プロポーズのあと
雄二です。
佐藤先生が俺と葵に結婚を勧めて、高校の時の友人たちもそれに賛同して驚いた。
葵も驚いたようだが、
取り敢えず、その問題を棚上げして
俺の負担を減らそうとしてくれた。
ただし、俺との結婚を望んでいるような本音が漏れていたから、
真剣に答える必要があるぞ。
俺は、短い間にいろいろ考える。
逃げちゃダメだ。
こんなに美人で可愛くて、相性が良くて、
家族も、先生もクラスメイトも認めた相手から逃げてたらダメだ。
うん、俺がはっきり意思表示す流れだ。
よし、プロポーズしよう。
今すぐここで。
先延ばししたら、余計なことを考える。
だから、みんながいる前でプロポーズして、
葵の答えを待とう!
それが、俺の男としてのけじめだ。
結論が出た。
「よし、決めた!
・・・
葵、俺と結婚してくれ!
俺は葵が好きだ!
今までごまかしてたけど、素直になる。
俺の嫁さんになってくれ!」
俺は大声をあげてプロポーズしてしまう。
葵は、
「えっ、嘘!どうしたの?大丈夫?
いきなりそんなこといわれても。
どうしよう…」
と驚いて、胸を押さえて倒れそうになった。
俺は慌てたが、
近くにいた今泉沙知絵が葵をすぐ支える。
そして抱きしめる。
みんなが一瞬息を飲む。
でも、葵は声を出した。
「サッチん、
もう大丈夫だよ。
驚きすぎておかしくなっちゃった。
ちゃんとできる。」
葵は今泉沙知絵からゆっくり離れ、呼吸を整える。
そしてゆっくり話を始めた。
「みなさん、私、雄二に質問をします。
申し訳ありませんが、証人になってください。」
その問いには全員が無言でうなづく。
「えっと、雄二、
私のこと幸せにしてくれる?」
「おお、
もちろんだ。誓うよ!
男に二言はない。」
「うん、わかった。私、雄二のお嫁さんになる。」
うわっ、一発オッケーだ。すげえ!
俺の人生で、初めて告白を受け入れる女が現れた。
やっぱ、俺にはこいつしかいない。
よかったー!
「おめでとう!」先生がすぐに祝福の声をかけてくれた。
「やったー!」
「キャー、おめでとう!」
「すごい、公開プロポーズ!
感動した!」
「幸せになってね!」
「よし、これでクラス会盛り上がるぞ!」
そして、先生が、拍手をしだすと、全員から拍手があった。
「みんな、ありがとう!
俺たち幸せになる。」
「うん、雄二幸せになろう。
みなさん、本当にありがとうございます。」
俺達は感謝せずにいられなかった。
その後は、再びみんなで、結婚についての話で盛り上がる。
すでに、結婚している今泉夫婦と、新田夏樹、そして、結婚生活20年の先生がいろいろ
アドバイスをしてくれたりして、話は尽きない。
そして、続きはクラス会の時にしようということで、お開きとなった。
その時に、今泉沙知絵からは、葵に「クラス会の前に女子会やるから、来てね!」と誘いがあり、葵は嬉しそうに
「うん!」とうなづく。
帰るときはみんな名残惜しそうで、
「良かった、良かった!」
と、俺と葵に声をかけてくる。
俺は胸がジーンとなる。
葵も目が潤んでいた。
帰りながら、葵と相談する。
その夜は遅くなったので、
家族への報告は翌日にしようと決めた。
俺が、自分の家族に説明したあと、
葵の家族に午前中に話をする段取りだ。
家の前まで葵を送り、葵に改めて感謝を伝える。
「きょうは、ありがとうな。
すごく幸せな日になった。」
「ううん、私こそ感謝だよ。
お嫁さんになれるとは思わなかった。
元男なのに・・・
嬉しいっ・・・」
最高の笑顔を見せる葵は天使に見えた。
俺も・・・嬉しい!
何て可愛いんだ!!
