えっ、性転換?!
一回発表したものを作り変えました。全年齢対象になるようにしました。
友達だった男が性転換して、女性になったら、まず驚きます。でも、自分の家族も相手の家族も
みんなその性転換を肯定しているなら、人間関係はうまくいくでしょう。
ご都合主義ですが、そうしました。
ただし、主人公たちの心は微妙で、素直に向き合うまでちょっと時間がかかります。
「おー、やっと着いた。
昨年の夏と今年の正月は実家に帰らなかったから、1年と1か月ぶりくらいか!
なつかしい。
それにしてもゴールデンウイークの新幹線は混んでいるなぁ。」
俺は菅野雄二。
26才、独身、彼女なしだ。
俺の実家は神奈川県の藤沢だ。
東京駅から40分ほどで到着する。
便利なところだ。
大学は北海道の札幌で4年間暮らした。
そのあと、東京本社の大企業に就職したら、何と札幌勤務となり、さらに4年暮らすことになった。
実家には、いつも盆と正月には帰っていたのだが、
昨年の夏と今年の正月はいろいろと用事が重なり、帰れなかった。
だから久々で、何となく感激してしまう。
今はどこに勤務しているかというと名古屋の支社だ。
アパートで一人暮らしをしている。
一か月前の4月初に名古屋に転勤となり、実家が身近になった。
それで、ゴールデンウイークに帰ってきたのだ。
名古屋も近くはないが、札幌に比べれば全然近い。
(あーあ、就職して5年めか?
帰ってきて、改札口に恋人でも待っててくれたら嬉しいんだけどな。
迎えに来るのは2才下の妹くらいか?
また妹に、彼女できないの?なんて馬鹿にされそうだよ。
妹はちゃんと彼氏いるからなー。)
改札口に行くと、予定通り妹の翼がいた。
翼は2才年下の24才。会社員で東京勤務。
自宅から通勤している。
美人ではない。平凡な容姿だが、いつも笑顔で明るいことから男子に人気がある。
中学の時から彼氏がいた。
今の彼氏は大学からの付き合いで、もう結婚する見込みだ。
あと、2、3年の間だと思う。
彼氏は札幌勤務時代に、俺に会いに来たことがあり、顔見知りだ。
妹と同じく、人懐っこい男で、まあこいつなら親戚として付き合っていけるなと
俺は認めている。
「お帰り~。」
といつもどおり、妹は元気な声で迎える。
「おおっ!ただいま!」
オレもいつもどおりの返事をする。
その後だった。何か、いつもの感じと違う雰囲気を感じる。
妹の隣に若い女性が立っていて、俺に、笑顔を向けているのだ。
(一体誰だ?妹の友達か?
うーん、俺に紹介するために連れてきたのか?
そんなわけないか。)
と、俺は、心の底から湧き出てきた期待をすぐに打ち消す。
それにしても、好みの女の子だ。
ロングヘアだし、平均的な女性の体格で
バランスがいい。
笑顔が素敵である。
服装はグレーのジャケットに黒のワイドパンツという地味と言うか女性会社員の通勤スタイルだし、メイクもナチュラルですっぴんぽいが、明らかに美人。
顔立ちが整っている。
ううっ、訂正しよう。
好みというレベルじゃない。
100%どストライク!
ただの美人じゃない。
可愛い美人だ。
うーん、
ただ、…
何となく、見たことがあるような顔だな。
誰だか思い出せないけど。
「お兄ちゃん、こちら、葵さん。
お兄ちゃんを迎えに行くって、言ったら、私も行くって付き合ってくれたの。
美人さんでしょ?」
「えっ?
あ、ああ。
いったい、どなた・・・かな?」
「ふふふ、やっぱり葵さんのことわからないかー。
こんな美人さんになったらわからないよねー。
葵さんは、お兄ちゃんの知り合いだよ。
そのうちわかると思うけど、今はわからないよねー。
あ、お兄ちゃんのスーツケースは私が持って帰るから、
お兄ちゃんは葵さんとデートしてから帰ってきてね。
夕ご飯までは帰ってきてよ。
夕ご飯の時は葵さんのお父さんとお母さん、お姉さんも来るからね。
じゃあね。」
妹の翼は俺からスーツケースをひったくるようにして持って行く。
後に俺は、葵と呼ばれた女性と残された。
しかたなく俺は
葵と呼ばれる女性と歩き出す。
正体不明の女性だが、うちの家族の知り合いみたいだし、美人だし
デートしてもいいかな?って思う。
街をぶらぶらしながら聴いてみる。
「ウチと家族ぐるみの付き合い?
誰だっけ?
近所の島田のところは親同士が友達だったの覚えてるけど
女の子の友だちで親同士が知り合いっていたかな?
いつの時だろ。
同級生?
それにしても…
うーん、記憶ないなあ…
葵・・・さん?
