表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/108

>レビューを書いて頂きました




復讐心というのは、本来、極めて個人的なものですが

近代の民族紛争などで「観念的報復」や「民族的復讐」という概念が創られました。


そう、「日本に永遠に謝罪を求め続ける政治パフォーマンス」とか

「一犯罪者による行為を自国への侵略として軍事介入する自称世界の警察官理論」とか

その他もろもろの「祖先の恨みを晴らすための正義」とかの


「正義の裁き」という大義名分とは別の

利権確保のために発明された概念です。



決して公の場では語られませんが

日本でも未だに家族を殺されたり

非人道的な無差別の空襲や戦後統治での殺人やレイプで

非道を犯した米軍に恨みや義憤を抱く人間は残っています。


かつては

もっと多くのそんな人達がいて

そういった感情を源にする米国への不審が安保反対などの政治活動の根幹になっていました。


けれど、そういったものすら利用して私服を貪る人間の醜態が

反面教師としての役割をしたのと大切なものをもつことが


そういった復讐心より大事なものを多くの人に思い出させ

一握りの全てを失った人間と許すことができない人間が

政治理念を大儀名分として東側の力を借りてテロを起こしました。


それも、また利権のために利用され

彼等が大儀名分とした政治理念を批判する材料にされる利権争いの中


個人の復讐心は語られることもなく

戦争の悲惨さというものを知らず「中身のない言葉だけの復讐」を語る人が増えていきます。


そういう意味では

一人一人が別の意味で持つはずの復讐を

戦争の名分や皆の目的として利用するかのように


皆で一緒に復讐を頑張りましょうというのは

復讐というものに固執する人間には、自分の復讐心を愚弄する行為だとも言えます。




そういう意味の純然たる復讐心を持たない主人公にとって

復讐とは何なのか?


