トランペット ~私の想いに繋がる1つの楽器
初恋はいつだったっけ?どんなだったっけ?
このお話は海堂実里の初恋のお話です。
私、海堂実里は吹奏楽部の1年生!
私が、吹奏楽部に入ったのは、先輩に一目惚れしたからだ。
私は、元から楽器の演奏を聞くのは嫌いじゃなかったから高校のコンサートをよく見に行っていたの。
その日見に行ったのは、私のお兄ちゃんが進学した高校の引退コンサートだった。
その学校の吹奏楽部は、遊園地に招かれて演奏したりしているぐらい強豪校だったの。
私のお兄ちゃんの親友が、吹奏楽部員なのでお兄ちゃんが、頼んでくれて招待してくれての。
そのコンサートで私は、恋に落ちたの。
演奏も本当に素晴らしくてどうしたらこんな演奏が出来るんだろうって思ってたらもうコンサートの最後になっていて
部員全員が並んでいて
クラブソングを歌っていて
3年生1人1人が、顧問の先生に名前を呼ばれて部員達に向かって何か言って退場していく。
その時に3年生の1人目が、点呼される前から号泣してうまく歌えてない子がいたの。
先輩が卒業してしまうっていう実感が湧いてきて涙が堪えられなかったんだと思う。
彼の涙がとても綺麗で綺麗で印象に残ってたの。
そして、コンサートが終わってみんなで集合写真を撮ってる時に彼を見つけたの。
顔は、涙でぐしゃぐしゃで お世辞にも綺麗とはいえなかったんだけど好きになったの。
それを見てから私は、約1年間必死に勉強してなんとかその高校の合格を勝ち取った。
合格したご褒美にお兄ちゃんにその高校の引退コンサートのチケットを買って貰って見に行ったの。
一年経ってもやっぱり先輩は、最後の点呼の1人目で泣いていたの。
あの時が特別だったんじゃなくて涙脆い人なんだと思ったの。
そして、点呼されなかったからあの人が来年もいるんだという確信がもてたの。
4月 入学式
吹奏楽部は、入場の時や国歌などを演奏してたの。
その時に私はその演奏してる人達の中に彼を見つけた。
彼がトランペットを演奏してるのも、彼がまだ在校生なのも理解していたけど実際に演奏をしているのを見て少し涙が零れたの。
彼がちゃんとこの学校にいる。
彼がちゃんとこの学校の吹奏楽部にいる。
私の見間違いとかじゃなくてちゃんといる。
その事が嬉しかった。
私は入学式の後吹奏楽部に入部届けを出しに行った。
一瞬、一秒でも早く彼と話したい。そう思って吹奏楽部の顧問の先生の所に行ったの。
そしたら顧問の先生と彼が話していて、私の心臓は、音が聞こえてないか心配になるくらいバクバクいってたの。
彼の苗字は顧問の先生との会話から、山内というのが分かった。
「山内先輩…」
「僕のこと呼んだ?」
つい零れた言葉に彼が反応してくれた
私は、咄嗟に
「わ、私、1年の海堂実里っていいます。吹奏楽部に入りたいと思っています。」
「おおっ!新入部員か。よろしく!僕は3年の山内謙也。そしてこっちにいる先生が」
「顧問の松本だ。よろしく。」
「よろしくお願いします。」
「実際には体験入部は明日からなんだけど見学してみる?いいですよね先生。」
「もちろんいいよ。」
「はい!」
「なら行こっか。音楽室は4階だからまた上がる事になるけど。」
そう、この校舎は4階建てで1年生の教室と音楽室と図書室は4階にあるのだ。
そして、この時私は浮かれすぎて忘れていた
私が音楽の授業以外で楽器を演奏した事が無いことを。
そして、この学校の吹奏楽部が強豪校なのを……
部活動見学
音楽室に着いて私は、場違いな感じがした。
先輩達の目は、真剣そのものでパート別で合わせていた。
そのパート別の音は、まるで一つの楽器みたいにぴったり揃っていたの。
山内先輩は、フルートパートの女の先輩に耳打ちしてる。
山内先輩が耳打ちした後、耳打ちされた女の先輩が、こっちに来て
「ようこそ!吹奏楽部へ。私は、部長の川野瑞希。今日は見学でいいのね?」
「はい!よろしくお願いします。」
「名前は海堂実里さんだっけ?」
「はい。そうです。海堂実里です。」
「じゃあここで待っててね。」
「はいっ」
すると川野先輩は、みんなに向かって
「一旦ストップ、今日、早速見学者が来てくれたよ。」
私は、ビクビクしながら
「い、1年の、か、海堂実里です。よ、よろしくお願いします。」
なんとか自己紹介した。
「「「よろしく〜」」」
「みのりっちかな?よろしく〜」
「みのりんじゃない?よろしく〜」
「海堂さんよろしく~」
「みのりちゃんよろしく~」
先輩達に一斉に声をかけられて私は混乱した。
「みんなそんな一斉に声かけたらみのりちゃんが可哀想じゃん」