思い出せない。」
「ふふふ、そうだよね。無理もないかー。
わからないよね?」
ふと、俺は、高校の同級生で家族ぐるみの付き合いがあった島田正人の記憶を辿る。
お姉さんが一人いたのは覚えて・・・いる。
あ、そう言えば、高校卒業後、島田正人とは不思議と会っていない。
けっこう仲良かったのに、俺が北海道行ったあと、何となく連絡取らなくなったんだ。
新生活に追われていたからな。
そう言えば、ウチと島田家の食事会に俺は高校卒業後出てないな。
なんせ、ずっと札幌生活だったからな。
うーん、島田のやつ、どうしてるかな?
俺と同じように、遠くの有名大学に入ったことは覚えてるし、
けっこう大きな企業に就職したって、ウチの両親に教えてもらった記憶はあるけど…
うーん、小柄で可愛いくて、
いいやつだったな。
そこまで、考えた時、
葵は話し出す。
「たぶん、常識にとらわれていると、わかんないと思う。
だいぶ、容姿変わったから。」
「そうなんだ?
そうか、女性って、髪型やメイクで変わるし、
もし、小学生や中学生くらいの時の同級生だったら、全然変わっちゃうよな。
でも、思い出せないのは失礼だよな。
うーん、うーん・・・
やっぱ、だめだー。
ごめん、やっぱり思い出せない。
苗字教えてくれよ。
それで思い出せるかも。」
「ふふふ。じゃあ、おしゃれなところに連れて行って。
そこで教えてあげる。」
「じゃあ、ぶらつくか。」
俺たちは、小田急に乗り、江の島近くまで行く。江の島を眺めながら、ぶらつく。
「久々に江の島見たなー。
やっぱ、湘南はいいよなー。
ところで、苗字教えてくれよ。
約束だぜ。」
「江の島が見えるとこかぁ。
オシャレな場所かな?」
「北海道にずっといたから、江の島はおしゃれって感じるぞ。
いいだろ?」
俺は、ちょっとむきになった。
まあ、本気じゃないけど。
「ふふふ、わかった。
教えるね。
島田だよ。
私の名前は島田葵。
わかる?」
近くに人はいなかった。おれは大きな声でつぶやく。
「島田?島田正人なら知っているけど・・・」
そう呟いたとき、おれは、電流が体を走り抜けるような感覚に襲われ、ぎょっとする。
この女の子島田正人に似ている!
でも、本人の訳がない。
男と女の違いはあるし、髪の毛は長いし、体は完全に女だ。顔も似ているけど女の顔だ。
肌もきれいだし、
声も女だ。
島田が女装しているという変な発想は成り立たない。
美人すぎる。可愛すぎる。
となると、島田に姉がいることは知っているから、姉か?
いや、待て、お姉さんは島田正人には似てなかった。
確か、正人が母親似で、お姉さんは父親似って言われていたぞ。
となると誰だ?
えーと、島田正人のほかに島田っていう知り合いいたっけ?
しかも、島田正人に似ている女の子。
わー、訳がわからなくなった。
「ごめん、混乱したぞ。実は島田正人にもう一人、兄妹がいたっていうオチか?」
「ブー!はずれ。それじゃあ、知り合いってことにならないじゃない!
もう、言っちゃうね。周りに人もいないし。
私、島田葵は元島田正人。高校卒業してから性転換手術を受けて、戸籍も変えて、
女性になったの。
驚かせてごめん。
久しぶり、雄二!」
俺はその説明に激しく動揺した。
この美人が高校時代の同級生か?
あまりにもすごい変わりようだ。
「うそっ、本当に・・・まさと・・・か?」
「うん、そうだよ。
正人改め、葵だよ。」
「し、信じられん。」
そこからは、歩きながら、そしてお茶を飲みながら、島田正人ならぬ葵の性転換ストーリーを
聴くことになった。
高校3年の後半からホルモン治療を開始し(極端に体型が変わったわけではなく、正人はうまく隠してたようだ。高校の最後の方は受験で、みんな忙しく、俺を含めて正人の女性化に気づくヤツはいなかったようだ。)、大学は女性として現役入学。
大学には事前に説明をして、了承を受けていたようだ。
そして、1年後に性転換手術をして、20才になると同時に戸籍の性別を変更。
就職は女性として東京本社の会社に入社(人事部には打ち明けたが、戸籍が女性なら
問題なしと言われた。)。
その後、何と俺が今住んでいる名古屋に配属され、4年間名古屋で過ごしたという。
4月からは東京勤務となり、俺と入れ替わりだった。
現在は藤沢の自宅から東京に通っている。
ごく普通の女性として、生活が成立しているようだ。
困ることについても教えてくれた。
ホルモン治療は死ぬまで続けなければいけないということ。
生理がないので、同性である女性と生理の話になると、いろいろ困るということ。
言い寄ってくる男性にカミングアウトしたくないので、
秘密にして、すべて交際を断っていること。
彼氏はいないけど、いるってことにしているってこと。
「うわーっ、大変だな。
ふつうに見たら、ちょっとした美人だけど、内情はいろいろ面倒なことありそうだ。
そういえば、よく見ると、美人というより可愛いタイプだよな。
アイドルにでもいそうだ。」
「わーっ、褒めないで。
いい気になっちゃうから。
それより、カミングアウトした私のこと気持ち悪くない?」
「ごめん、大変失礼なこと言うけど、
もし、会う前に聴いてたら、気持ち悪いと思ったかもしれない・・・
でも、会って全体の雰囲気がわかったあとだから、全然大丈夫だよ。
ふつうに女性として認識するよ。」
「そ、そう?
