける。空に幸せと書いてサーシャの方を見る。表情を変えてはいない。さほど興味がないのかもしれない。
「私はそうは思いませんが」
サーシャはそう言って頭を撫でてくる。幼少の頃を思い出してとても心地が良い。
不意に来る眠気に対抗する術などないまま俺は闇に視界を落とした。
次回、「神の仰せの通りに」です(大嘘)
これが伏線に……なるわけないか。
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