おせっかい?
雄二です。
高校の時のクラス会開催の案内が来た。
すっげー楽しみだ。
やっぱり、青春時代の思い出は大事だ。
うーん、葵にも参加してほしい。
本人は嫌がっているけど。
葵だって、あの仲のいいクラスの一員だったんだから、クラスメイトに会いたい気持ちはあるはずだ。
カミングアウトは勇気がいるかもしれないけど、そこを乗り越えて、クラスのみんなとの
交友を復活させてほしい。
俺は、2家族の合同食事会の時、強くそう思う。
性転換したことは、クラスのみんなに衝撃を与えるかもしれない。
でも、こんな美人だ。
昔の友達に対して、引きこもりになっちゃうなんて、
ホントもったいない。
本人は恥ずかしがっているけど、美人で可愛いんだから、もっと
自信をもっていいと思う。
高校生時代も、別に男っぽかったわけではなく、女の子っぽかったから、
違和感もそんなにない。
なんとか、葵をクラス会に参加させて、クラス会そのものも盛り上げたい。
うん、葵にとって、一つの壁を破ることになるぞ。
高校生時代の友人は宝物だ。
社会人の同僚と違って、損得勘定がまったくない。
それに地元だ。
神奈川県に住み続けるなら、絶対仲良くしておいた方がいい。
よし、あらゆる手を使って、葵が参加できるようにしよう。
一緒に行動してやれば、葵も勇気がでるだろう。
俺が人肌脱ぐか。
あいつがからかわれたりしたら、全力で守ってやらないと。
まずはクラス会幹事の今泉夫婦を味方にしないといけないな。
よしっ、がんばるぞ!
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葵です。
クラス会の通知が届いて、すごく嫌な気分でした。
高校を卒業したあと、性転換した私は、男性時代の知り合いには会いたくなかったし、
できれば、性転換したことを知られたくなかった。
だって、恥ずかしいんだもん。
何を言われるかわからないし。
興味の対象として、見られるのは嫌だった。
珍獣を見るような状態になりそうだよ。
できれば、クラスのみんなには行方不明者として扱ってもらえば、ラッキーと思ってます。
実際、高校卒業して、8年ほどたっていて、クラス会の通知には欠席で返事出し続けているし、
誰にも連絡とっていないから、
クラスのみんなは私のことを忘れてしまっていると思う。
もしかしたら、すでに行方不明ってなっているかも。
とにかく、昔の友達には会いたくないなあ。
・・・
そう、思ってたんだけど、
先日、二家族合同食事会で、雄二が一緒に行こうと強く誘ってきたので、
今は心が揺れています。
確かに、雄二が言うことはわかります。
だって、高校時代の素敵な思い出は宝物。
クラス会はその宝物を呼び起こすとっても、素晴らしいイベントであることは私にもわかります。
高校時代の人間関係はフラットなものだし、
思春期特有の純粋な感情があり、その感情がよみがえる機会になるのは明白。
できれば、その空間に行きたいという気持ちはなくはないのです。
でも、性別が変わっているのに顔を出した時の、みんなの驚きが怖い。
暖かく迎えてくれる人もいれば、変なものをみたような衝撃を受ける人もいるかもしれない。
軽蔑されるかもしれない。
反応は人それぞれだろう。
あえてカミングアウトしなくても・・・・・・
なんて、考えてしまうんです。
でも、死ぬまで秘密にするなんて、寂しすぎるかも・・・
とも思うんです。
だから、こうやって、強引に勧められて仕方なく行くのも
悪くないのかもしれないと考えはじめました。
すごく嫌だけど、私にとっては越えなければならない壁。
高校時代の大好きな友達と再会するためには、壁を乗り越えることは
仕事や私生活の上で大きなことになるかもしれない。
深く、このことについて考察するようになりました。
それにしても、雄二っておせっかいだなあ。
彼女を作る努力はどうなったんんだ?
そうだ、雄二の同僚の女の子が私に会いたいって行ってるんだっけ?
また、名古屋に遊びに行こう。
雄二の同僚の女の子の前で、イチャイチャして、雄二を困らせてやろうかな?
そして、雄二の家に泊まっちゃおう。
金曜日の午後、半休をとって、金曜、土曜、日曜と雄二の家に泊めてもらおう。
ふふふ、楽しくなってきちゃった。
私を困らせているんだから、雄二を困らせる権利あるよね?
ちょっと事情は違うかもしれないけど。
私は、雄二に電話をすることにした。
「あっ、雄二?あのさあ・・・また名古屋に遊びに行っていい?
雄二の同僚の女の子たちで、私に会いたいっていう子がいるんでしょ?
私も会ってみたくて・・・」
「えっ、まじか?
そういえば、うちの会社の女の子たち、会わせろって、近頃うるさいから、
ちょうどいいかな?
よし、来いよ。
いつ来る?」
「会社の女の子たちの都合、聴いてみてよ。次の金曜の夜なんていいんじゃない?
会社帰りなら、女の子たち集まりやすいでしょ。
私、金曜は半休とって、名古屋行くよ。」
「おお、そうか。
じゃあ、声をかけてみるよ。
あっ、
・・・そうなると、泊まるのか?
さすがに、しっかり飲んで、神奈川に帰るとなるときついだろ?」
「うん、泊まるよ。雄二のところに。2泊3日!」
「ええっ、それはまずいだろ。
葵、今は女なんだから。」
「友達なんだからいいでしょ?
雄二の会社の女の子たちも、私が、雄二のところに泊まらないとおかしいと思うよ。」
「ええっ、そういえばそうだけど・・・
そうだ、葵のお父さんとお母さん、心配するぞ。」
「それは、もう許可とってある。雄二のところなら全然オッケーだって。」
「うっ、まじかよ。
もう、しょうがないなあ。
よしわかった。泊まれよ。
あんまりきれいにはしてないけど、俺んところでよければ泊まってくれ。
まあ、友達だから、問題ないな。」
「なんか、イヤそうだね。でも、泊まっちゃうからね。
よろしく。」
そう言って、電話を切った私は、ガッツポーズをとった。
ふふふ、雄二の部屋に泊まっちゃう。
なんかワクワクする。
別に恋人でもないから、変なことはしないけどね。
1時間後に更新します。