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四人

おもむろに瞳を開けると、朝だ。

 私はベットに横たわっている。

 窓から注ぐ日の光に瞳をくすぶられ、目を細める。

 何か重大な事を忘れている気がする。

 思い出した時、一気に目が覚め、愛梨はどうしたのだろうとベットから降りて、廊下に出ると、愛梨は床を雑巾で拭いて掃除をしている。

「愛梨」

 と声をかけ私は一安心。

「ユウリおはよう」

 何事も無かったかのように愛梨は明るい挨拶をする。

 そんな愛梨に憤って、私は愛梨の襟首を掴んで私の部屋に引きずり込んだ。

「ユウリどうしたんだよ」

「昨日はどうしたんだよ。あれから何があったんだよ」

 と大声で言う訳には行かないので、威圧的な口調で愛梨に昨日の事を話すように促す。

「分かったよ愛梨、昨日の事話すよ」


 私の記憶からは昨日愛梨に大声で愛梨の理性に呼びかけ相手の男三人を殺す事はなかった事までは覚えている。

 その続きは愛梨が話してくれた。

 もし私が愛梨を止めに入らなければ、確実にあの連中を殺していたと断言する。

 親友の私がやられそうだったので、愛梨は理性がなくなったと言っていた。

 愛梨はそんな自分が怖くないのだろうか?そんな事を気にせず、毎度の事のんきな感じで話す。

 だから私は「笑い事じゃないだろ」と言うと、愛梨は縮こまってその場で正座をする。

「自分のそういう所怖くないの?」

「・・・」

 俯いて黙り込む愛梨。

「愛梨はもっと自分の立場に危機感を持った方が良いよ」

 真摯な瞳を突きつけ私は愛梨に言う。すると愛梨は上目遣いで私を見て、

「だってユウリが側に入ると、つい安心しちゃって」

 呆れてため息がこぼれ落ちる。続けて愛梨は、

「ユウリって本当に私の事を大事に思ってくれるんだもん。明もエリもそうだけど、特に愛梨は本当に私を大事に思っている」

 何かそんな愛梨を見るともう怒る気すら起きず、でもここは私は心を鬼にして。

「とにかく家族の事で聞かれたくない事情は分かったよ。でも私にだけ心配かけるのはやめて」

 そこで愛梨の目を見ると、反らしているので、

「こっちを見ろ」

 すると愛梨は私の目を見て、その約束を守れそうにないと言うように再び私の視線から目をそらした。

「どうしてこっちを見ないんだよ」

「ユウリに迷惑かけそうだから」

「もうかけているよ。すごくかけているよ」

 何て言っていると愛梨が亡くなった事を思い出して、涙がこぼれ落ちそうだった。続けて私は、

「愛梨が死んで私や明さんにエリちゃんにどれだけ悲しませたと思っているんだよ」

 愛梨は立ち上がり、

「でもユウリ、いつまでもユウリの側に入るわけにはいかないだろ」

 確かに言われて見ればそうかもしれない。長く一緒にいればお互いに無理が生じて、憎い関係になってしまうかもしれない。

 でも私は今その時だけの気持ちかもしれないが、

「だったら憎い関係になっても私の所にいて」

 と。