よかったー。
あっ、ありがとう。」
葵はちょっと顔を赤らめた。
なんだ?
こいつ、顔だけじゃなくて態度やしぐさも可愛いぞ。
元男だけど、変な気持ちになっちゃいそうで、怖い。
それにしても、すごいサプライズだ。
翼のやつ。事前に知らせてくれればいいのに。
心臓に悪い・・・
そのあと、夕方二人で俺の自宅に行くと、2家族はすでに集まり、みんな飲み始めていた。
全員大人だから、みんな飲んでいる。
葵の家は徒歩3分だから、全然問題ない。歩いてすぐだ。
俺と、葵の席が空けられていた。
二人並んで座る感じだった。
葵の父親の良太さんが、俺に言う。
「お帰り、雄二君。
早速だけど、葵の正体聴いたかい?
驚いただろう?
いつか驚かせたくって、ずっと秘密にしてたんだ。
葵が高校生のときから。」
「違うでしょ!おとうさん!」
葵が反論する。
「あ、わりい。
ちょっと嘘言っちゃった。
葵が高校1年の時に家族にカミングしたあと、親友の雄二君には内緒にしてくれって言ったんだ。
そのうち、時期がきたら自分から話すって言ったんだ。」
「そうなんですか?
それにしても、驚きました。
こんなことがあるなんて、思いもしませんでした。
まだ、信じられません。」
「まあ、これだけ姿変わったんだから、無理もない。
俺は、もう慣れた。最初っから女の子だったと思うようになってきたよ。
いい娘だぞ。
性別変わったけど、これからも仲良くしてやってくれ。
よろしく頼む。大学でも、会社でも、周りは普通の女の子と思ってるから、
気楽に話せる友達いないんだよ。
頼むよ。」
「そうなんですか?
高校時代、ずっと仲良かったんです。
性別変わっても、中身の根本は変わりませんよ。
これからも仲良くします。」
俺は、葵の葛藤と複雑な事情を考えた。
何でも話せる相手が欲しいに違いない。
悩みは聴いてやろう。
そう考えた俺の返答に満足そうにうなづく良太さんだった。
でも、油断ならない動きが発生する。
葵の母である椿さんが俺に爆弾発言をぶつけてきた。
「雄二君。
葵ももう26才だから結婚させてあげたいの。
女の子としては、一番いい時だと思うの。
あのね、
雄二君がもらってくれると嬉しいんだけど・・・」
「ぐっ、ううっ。」
俺は飲もうとしていたビールが変なところに入りそうになった。
葵が慌てて、俺の背中をさする。
「お母さん!
だめよ、そんなこと言っちゃあ。
雄二は普通の女の子が好きに決まっているじゃない。
そんな発言、大迷惑だと思う。
もしかしたら、付き合っている人がいるかもしれないのに。」
そこで、俺の母親のみずきが
「あら、雄二には彼女ができたって話聞いたことないわよ。
全然フリーじゃない?
雄二にもそろそろ相手が欲しいから、今のお話いいと思う。
葵さんなら、私、大賛成だけど。」と発言。
父親の健二も
「葵ちゃん、美人だからなあ。おっぱいも大きいし。
これだけの美人、いないぞ。」
と鼻の下を伸ばして発言する。
おいっ、そりゃセクハラだぞ。
でも、確かにあのおっぱい気になる。
触ってみたい気がする。
あー、ダメダメ、俺は何を考えているんだ。
妹の翼もうれしそうに発言した。
「葵さん大好き!!可愛いもん!
服のセンスもいいし、スタイルもいいし。
前に葵さんと私と私の友達二人と一緒に買い物行ったら、
友達二人とも、
葵さんの大ファンになっちゃったんだよ。」
確かに、美人オーラあるよな。
元男だけど。
女性の間でも人気でそうだ。
元男だけど。
俺は、不思議な気分だった。
最後に、葵の姉の梓さんが、ちょっとだけ冷静な発言をする。
俺に助け船を出してくれた。
「みんな、雄二君困っちゃってるわよ。確かに葵は私の自慢の妹だけど、その・・・
雄二君、かなり戸惑っているかと思うから、
あんまり言わないほうがいいと思う。
雄二くん、とりあえず、葵と友達でいてね。」
「了解です。」
その瞬間、葵がものすごく嬉しそうにしていた。
時代は個人情報保護時代。LGBTを守ろうとする時代。そして、女性活躍推進の時代です。
性転換女性でも、完全に性転換手術を行い、戸籍の変更をしていれば、女性として就職は可能かと
思います。まあ、会社の姿勢もあるでしょうけど。
企業は能力を重視してますから、できる性転換女性なら、ヒロインみたいにやっていけそう。
その前に、企業は就活時に戸籍謄本などは求めませんから、黙っていればわかりません。
更新は週に1回を予定しています。
大体10回くらいのお話になるかなあと思っています。
土曜か日曜に更新するつもりなので、よろしくお願いします。