川野部長の鶴の一声によって私は助かった
「ごめんね、みのりちゃん。みんなも悪気は無いから許したげて。」
「はい。悪気が無いことは分かっているので大丈夫です。」
「そう言えばさっき聞き忘れてたけど、みのりちゃんは興味のあるパートってある?」
「はい!トランペットパートに興味があります」
「なら山内君の所だね。山内君、みのりちゃんの事任せるね。」
「了解!みのりちゃんこっちだよ。」
「はい!」
私は、山内先輩について行った。
着いた先は、音楽室の近くの1年生の教室だ。
入学式が終わるとみんな帰ったので1年生らしき人はいなかった。
「ここはトランペットパートの練習場所だよ。」
聞く前に先輩が教えてくれた。
「音楽室だとパート別で合わせるには、スペースが少しちっちゃいからこっちで練習してるんだ。」
パート別でそれぞれが合わせていた時にトランペットはいなかったから音楽室ではない場所で練習してる事ぐらいすぐ分かることだった。
「ちょっとここで待っててね。」
山内先輩は、それだけ言って中に入って行った。
「みのりちゃんおいでっ!」
呼ばれて入るとみんながこっちを見て
「「「「よろしく!」」」」
「みのりちゃんよろしく!」
「海堂さんよろしく!」
よろしくをやまびこみたいに感じてると
「チャンチャチャチャン」
と口に出しながら笑っていい●も!のタ●リさんみたいにして男の子が止めてくれた。
その男の子が、
「ようこそ!トランペットパートへ。俺はトランペットパートのパートリーダーをしてる山添拓人だ。よろしく」
「よろしくお願いします。」
「トランペットパートの見学でいいんだよね?」
「はい!」
「ちなみに……トランペットを演奏した経験は?」
「………………ないです…」
「無いかぁ……」
山添先輩は、少しがっかりした表情をした後、山内先輩の肩を叩いた。
「まぁ、大丈夫。こいつも高校からだから」
「え?山内先輩は高校入ってトランペット始めたんですか?」
「うん、そうだよ。僕は、中学の時は卓球部に入ってたから。」
私は、とても親近感が湧いた。
「私も中学の時は卓球部でした。」
「まぁ、昔の話は置いといて山内、お前にみのりちゃんの事任せるな」
「了解」
「合奏まで後20分か 10分休憩入れるとして残り10分か」
「なら昨日の合奏練習でミスった曲合わせたら?」
「せやな。それが1番確実か それにあのメドレー10分くらいあるし。って事で二つ目の方のメドレーやるぞー」
「「「「「「はーい!」」」」」」
「みのりちゃんはこっちの椅子に座って見ててな」
「はい」
私は、指揮台から少し離れた所の椅子に座った
私からは、指揮者を含めて全員が見れる位置だった
「川本、お前指揮やれ」
「はいはい、準備OK?」
「いつでもええで」
「OK〜」
「じゃあ行くで~ワン ツー 」
トランペットの合奏が始まった。
10分はあっという間だった。
気がついたら終わってたのだ。
「その反応を見るとよかったみたいやな。よし、じゃあ今から5分間休憩、その後音楽室で合奏って事で解散!」
「「「「「よっしゃー!」」」」」
そこからの行動はみんなそれぞれ別々だった。
私に話しかけて来る先輩は多かったけど
山添先輩はストレッチしてるし、川本先輩は本を読んでるし、他にも大声で歌ってる先輩や寝てる先輩もいた。
山内先輩に関しては私についていてくれた。
私1人では先輩達のマシンガントークに対応するのが難しいと思ったのでとても心強かった。
そうこうしてる間に時間が経ち
急にアラームの音が鳴ってびっくりした。
そして、その音がなるとみんなトランペットを持って移動し始めた。
「さっきの音は何なんですか?」
と山内先輩に聞いてみたら
「あれは合奏五分前のアラームだよ。合奏の時間は全体で決まってるから遅刻しないようにするために休憩終了の目安にみんなしてるんだよ」
と教えてくれた。
合奏が始まった。
私は、松本先生のそばで合奏を見てた。
1曲目はアイドルグループのメドレーだった。
有名な曲が多いけど聴いたことあるけど歌詞が思い出せない曲ばっかりだった。
2曲目はさっきトランペットパートのみんなが吹いていた曲だった。
1曲目に比べるとゆったりしたテンポで途中までいくのに途中でとてもアップテンポになり何回かそのテンポの変化してる所で1人か2人ズレていた。
3曲目はクラブソングだった。
この曲は、もう完璧だった。練習量の違いかも知れないが。
合奏が終わって
松本先生は、指揮台の方まで行った。
そして、松本先生に手招きされて、私も指揮台の近くまで行った。
すると松本先生が、