 そういって愛梨の方に威圧的な視線を向け、愛梨も私のその視線を背ける事はしなかった。

 これで約束は成立された。

 愛梨は絶対に私に心配させてはいけない。

 何かあったら私に絶対に相談すること。

 まだちょっと引っかかる部分もあるが、とりあえず私は安心する。


 そんな時である。私の部屋に聡美お姉ちゃんが朝ご飯の支度が出来たと私達に告げる。

 食堂である居間に行って、座って食した。

 愛梨の方を見ると何か恐縮そうに食べていたが別に問題はないのかもしれない。

 お姉ちゃんも仕事に出かけて、私と愛梨は食事がすんで自分の部屋に戻った。

 すると愛梨は部屋に立てかけられている愛梨のギターを手に取り、気持ちよさそうに引きながら歌っている。

 愛梨の歌は昨日も感じたが、人を引きつける力を持っている。

 バンドを組んでいた時、私と愛梨とエリちゃんと明さんで演奏して、これなら人を魅了できると私達は確信したのだ。

 それでコンサートを開こうと決意をみんなで固めたときに愛梨は亡くなった。

 でもこうして愛梨は生きている。

 でも愛梨が蘇った事にまたバンドを再会してはいけないような気がする。

 何て考えていると、私の家の外からスクーターの音が聞こえてきた。

 誰だと思って窓から外を見ると、明さんとエリちゃんだった。

 明さんと目が合った瞬間、鼓動が張り裂けそうな程高鳴る。

「ユウリ」

 挨拶代わりか親指を突き上げ、にやりと笑ってその視線を私に向けた。

 それに反応したのが、愛梨で、テンションマックスって感じで、

「明、エリ」

 と言って二階の窓から軽々と飛び降り、そんな愛梨に対して、

「ちょっと愛梨」

 私が言うと愛梨は、

「ユウリも降りてこいよ」

 エリちゃんが降りてこいと言っているのか、顎をしゃくっている。

 階段から下りながら思ったが、明さんとエリちゃんはあの調子からして、もう愛梨に対して整理がついたのだろうと思った。

 その通りであり、三人の元へ行くと、愛梨が生きていた時と同じように私達愛梨いわくマブダチ四人そろったって感じで私も何かテンションがあがる。

 まあ立ち話も何だから、とりあえず私の部屋に上げ、私は台所で冷たいカルピスでもと思ってお盆に乗せて部屋に持っていった。

「お待たせ」

「おお、お構いなく」

 と明さんを見るとやはり胸がドキドキする。

 昨日はその事で悩んでいたのだが、愛梨の件で忘れていたんだっけ。

 とにかく一人一人にカルピスをもてなし、明さんに渡そうとすると、凄く緊張して目も合わせられない程だった。

「サンキューな」

 何ていつもの明さんだ。

 愛梨と明さんは本当に仲がよく、相思相愛って感じだ。

 昨日の件を思い出して一時はどうなるかと思ったが、そんな二人を見て何かほっこりとしてしまう。

 そこでエリちゃんが、

「ユウリ、昨日は悪かったな」

「別に気にすることないよ。明さんもエリちゃんも嬉しい気持ちとは別に許せない気持ちでもあったんでしょ。その気持ちは私も分かったよ。私も昨日の明さん程じゃないけど、愛梨に思い切り頬を叩いてすっきりしたしね」