俺は、衝動的に葵を抱きよせ、強く抱きしめる。
そして、軽く、唇を重ねた。
葵は俺に体を委ねてくれた。
柔らかい唇の感触に俺は幸せを実感する。
葵も
「私、初キスだ。」
と、ちょっと、恥ずかしそうに、そして嬉しそうに呟く。
「俺もだよ。恥ずかしいけど。」
「よかった。嬉しい。」
二人はウブな中学生のようだ。
その日、俺は興奮して、眠れなかった。
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葵です。
雄二から、プロポーズを受けた翌朝です。
そんなに眠れなかったんですが、なぜか、爽やかに感じます。
単に天気がいいだけではないでしょう。
実に晴れやかな気分です。
朝食後の午前10時、ピンポンというインターホンの音がなります。
雄二がやってきました。
雄二がうちに来ることは家族に言っておきました。
用件は話していません。
家族は雄二が何らかの用事で来ると思っています。
たぶんクラス会の件の報告だろうと予想しています。
「おおっ、雄二君。きのうは葵のクラス会参加の件で、骨をおってくれたようだね。
同級生たちに、うまく根回しできそうだと聴いたよ。
ありがとう。」
そうです。クラス会の件については私から家族に報告済みなのです。
でも、雄二からも重ねて報告があると家族は思っています。
「よかった。これで、葵も昔の友達と仲良くできるわね。もう、変に逃げ隠れしないで済むのね。
楽しくなりそう。」
「雄二君、妹のために、いろいろありがとう。」
「いや、葵が勇気を出してくれたからですよ。
ところで、今朝、こんな時間にきたのは、別のお話があるからです。
実は、昨夜、葵にプロポーズして、承諾してもらいました。
すみません、おじょうさん、葵さんを私にください。」
「えっ?」
「あっ?」
「そうだったの?」
両親と姉はあっけにとられた顔になりました。
でも、すぐ笑顔に変わった家族から次々と言葉が出てきました。
「そうか、ついにプロポーズしてくれたか。雄二君ありがとう。
もちろんオッケーだよ。
葵をよろしく。
幸せにしてやってくれ。」
「雄二君、ありがとう。
雄二君なら安心して任せられる。
菅野家は私たち島田家にとって、家族同様だもん。うれしいっ。」
「雄二君、ついに私の弟だね。
よろしくね。
おめでとう!」
そして、
母親が私を強く抱きしめます。
「葵、おめでとう。ついにお嫁さんだね。
お姉ちゃんに続いて、結婚だ。
お母さん、ほんと嬉しいっ。」
雄二が、そこで、説明をします。
「みなさん、結婚は決めましたが、俺たち、今まで恋人として付き合ってこなかったので、
結婚そのものは、お姉さんの梓さんが挙式した後の1年後くらいにしようと思っています。
恋人生活も楽しみたいので。
まあ、
遠距離恋愛ですけど。」
「名古屋なら、新幹線であっという間でしょ?
遠距離といっても大したことないわよ。
ラブラブの恋人生活楽しんでね。」
「そうさせてもらいます。
これからも、このお宅にはしょっちゅう遊びに来ますので、よろしくお願いします。」
「おお、そうしてくれっ。
君はもう、私の息子だ。
気楽な気分で遊びに来いよ。」
もう我が家は盆と正月が一緒に来たような騒ぎになります。
父は早速、雄二のお父さんに電話して婚約パーティーという名の宴会の開催を申し入れました。
しかも、
今日です。
雄二には翌日の午前中の仕事を休むように
指示してしまいました。
名古屋に明日の朝帰ればいいという目論見です。
雄二、仕事大丈夫かなあ?
オッケーしてるけど。
でも、
これで今日も夜まで雄二と一緒だ。
嬉しいっ!
さてさて、性転換女性の私が、ついに結婚できることになりました。
とはいえ、いいことばかりじゃないと思います。
これからいろいろな試練が待っているはずです。
でも、雄二と二人で何とか乗り越えていきます。
幸せになります。
では、みなさん、
私のちょっとしたラブストーリーを読んでいただき、ありがとうございました。
完
年末年始に集中して取り組んだ小説です。最後まで読んでいただいた方には深く感謝いたします。もし、クラス会本番のエピソードを読みたいと言う方がいれば、リクエストをお願いいたします。リクエストがあれば、考えたいと思います。