「今の合奏聴いていて思った事を素直に言ってみて」
「やっぱりみなさん揃っていて感動しました。特に3曲目のクラブソングは」
「別に怖がらんとホントの事言ったらええねんで 怒らないし むしろ、ここで直せるものは直しとかなお客さんに失礼やから」
「じゃあ、1個だけ……。2曲目のテンポが変わる所で1人か2人ズレていた気がしました。」
「そうやなぁ。他には無い?」
「他は無いです。1曲目のメドレーが知ってるのに歌詞が出てこないもやもや感があっただけで」
「ズレてると感じたのはどの楽器?」
「木琴と金管楽器で金管楽器の方はどれがどの音か判断できませんでした」
「ズレたという自覚がある人?」
その時手を挙げたのは2人だった。
1人は木琴で1人はホルンだった。
その後は、見れなかった。
時間が遅くなるからという理由で帰らさせられたからだ。
次の日
私は、部活動体験で吹奏楽部に参加した。
私以外にも20人を超える人数が体験に来ていた。
しかし、私のような初心者はその20人を超える人達の中にはいなかったのだ。
みんな遅くても中学の時にはやっていて自分の楽器を持っていた。
楽器すら持ってない初心者は、私だけだった。
希望するパートに分かれてそれぞれ先輩が1年生の面倒を見る事になった。
トランペットパートに来た1年生は5人だった。
まず、最初にトランペットを鳴らせる事が出来るかというチェックがあった。
4人ともすんなりと鳴らして余裕がある子は、少し曲を演奏して見せた。
残る私は、不安だった。
トランペットを触る事すら実は、これが初めてだからだ。
吹いてみた、ちゃんと鳴っていた。
私は安堵した。
鳴らなかったら他の楽器に移らさせられるんじゃないかと思ったからだ。
全員が鳴らせたので今度はそれぞれに先輩がついた。
一番上手かった子には川本先輩が、
その次に上手かった子には休憩の時に歌ってた先輩が、
良くもなく悪くもなかった子には休憩の時に寝てた先輩が、
ほかの子と比べると残念な音だった子には山添先輩が、
そして、私には山内先輩がついた。
その後、今日の課題曲についての注意点の説明と楽譜が配られた。
そこからは、1年生は先輩との二人ペアで練習になった。
課題曲は、初歩中の初歩ってレベルの簡単な曲だったので私以外の4人は、軽々と吹き終わって先輩からほかの曲について教えてもらってるみたいだった。
私には、そもそもドレミの音の出し方も分からない初心者なので難題でしかなかった。
それでも山内先輩の丁寧な指導のお陰でなんとか形にはなった。
最後に部員全員で合奏して終わった。
合奏の前に山添先輩が
「失敗してもいいから最後まで吹き続けよう」と言ってくれたので少し安心して吹く事ができた。
まぁ、結果は散々だったけど……
帰り道私の気持ちは、沈んだままだった。
失敗してもいいって言われたけど失敗を何回も繰り返してしまったのは悔しかった。
あれでは私が下手な事だけでなく山内先輩の教え方が悪いって事になら無いかと思った。
だから、私の足取りは遅かった。
「みのりちゃ~ん」
後ろから声をかけられた。
「みのりちゃん、追いついた。」
振り返ってみると山内先輩だった。
「何かあったんですか?」
「何も無いよ。でも、みのりちゃんがさっきの合奏の事気にしてるんじゃないかなって」
「なんでわかったんですか?」
「僕も最初の時トランペットの合奏大失敗したんだよね…」
「私みたいに?」
「そうだよ。むしろもっと酷かった……」
「私も結構酷かったと思いますよ?」
「山添君がさ 失敗してもいいから最後まで吹き続けようって言ったじゃん」
「はい」
「あれはどっちかっていうと山添君自身に言い聞かせてる所もあるんだよ」
「つまり山添先輩も大失敗したという事ですか?」
「いいや。彼は失敗しなかったよ」
「じゃあ何でですか?」
「それは、僕が失敗しすぎて演奏中に僕に怒ってきたんだよ
だから、素人が来ても怒らないようにしようって彼の中で決めてからあの言葉はずっと言ってるんだ」
「な、なるほど。つまり私は、山添先輩のイライラの種でしかないって事ですね」
まぁ、分かってたけど…そんな事くらい経験あるか聞かれた後の反応見れば
「安心して、すぐ上手くなるから。それに山添君も受験で部活なんてやってる暇なくなるから」
それを聞いて私は悲しくなって泣いてしまった。
「山添先輩が暇がなくなって部活に来なくなるって事は山内先輩も来なくなるって事ですよね?」
「そう…なるね」
私は、思っているよりも先輩と一緒に入れる時間が短い事を悟った。
そして、その後先輩に何を言ったかは覚えていない。
