プロポーズ
葵です。
ミニクラス会の話の続きになります。
とんでもないことになりました。
担任の佐藤先生の突然のアドバイスに驚愕する雄二でした。
「ええーっ!
せ、先生、何を・・・」
雄二は先生に真面目な顔で指図され、焦っています。
言葉が出ません。
私は顔を下に向けてしまいました。
ちょっと嬉しい提案だけど、
雄二の気持ちがわかるから
私は積極的に発言できません。
それにしても…
ひゃーっ、自分の家族と雄二の家族にはネタ的によく言われるけど、久々に会った恩師に言われると超恥ずかしいっ。
しかもクラスメイトの前だし。
高校生の時は男の子だったんだから…
その記憶を持ってる家族以外の人に言われるると、ドギマギする。
先生もおせっかいだなあ。
雄二が無難にかわしてくれるといいけど…
いや、これはチャンスかも!
雄二との関係は、発展させた方がいいのかもしれない!
相手としては最高だもん。
先生の発言は、曖昧な私たちの関係を変えてくれそう!
私の心はすごい速度で動き始めました。
今まで抑えていた願望がムクムクと
立ち上がってきます。
佐藤先生は、
雄二と私に話しかけました。
「君たちを見てると・・・
相性がすごくいいと思う。
若者をいっぱい世の中に送り出した僕がいうことだから間違いないよ。
君たちなら上手くいきそうだ。
お互いをよく理解してるし、
助け合うことが出来そうだ。
過去の性別とか常識にとらわれない方がいい。
道は自分達で切り開くくらいのつもりでいる方がいい方向に向かうと思う。
そしてだ・・・
普通、こういう関係だと家族が反対するケースが多いはずだけど、
君たちの場合、家族同士が仲良さそうだから、障害はないな。
むしろ歓迎されるんじゃないか?
そうだ、付き合うっていうより
結婚してもいいんじゃなかな?
うん、それがいい。」
「あっ、ああ・・・
そんなこと言われても、
あの、その、えーっ・・・
結婚?!
飛躍し過ぎます。
うーん、
どうやって答えていいのやら・・・
葵とは男同士の関係のつもりだから…」
動揺する雄二に私が声をかけます。
「雄二、別に今答えることないじゃない?
私もびっくりしてる。
私、恋愛とか結婚とか考えないようにしてたけど、
実は相手が雄二だったらいいなくらいは考えていた。妄想程度だけど・・・
でもね、
先生が言ってくれて、自分の・・・その・・・心の奥の気持ち?
それが今、動き出した・・・
うーん、雄二の気持ちはわかるから・・・
無理は言えない。
でも・・・ゆっくり考えてほしい。
お願い。」
そして、さらに・・・
私は先生を始め全員に話し出しました。
「先生やみんなが私と雄二が似合うと思うのはわかります。幼馴染ですし、お互いのことよくわかってるし、雄二は私のことを心配してくれてます。
ただし、雄二にも選ぶ権利があります。
私は、見た目と戸籍は女性になったものの、
子どもを生む能力を持ってませんし、細かいところでは本物の女性と違うところがあります。
・・・・・・。
こんな人間を彼女にして、さらに嫁にしようなんて、かなり勇気のいることだと思います。
あまり考えたくないことでしょう。
だから、雄二は困って当たり前です。
今の先生のアドバイスについてはゆっくり考える時間が必要です。
いずれにしろ、クラス会には二人で参加します。そこは安心してください。
ゆっくり考えた後、雄二が今のお話を断っても私はがっかりしません。
雄二の考えを尊重します。」
一気に私は自分の考えを話しました。
雄二は目を瞑り、
下を向いて考えこんでいます。
真剣な感じです。
女子同級生達は自分の意見を言ってくれました。
「あっちゃん、よくわかった。
そうだよね。
簡単なことじゃないよね。
急がせちゃダメだよね。
特に菅野君にとっては、普通の男性がしたこともないような決断事項かな。
昔だったら、性転換手術して、戸籍を変えて、
家族の了解を得るなんて考えられなかったよね。その上結婚するなんて、未知の世界かも。
だから、常識を超えた考え方で取り組むべきことなんだろうけど・・・
でも・・・
できれば、クラス会までに答えを出して欲しいな。」
「うん、そうだね。
菅野君、先生の言葉重いよ。よく考えてね。
ちょっと、普通の恋愛だとは言い難いし、
普通の結婚とも言い難いかも。
でも、ここにいる全員が、二人がお似合いだと思っているはず。
理屈じゃないよ。
感覚的にそう思う。
素敵なお話だよ。」
「こんな綺麗な女の子をお嫁さんにできるなんて幸せだよ、菅野君!
いろいろあるだろうけど、
お嫁さんにするべきだよ。
私が菅野君の立場だったら、こんないい子見逃さないよ。絶対!」
「うーん、クラス会が楽しみになって来た。
ぜひ、菅野君に決断してほしいな。
いい方向で。
もし二人が結婚するなら、クラス会が
超盛り上がるよ!
みんな祝福すると思う。
服の上からしかわかんないけど
あっちゃん、体つき色っぽいよ。」
「よく考えろよ、菅野。
期待してるぞ!
男なら決めるときは決めろよ!
島田はいい女だと思うぞ!
放っておいたら別の男に取られちゃうぞ。
そんなことになったら後悔する。
俺も最初は男のイメージがあったけど
もう女にしか見えないよ。」
みんなのアドバイスが始まってから顔を上げた雄二は目を白黒させていましたが、
突然、目をつぶって考え込む姿勢になります。
その姿に全員沈黙してしまいます。
雄二は、ちょっと間をあけたあと、
大きな声を発しました。
「ちょっと待ってくれ!
これから大事な事を言う。」
雄二はそう言うと大きく深呼吸を2、3回して、それから、また声を出しました。
腹の底から出すような声でした。
「よし、決めた!
・・・
葵、俺と結婚してくれ!
俺は葵がが好きだ!
今までごまかしてたけど、素直になる。
俺の嫁さんになってくれ!」
「えっ、嘘!
どうしたの?
大丈夫?
いきなりそんな事言われても!
どうしよう…」
いきなりのプロポーズ?!
高校の同級生や先生のいる前で?
私は驚きのあまり失神状態になり、胸を押さえてながら前に倒れそうになりました。
次回、最終回です。最終回は本日1月4日午後6時にアップします。お楽しみに。