異性が倒せないよ、あの涙は何回やっても避けれない
書き溜めていたやつです。
タイトルはただボケただけです。
部屋に戻る際に誰かに絡まれるということもない。流石にアルとの一件が尾を引いているのだろう。
「おかえりなさいませ」
「あっ戻ってきた」
サーシャと朝倉さんの声が聞こえすぐにベッドの空いた場所に座る。すぐにサーシャは場所を空けようとしたが空白部分があるならそこに座ればいい。
「サーシャ首だして」
丁度良くと言うべきか俺の隣はサーシャだったのでサーシャの首輪に触れやすかった。
ステータスを見た感じではステータスの上昇もあったが、キチンと奴隷術も獲得出来ていることは確認済みだ。
契約という意味のコントラクトという言葉で首輪などを調整出来るらしい。本当は勝手な解放は違法なのだろうが。
俺の国にはこんな言葉がある。バレなければ犯罪ではない、と。全てを認めるわけではないがこれくらいならいいだろう。
「コントラクト、サーシャの奴隷解放」
カチリと音が鳴ると手に鉄の感触が広がる。サーシャの首を締め付けるそれは外れ、そこにいたのは普通の可愛らしい少女。
俺はサーシャの瞳に外れた首輪を見せる。サーシャはそれを見た瞬間顔を手で覆いさめざめと泣き出した。
「……そんな……本当に外れてくれた」
先程までの表情は消えそこに残ったサーシャは本当の笑顔を見せてくる。涙の跡はシミのように頬に残っている。
「あっ」
涙の跡を拭った時にサーシャはそう零した。消え入りそうな小さな声が室内に響き渡りすぐに手を引っ込める。
「……ありがとうございます。でも……出来れば……首輪はヨーヘイ様から付けてもらいたいのです」
サーシャの可愛らしいうるうるとした瞳が俺の目を見つめる。
「……言い訳には必要だもんな。それだと俺が主人になるがそれでもいいのか」
「そうなって欲しいんです」
「ちょっと待って、私抜きでいいムードを出さないで」
ムーと頬をふくらませた朝倉さんが中間に入ってくる。
「それなら俺を主人として契約するぞ」
「はい」
「だから無視しないでって」
サーシャに首輪を付けて「コントラクト」と呟く。少し光を放ったかと思うとそこには元通りのサーシャがいた。
「一応、俺に手を出すことの禁止をしただけで他のことは規制してない。安心していいよ」
「ありがとうございます。それよりもあちらの方を優先した方がよろしいかと」
サーシャの指差す方向には地面にのの字を書く朝倉さんがいた。
「もう……無視しないでよ……」
「ごめん、ごめん。で、なんで呼んだんだっけ。……そうだ、これを渡したかったんだよ」
俺は倉庫の中からネックレスを取り出す。それを見た朝倉さんの目が輝いた気がする。
「なに、告白?」
「違うよ、そんな叶うはずのない恋をしたらこ余計水木とかがキレるし」
「私は別に構わないんだけどな」と呟く朝倉さんを無視して話を進める。
「これには一応いい効果が付いている防具なんだ。全状態異常無効と魔法ダメージ削減。これをつけていて欲しいんだ。ここの人たちは信用が出来ないから」
「付けてくれたら別に構わないよ」
本当にからかうのが上手いな、と感じながら朝倉さんの細い首にネックレスを付ける。サーシャのネックレスの色は白を基調としたのだが、朝倉さんは赤を基調としている。
「……うん、似合ってるよ朝倉さん」
「静、シズって呼んで」
「昔の呼び方だろ、それは。あまりそう言って人を困らせるな」
デコピンして悶絶する朝倉さんに、
「でもわかったよ、シズ。元気で嬉しかったよ」
とだけ言った。泣かれても困るだけで別に他意はない。
「それと言うことは言ったからもう戻りな。また変に勘違いされる」
「それでも構わない」と言うシズを外に出して「おやすみ」とだけ言った。悲しそうにしながらもネックレスに指をかけて「おやすみ」と答えるシズは可愛かった。と言っても小さな女の子みたいで、だが。
シズカだと思っていた人が多いのではないでしょうか。まさかのシズでした。
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