 何てにっこりと笑う。

 愛梨と明さんは仲良くテレビゲームをして楽しんでいる。

 私とエリちゃんはそんな二人を見て、語り合っていた。

「昨日は明さんもうちも大変だったんだから」

 二人の気持ちは何となく分かった。

 突然あり得ないと思われる愛梨が蘇って、気持ちの整理がつかなかったのだろう。

 それ程、明さんとエリちゃんは愛梨の事が好きなんだなって。

 何て考えているとエリちゃんが、

「それよりも、あの時のユウリの勇気には感服させられたよ」

 それを聞いて、ゲームに夢中になっている明さんを見た。

 あの時の私を労った時の感触が肌に染み着くように、残っていて、その感触に心よせると、ドキドキする。

 それは別として私はエリちゃんに、

「あの時は明さんに言われた『お前は愛梨がいなきゃ何も出来ない女なんだな』って言われたのが悔しかったから」

「いや、確かに明さんがはっぱをかけたのもあると思うけど、ユウリは本当に勇気があるよ」

「いいや私には勇気なんてないよ。愛梨が死んでしまって私は部屋にこもって泣いてばかりだったもん。一人じゃ何も出来ない弱虫だって」

「実を言うと、うちも明さんも愛梨の死を知って、誰も見られる所のない部屋で泣いていたよ」

「えっ?」

 と以外だと言う反応を示す。

「うちの親友の明さんにその事を話したら怒られるんじゃないかって恐れたけど、言ってみたら明さんも誰もいない部屋の中で泣いていたんだ。

 その悲しみをうちと明さんで共有して、何とか乗り切ったって感じ。

 だから一人で何も出来ないのは当たり前だって学んだよ。

 だからユウリはうちから言うのも何だけど、弱虫じゃないと思う」

 エリちゃんの言葉に心に何か自信がついた感じだった。さらにエリちゃんは、

「もし明さんが愛梨と同じ目にあっていたら、うちも何も出来ずに部屋にこもって涙を流すことに明け暮れていたと思う」

「・・・」

 黙ってエリちゃんの話に耳を向ける。

「明さんはうちにとって本当の親友だよ。

 明さんがいなければ、今のうちはなかったかもしれない」

「そうなんだ」

 と感慨にふける私。

「悪いな、何か辛気くさくなっちまってよ」

「いいや、エリちゃんと明さんの事が一つ知って、友達としての何かが強まった感じがする」

「そうか」

 とエリちゃんは私がもてなしたカルピスを一気に飲み干して、

「とにかくうちらいつまで一緒にいられるか分からないけど、今を楽しもうぜ」

 そういって、明さんとエリちゃんが対戦ゲームをやっている所に飛び入るように「うちもやらせてよ」

「おうエリ、じゃあ愛梨とエリで対戦して見ろよ」

 そんな光景を目の当たりにして、エリちゃんの言う通り今を存分に楽しもうと私もテンションがあがり、私もゲームに参加した。

 一人でやるゲームは面白くないけど、こうしてみんなで盛り上がりながらやるのは本当に楽しい。

 お昼を回ってせっかく私達四人が集まっているので、台所でお好み焼きパーティーをした。

 コストはあまりかからないし、みんなで楽しくお好み焼きを作りながら楽しんで食べた。

 私はカメラを持ってそんなみんなで楽しんでいる姿をカメラに収める。

 こんな風に楽しい時が過ごせるのは愛梨が蘇ったからだ。もし愛梨が蘇らずにいたら、私達はバラバラだったのだろうし、楽しいはずの夏休みもこうして過ごすことは出来ないだろう。

 お好み焼きパーティーが終わって、明さんが言う。

「愛梨が蘇ってこうしてメンツがそろったから、またバンドを組まないか?」

 その事に関しては愛梨とエリちゃんは大賛成って感じだったが私は反対だった。その反対の意を三人に伝える。

「私思うんだけど、愛梨が蘇った事をあまり公にするのはあまり良くないと思うんだよね」

 そこで愛梨が、

「大丈夫だよユウリ。お前は心配しすぎだよ」

 愛梨の言う大丈夫って言う言葉は振り返ってみれば、その言葉に何回か救われた事があった。そこで明さんが、

「ユウリは気にしすぎだよ。愛梨にもし何かあったら、あたしが守ってやるよ」

 何だろう?その愛梨に対する明さんの気持ちに嫌になったりする。

 それよりも。

「でも」

 私が心配して言うと。愛梨が、

「大丈夫だよ。ユウリが思っているような秘密結社や政治の裏組織なんかに拉致なんてされないって」

 それを聞いた明さんとエリちゃんが「なんだよそれ」とか「いくら何でも考えすぎだろ」何て爆笑する。

 カチンときた私は、

「愛梨」

 と一喝して愛梨は「悪かったよ」と言って、二人は「まあまあ」と言った感じでなだめられ、私の怒りは収まった。

 バンドの件は愛梨と明さんとエリちゃんは大賛成。残る私は少し不安だが、三人の勢いに乗せられ賛成せざるを得なかった。

 早速バンドと言う事で、いつも練習している私の家の庭に私達は集まった。

 まあバンドの件は今日の所は結成が決まった事で話は終わり、午後から何をしようか話し合った所、別に何もする事はないが、私達四人が集まれば、退屈しない話題が盛りだくさんで途方もなく歩きながらバカみたいにはしゃぎながら語り合った。  