泣きながら走って家に帰った事だけ覚えている…
泣いて帰った日から3ヶ月が経った
今日は、先輩の最後の大会前日
つまり、私が先輩と共に演奏するコンクールはこれ以降は無い
私の想いを伝える機会もこの大会しかない
そのためにもなんとしてもこのコンクールを成功させなければいけない
そう思っていた時に山内先輩が
「そう硬くなるなよ、緊張が音に出るから」
とある意味検討違いな助言をした。
その後リハーサルとして合奏をして
ミーティングがあった。
松本先生からは
「1年生。ここ3ヶ月の成長は素晴らしい。その成長を発揮して先輩達の後押しをして欲しい。」
「「「「「「はい!」」」」」」
「2年生。先輩と後輩の板挟みという大変な時期を経てこの大会が終わったら部活を引っ張っていくのは君たちだ。だから、後輩や先輩に君たちの実力を見せて欲しい」
「「「「「「はい!」」」」」」
「3年生。ここまでの3年間の集大成ここでいっちょ見せてやれ!お前らならやれる!だからここにいる全員を引っ張って金賞かっさらってこい」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
と各学年に向けてエールが送られた。
今日はこのミーティングで解散になった。
大会当日
私は、大会への緊張と告白前の緊張とでカチカチだった。
周りもパッと見緊張してないように見えなくもないがとても緊張していた。
そんな中、山添先輩と山内先輩が言い争いをしているような声が聞こえた。
私は、何事かと思って二人のもとに行ってみると二人の体制に違和感を感じた。
言い争いだけをしているにしては腰が低いし上着も脱いでいる。
そしてお互いのベルトを掴んでいた。
お互い投げようとしてるが投げられそうにない。
そこまで考えて気づいた。
2人はみんなの緊張をほぐすためにわざと喧嘩してるフリしてみんなの視線を集めて何かするつもりなんだという事に
だがその何かをし始めた所でタイムリミットだった。
出演時間が近づいたからだ。
だから、彼らの目的は失敗したんじゃないかと思った
でも二人の喧嘩を心配して緊張をあんまりしていないのに気がついた。
つまり無意味ではなかった。
最後の円陣。
もうこれで、この大会で3年生は一旦引退だから3年生を代表して川野部長がみんなに向かって一言言った。
「私達はしっかり成長してる だからいつも通りやろう」と。
実際演奏は大成功だった。
練習以上の成果が出て拍手喝采だった。
結果も金賞が貰えた。
私達は、結果発表を聞いて泣いていた。
もちろん山内先輩も大泣きしていた
大会が終わり、帰る前に私は山内先輩を会場の裏へ呼び出した。
ほかの部員に見られたくなかったからだ。
「せ、先輩!」
「どうしたの?こんな所に呼び出して」
「私、先輩の事が大好きです」
「えっ?」
「だから、私と付き合ってください!」
「・・・」
「あっ、返事は大学合格してからでいいですよ」
「俺なんかでいいのか?」
「はい!いえむしろ先輩以外考えられません」
「なら頑張って合格勝ち取らんとな、みのりを長い間待たせ続けたくないから」
「じゃあ告白の返事は?」
「それは合格した時にかな?」
「ですね。」
大会から半年後
今日は先輩の第一志望の大学の入試の結果発表だ。
ここ半年なかなか先輩に会えなくて寂しい日々が続いていた。
しかも2月からは、先輩は学校自体が週一登校なのでより会いにくくなってしまいかねない
だから、受かってて。お願い。先輩の第一志望が受かってますように祈るしか出来ないけど。
だから、先輩から電話がかかってきた時の声を聞いて祈りが叶ったと分かって私は、すぐに家を飛び出した。
目的地は、高校
真面目な先輩だから絶対に高校の先生に報告しに来るはず
だから、私も高校で待つ
先輩の笑みと告白の返事を
桜の木に雪の花が咲いたこの木の前で
数多ある作品の中からこの作品を読んでいただきありがとうございました。(*・ω・)*_ _)ペコリ
春は出会いと別れの時期
この2人も春に出会い、春に始まりました
そして書いてはいないですが同じ学校で過ごせる時期は後わずか、四月からは通う学校が違うから別れになりますね。
でも就職したら新入社員が入るくらいで春って感じにくいかも知れませんね 。
この作品を読まれた皆様に素晴らしい春がやって来ることをそして、今以上に春が素晴らしいものになることを祈ってます^^*
最後に、
率直な感想でいいので感想をよろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