おそらく、元平成時代の日本の若い人に刷り込まれた価値観によるものなのでしょう。


それは具体的にいうならば、幼少時からの教育や物語やマスコミを通じて広められた

ある種のプロパガンダが創りだした常識でしょうか。


元平成時代の少年である主人公に身近な復讐の価値観というなら


日本古来の「仇討ち」という武家の概念より

東西のファシスト達のプロパガンダから生まれた

「謀略家が故意に人を狂わせるために創った概念」である「差別による観念的復讐」という概念のほうが

やはり、より身近なのでその影響が強そうです。


仇討ちというものが、かつての日本では認められていて

洋の東西を問わず中世の軍人文化の常識では「復讐法」は公的な概念で

復讐は認められた権利で成功すれば褒められる行為でした。


それが否定されたのは「歪められた弱肉強食の理屈」こそが

「虐げられたものの怒りと悲しみ」を生むという事が商人文化で公で認められたからです。


そういう意味で軍人文化の封建社会である異世界では

「歪められた弱肉強食の理屈」も復讐も肯定されています。


言い換えれば

「復讐の肯定」とは「歪められた弱肉強食の理屈」の肯定で

ひいては

人が人を虐げる事の肯定です。


欧州文化が武家から商家に権力基盤が移っていったため


欧州文化の常識で動く近代先進国家では

そういった「歪められた弱肉強食の理屈」が間違いであるとして

人道主義という概念が発明されました。


「罪を糾し間違いを正す裁き」と「強いものが正しいとする復讐のあり方」

を切り離すことで


その後の近代では、「復讐法」は「虐げられたものの怒りと悲しみ」を生むからこそ否定されます。



そして、それでも

「自分達さえ好ければいい」という幼稚な暴力的理屈を肯定し

「歪められた弱肉強食の理屈」で階級社会を造ろうとする権力者は

ファシズムという概念によるプロパガンダを使い

人道主義を誤魔化しで否定するようになります。


「復讐の正当性を訴えて争いを無くさないようにして外部に敵を創ることで権力を確保」することを目的とした

「謀略家が故意に人を狂わせるために創った概念」である「差別による観念的復讐」という概念

もそれの一つ。


近代の権力者達のように

平等や公平という大儀名分を抱えながらも、本音では自分達が君臨する階級社会を維持するために戦争を求めるのとは違い



主人公がやっているのは

「虐げられたものの怒りを代弁する」義憤からの行いのはずなのに


それを我利我利亡者の「差別による観念的復讐」という概念が歪めてしまい


「差別による観念的復讐」と「個人の復讐心」とを混同してしまっているのが間違いなので

「謀略家が故意に人を狂わせるために創った概念」こそが、彼の狂気の源なのでしょう。



個人になら正当な裁きを受けさせられるけれど

国家や組織が行った犯罪では、個人で裁きを求めるのは極めて難しいい話です。


そこで犯罪を犯した被告人を個人としてしまうか

それともその行為を画策した者以外の人間も含む国家や組織を被告人としてしまうか。


そこを間違わないのなら主人公がやっているのは、個人的感情とは別の

「虐げられたものの怒りを代弁する」義憤でしょう。


けれど、復讐心に溺れるものは

何も知らずに敵に味方する者も敵としてテロを起こしてしまいます。


そして、それをやった人間が「虐げられたものの怒りを代弁する」資格はありません。


かつて「アクメツ」というマンガではテロを描きながら

「一人一殺」という狂気で命を命で購い

悪として自らも共に裁く主人公達を描き

「虐げられたものの怒りを代弁する義憤」であり続けさせようとしましたが


主人公は「歪められた弱肉強食の理屈」で動いてしまっているために

「虐げられたものの怒りを代弁する」資格を失っています。




そんな違いに意味はないとするのなら


日本を例にあげれば


北朝鮮の拉致が、日韓国併合に対する正当な裁きであるというような主張も正しく

アメリカの原爆投下と無差別爆撃も正当な裁きであるという事になるでしょう。


全ての戦争もあらゆる残虐行為も正しい事になるでしょう。


でも、主人公は、そう考えてはいないので

自分達だけが酷い仕打ちを受けて損をするのは絶対に嫌だと

正しい裁きを望みながらもそれができないだろうと最初から諦め

正しくなくてもいいと敵の消滅を望み血の報復を選んだのでしょう。




損得でなく本当に正しい道を選ぶのならば

無理と承知していても、まずは対話の努力をするべきで

目指すべきは国家の犯罪も裁けるような組織造りでしたが

主人公が望んだのは、「歪められた弱肉強食の理屈」であり戦争でした。


そして、彼はそこで気づかないもう一つの間違いを犯します。


「間違ってはいるけれど止められない」という復讐を否定しながら行う個人的狂気ではなく

「謀略家が故意に人を狂わせるために創った」理屈に嵌り「復讐の肯定」をしてしまったのです。


個人ではなく、「虐げられた者の怒りを代弁する」復讐者なら

絶対にしてはならない自分達の復讐の正当性を顕わにする行為をした主人公。



侵略者が使う大義名分のように「自分たちの幸福追求のための復讐」を目指し

侵略者と同じ穴の狢になってしまった主人公。



それは彼の弱さで間違いを認める苦しさから逃避して

「歪められた弱肉強食の理屈」を肯定する事で幸せを求める愚かさなのでしょう。


人間は弱く愚かだけれどそれを認めてこそ成長するという物語になっていくのか?

それとも二つの狂気の違いから目を逸らし「自分達さえ好ければいい」という幼稚な暴力を行使し続けるのか?


個人的には、多少話が重くなっても

そこらの狂気の違いを表現してほしいとこですが、今後の展開はどうなるんでしょうねぇ


主人公は「復讐の肯定」によって「歪められた弱肉強食の理屈」を肯定するという罠から逃れられるのでしょうか?


「無差別の復讐を否定して」間違いと気づいて

尚、止めないという意志を持って「仇討ち」の名の下に武家の生き方で戦争をするのでしょうか?


あるいは……


主人公の精神年齢が十代の子供であることから

展開しだいでどっちにでも転ぶでしょうが

はてさて、どうなるんでしょうねぇ?



という意味の話をまとめようとしたのですが

どう考えても無理でした。



ただでさえ生業による生き方の違い


生命を一番大切にする農民文化と

力を一番大切にする軍人文化と

損得を第一とする商人文化のそれぞれ違う死生観とか


そもそも

その考えの源となる


人間の歴史や価値観など全てが人間自身によって創られたという考えと

神秘主義で初めに神とかによる価値観があったとする宗教由来の考えの違いとか


生業と仕事というものの違いとかの文化人類学の話とか


基礎知識がない場合は短くするとどうしても誤解が生じますからねぇ





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