「早速帰ってベース練習しないとな」

 と明さん。

 エリちゃんが愛梨の頭を小突いて、

「愛梨がいなくなってから、ドラムの練習どころじゃなかったから、また取り戻すの大変だよ」

「悪いなエリ」

「でも何かうち燃えるわ」

「エリ、私も燃えるよ。これはエリに負けられないな」

 にやりと自信気に笑う明さん。

「うちも負けませんよ明さん」

 何て。

 ベースの明さんとドラムのエリちゃんは普段は友達であるが、バンドでは互いにライバルとなる。

 そんな関係って何かうらやましいと思ったが、私には愛梨がいる。

 それに明さんにもエリちゃんにも愛梨にも負けていられないので友達って時にはライバルになるのかなって思ったりもする。

 私もしばらくキーボードの練習はしていないから腕は落ちているだろう。

 でもすぐに取り戻して、また四人で素敵な演奏を奏でたいと思っている。

 色々と語り合い楽しい時間はあっと言う間に過ぎ去ってしまう。

 気がつけば、空は茜色に染まっていた。

「やべえ。原付ユウリの家の前に置きっぱなしだ」

 明さん。そこで私が、

「そろそろ帰ろうか」

 色々と途方もなく歩きながらしゃべったものだから、ずいぶんな距離を歩いて、戻った時には午後七時を回っていた。

 明さんは原付でエリちゃんを後ろに乗せて、「じゃあ、明日またユウリの家で」エリちゃんは「じゃあね」と言って去っていった。

 そんな後ろ姿を私と愛梨は見つめていた。

 愛梨はどう思ったか分からないが、私はやっぱり明さんに恋をしているのか?はっきり言って認めたくない。

 ご飯を食べて、私は早速倉庫からキーボードを取り出して家の庭で練習した。

 愛梨もその傍らでギターを弾きながら歌い練習に没頭している。

 やはりもうキーボードは一ヶ月もブランクがあるので、うまく弾けなくなっている。

 でも私は負けない。

 きっとこうして手をこまねいている間にも明さんもエリちゃんも練習に没頭しているはずだ。だから負けられない。

 とにかく私と愛梨が作った曲だけでも今日中に弾けるようにしたい。

 愛梨も私の家の庭でエレキギターを弾きながら歌っている。

 でも愛梨は本当に歌はうまいがギターのブランクは明らかだ。

 愛梨も私達に負けまいと必死だ。

 練習に明け暮れて、お姉ちゃんの声が聞こえた。

「あんた達、もう十一時過ぎよ。練習もそれくらいにしてそろそろ寝なさいよ。夏休みだからって不規則な生活していたら体を壊すわよ」

 もうそんな時間?

 とスマホを見ると本当に十一時を過ぎていた。

 とりあえず、私と愛梨が作ったオリジナルの曲は暗記できたが、まだ四人であわせるには、また明日四人で会って演奏して合わせられるか、また練習が必要だろう。

 そこで愛梨が、

「最後に私とユウリだけで演奏をあわせてみないか」

 愛梨も必死こいて練習していた。だから私は、

「とりあえず、やって失敗しても、今日の所はこれくらいにしよう」

「よし」

 と愛梨が言って、

「123」

 と合図でボーカルアンドギターの愛梨と私のキーボードであわせてみた。

 私達が演奏している正面に聡美お姉ちゃんが、穏やかな笑顔で見ていた。

 そう音楽は人を魅了するもの。だから音楽はただ単純に音が楽しいとかいて音楽なんだ。

 まだ演奏にむらがある。

 でも楽しい。

 演奏が終わって、私と愛梨の演奏を見ていた聡美お姉ちゃんは大きな拍手をくれた。

「あんた達やるじゃん」

 愛梨と私は顔を見合わせて、何か笑ってしまう。

 まだ練習は続けたいが、今日はもう遅いので、お風呂に入り、寝ようと思った。

 愛梨とお風呂に入って、ガサツな愛梨は髪を石鹸で洗おうとしていたので、それでは髪が痛むので、私がいつも使っているシャンプーとコンディショナーを差し出す。

「私の髪は短いから、適当に洗っていれば良いよ」

「愛梨は女の子でしょ。髪は女の命って聞いたことがあるでしょ」

「そうなの?」

 まったく愛梨は、もっと女の子らしくすれば、結構かわいいと思うんだけどな。

 お風呂から出ても、昨日と同じように愛梨の髪を丹念にドライヤーで乾かした。

 乾いた時に愛梨は鏡を見て、

「髪サラサラってこれって私?」

 自分の容姿を見て驚いている。

「そうだよ。愛梨は結構素質が良いから、ちゃんとしていればかわいくなるんだから」

「私がアイドル目指していた時は、こんなにかわいくなかったな。今だから言えるけど、私がアイドルのオーディションに落ちたのは、私の容姿を見て、その場で門前払いだったんだな」

