葵は可愛い。デートはやっぱり楽しい。
雄二です。
今日は大型連休3日目、今年は5連休で、ゆっくりできている。
昨日、神奈川の実家に帰り、今日ゆっくりして、明日、勤務先がある名古屋に戻るつもりだ。
昨日は、驚かされっぱなしだった。
幼馴染みで高校の同級生の友人、島田正人が男から女になってたのだから。
しかも、美人。いや、美人というか可愛いタイプかな。
気持ち悪いと思うことはなく、ドキドキしてしまった。
家族ぐるみの付き合いだから、自然に仲良くしてしまった。
家族ぐるみという関係がなければ、驚いて逃げてしまったところかもしれない。
しかも、今日は朝からデートの約束をしてしまった。
どうも妹に仕組まれたみたいだけど、特に予定はなかったし、正人改め葵とは昔ばなしを
したかったし、いいんだけどさ。
でも、なんか恥ずかしい。
うまく話せるかな。
あっ、デートって言い方はやはり抵抗ある。
いっしょに遊びに出かける同性の友達感覚でいよう。
うん、そうだ。
おれは、あいつに恋愛感情とか持っているわけじゃないし(可愛いとは思うけど。)。
あいつはどうなんだろう?
昨日の話じゃ、カミングアウトしたくないから彼氏作らないなんて言ってたけど、
俺に対してはどう言う気持ちなんだ?
まさか、幼い頃から俺を好きだったとかないだろうな?
高校までの付き合いでそんな雰囲気感じなかったからその恐れはないと思うけど、
今はどうなんだ?
あんまり考えたくないなあ。
朝食後、俺は、妹から車を借りて、島田家に出向いた。
歩いても3分ほどの距離だから、車だと一瞬だ。
車を玄関脇につけると、
出てきたのは・・・
島田家の当主で葵の父親の良太さんだった。
「おはよう!」
「おはようございます。
あ、今日は葵さん、お借りします。」
「おお、
大切な娘だ。よろしく頼むよ。
でも、デートとは羨ましいなあ。
俺が代わりたいくらいだ。」
良太さんはニヤニヤしながら答えた。
そこに奥さんの椿さんと、葵の姉の梓さんも玄関から出てくる。
ううっ、
大げさだ!
椿さんは
「若い人のデート羨ましいなあ。
楽しんで来てね。」と言うし、
昨夜はみんなの暴走のストッパー役だった梓さんは
「仲良く行動してね。
他の女の子を眺めたりしちゃダメよ。
そんなことしたら許さないからね。」
なんて言う。
ひえーっ。なんか、新婚旅行の出発みたいじゃないか!
俺は、
「あ、仲良くしますから、心配しないでください。大丈夫です。」と答えるのが精一杯だった。
ただし椿さんが
「帰りは夜遅くなってもいいから。
どこかに泊まって、明日帰ってきてもいいわよ。相手が雄二君なら門限なし、
宿泊オッケーよ。」なんて爆弾発言するのには参った。
「あ、ちゃんと夜帰ります。」
と俺は、釘を刺した。
でも楽しくなったら遅くなるかも知れないとも思う。
そのタイミングで、
葵が出てくる。
「お待たせ〜。今日はよろしくね!」
笑顔で、俺に声をかける葵の姿に
俺は息を飲む。
とんでもなく可愛かった!
昨日も可愛かったが、今日はさらに可愛い。
まず、服装だ。昨日が地味な色合いのパンツファッションだったのに、
今日は、パステルカラーのフェミニン系だ。
ピンクの初夏用のニットに、白いひらひらのミニスカートだ。
ウエストのくびれや胸の大きさがわかる。
うっ、こいつ意外と胸でかい!
メイクも可愛い。
今日は、チークやリップの発色がよくて、すごく女子を強調している。
一瞬見とれてしまう。
「あっ、雄二君、葵に見とれてる!よかったね、葵、おしゃれして。」
「いやんっ、お姉ちゃんの意地悪!」
そんなやり取りもあったが、俺は、スルーして、ご両親に挨拶する。
「では、行ってきます。安全運転で行ってきます。」
「うん、よろしくな。」
「ふふふ、楽しんでね。」
車に二人で乗り込み、発車した。
「ちょっと待たせちゃったね。ごめん。
男の人とドライブなんて、初めてだから、いろいろ気合入っちゃった。」
「いや、そんな待ってないよ。大丈夫。
あっ、いい匂いがする。香水つけてる?」
「あ、コロンつけてきたの。
気になる?」
「いや、好きな香りだよ。大歓迎だ。」
「ふふふ、よかった。少しでも女っぽくしようと思って。」
俺はドキドキした。本当に惚れてしまいそうだ。
いかんいかん、何とか冷静な頭脳を取り戻さないと。
そうだ、学生時代の話をしよう。
「そういえば、葵は中学、高校時代の同級生とは全く連絡とってないんだよな?」
「うん。性別変わっちゃったから、恥ずかしくて、音信不通にしている。
クラスのみんなからは、行方不明認定されてると思うよ。」
「俺も、札幌生活長かったから、クラス会とか全然行ってないけど、葵と同級生だった高校2年のクラスの連中とは、時々連絡とっている。情報教えてやるよ。」
「教えて教えて。」
そこから、俺は同じクラスだった時の仲間の動向を話し出す。
もう、結婚した女子が4人いることや、海外に行ったヤツのことや、事業を起こしたヤツ、
芸能界に行ったヤツなど、目立った動きをしている連中の話をした。
もちろん、普通の就職をしているヤツの話もする。
そこから、昔ばなしに話が展開し、会話は盛り上がる。
隣に座っている葵が、顔も声色も気にしなければ、正人という男性時代の人間に思えてくる。
(ふーっ、ドキドキが消えた。こうやって昔ばなしをすれば、可愛い女の子という意識が薄れる。
やっぱ、男友達なんだ。どんなに可愛くても。
惚れたらやばいから、気をつけないと。)
ドライブは盛り上がり、目的地のシーパラに着いた。
大型連休中であり、さすがに混んでいる。
家族連れが7割、カップルが3割と言ったところか。
二人で歩くと、やっぱり照れる。
回りのカップルは結構イチャイチャしているのである。
手をつないだり、腕を組んだり、腰に手を回したりしていて、目の毒だ。
俺は、(俺たちはカップルじゃない。友達だ!)
と頭の中で、何度も唱えるが、
ちらっと見ると、やはり葵は可愛い。
すれ違う男性の視線が葵に向かうのがわかる。
(うーん、可愛い。まあ、友達だけど、これだけ可愛ければ、いろいろ見ちゃおう。
顔は可愛いし、胸は大きいし、ウエスト細いし、ヒップは形いいし、足もきれいだ。
友達なんだから、じろじろ見ていいよな?
そうだ、スマホで写真もいっぱい撮らせてもらおう!
一緒の写真も撮らなきゃ。)
そう思った俺は、写真を撮りあうカップルを見つけて、声をかける。
「二人が一緒の写真撮ってあげましょうか?」
「あっ、お願いします。」
何枚か写真を撮ってあげると、相手のカップルが気を使ってくれる。
「そちらもどうですか?撮りますよ。」
「じゃ、お願いします。」
俺は葵との仲よさそうなツーショット写真を数枚撮ることに成功した。
やっぱり、自撮りでは、イマイチだからな。よかった。
俺は満足して、葵を見る。
葵はちょっと嬉しそうだった。