 私は愛梨の話を聞いて、あの頃の愛梨の姿を思い浮かべる。

 確かにお世辞にもかわいくはなくアイドルの素質が無かったかもしれないが、愛梨のガサツなところに審査員が目をつけたのだろう。

 まあ過去の事はどうでも良く、私達はこれからの事を楽しもうと思う。

 愛梨に下着とブラは貸して、愛梨が一昨日着てきたジーパンと赤いカッターシャツを渡して、早速着替えて愛梨は、

「やっぱり私にはスカートは似合わないな」

 何て言っている愛梨を見るが、何か女ではなく男の子に見える。

 そんな愛梨に、

「愛梨、そんな格好で寝るのかよ」

「悪い?」

「そんなラフな格好で寝るのは、非常識だよ。私のネクリジェ貸すから、それを着て寝て」

「良いじゃないかよ別に」

「愛梨は常識を知らないの?」

「私はいつも下着とスポーツブラで寝ているけど」

「とにかくネクリジェに着替えてよ」

 と渋々ながら着てくれた。

 そんなネクリジェに着替えた愛梨もなかなか魅力的だ。

 それはともかくもう夜中の零時を回っている。

 そろそろ寝ないといけないので、私のベットで愛梨と共に私は寝た。

 明日また明さんエリちゃんに会える。

 またみんなとバンドが組める何て夢にも思わなかったが、仮に私達のバンドが世間に注目を浴びてしまったら、蘇った愛梨はどうなるのだろうなんて心配したが、それはないと心の整理をした。


 閉じた瞳に太陽の光にくすぶられ私は目覚める。

 一緒に眠っていた愛梨の姿がないと思ったが、多分、廊下で雑巾掛けでもしているのだろうと、部屋を出るとその通りだった。

「別にそんなに気を使わなくても良いのに」

 と私が言うと、

「ここにただでおいてもらっているんだから当然だろ」

 愛梨の律儀な一面を私は知る。

 その後、愛梨がトイレ掃除、風呂掃除をこなしていく。

 親元に帰れない愛梨の事情は話してはくれないが、愛梨は私を頼るしかない。

 でもこのままじゃダメだろう。

 いくら愛梨がいなくなるからと心配だからって、ずっと側についている訳にはいかない。

 いつか互いに無理が生じてしまう。

 その事も考えていかないと思っている。


 食事がすんで、私と愛梨はそれぞれ楽器の練習をした。

 そんな時、遠くからスクーターのエンジンの音が響いて、早速明さんとエリちゃんが家の庭まで寄ってくる。

「よう。お二人さん。がんばっているか?」

 と明さん。

「じゃあ、早速始めるか」

 私は倉庫にあるドラム一式を取り出すためにエリちゃんに手伝ってもらった。

 ドラムオーケー、ベースオーケー、キーボードオーケーギターアンドボーカルオーケー。

 それぞれスタンバってドラムの合図と共に演奏が始まる。

 そして私達四人の練習のかいがあって、多少ムラがあるが、何とか形には出来た。

「何とか形になったね」

 と愛梨。

「もう一度やってみようぜ」

 と明さん。

 だがやはり演奏にはムラがある。

 そこで愛梨が、

「やっぱり久しぶりだから仕方がないけど、ドラムとベースの演奏がかみ合っていない」

 と厳しく二人に言う。続けて、

「ドラムとベースは音のリズムを刻む大事だからしっかりあわせないとね」

「分かった。もう一度練習してくるよ」「うちも」

「いや、これは練習の量で音が合うことはない。とにかくベースとドラムは互いにライバル意識を持つ事は大事だが、やっぱり二人で話し合ってどう演奏するべきか考える必要がある」

「分かったよ。それを二人で考えろって言いたいんだろ」

 嬉しそうに笑う明さん。続けて、

「エリ」

 と明さんは言って、エリちゃんはにやりと笑う。

 そういえば忘れていた。

 演奏するには技術だけでなく、互いに知り合い、信頼しあわなければ、良い演奏は出来ない。

 だから闇雲に練習したってダメだ。

 以前愛梨の訃報を聞いてから、バンドどころじゃなくて忘れていた。

 でもその事に気づく事が再結成の第一歩だと私は思っている。

 そうだよ。改めて分かった事だが、このバンドに愛梨がいなくては成り立たない。

 その後、エリちゃんと明さんは私と愛梨が作った曲の譜面を見て話し合っている。

 愛梨は私には問題ないと言っていたが、みんなが頑張っているのにこうして手をこまねいて黙ってたら二人に失礼だと思って、次にやる曲の詩を考える為に部屋に戻る。


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