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ユウリと愛梨

海に行く途中、愛梨は複雑そうな顔をして黙って歩く。

 私は愛梨の事を誰よりも知っていると自負している。

 今は明さんとエリちゃんに心配かけてしまった事にわだかまり、その気持ちの整理をしたいのだと。

 一人にさせてあげたいと思うが、このまま愛梨が私の側から離れると、何かまた私の手の届かない所に行ってしまうんじゃないかと心配なのだ。

 だから私は愛梨と少し離れて、歩く。

 それにしてもやはり今日は暑い。

 海に到着して風は強く、海水浴もしくはサーフィンをしている人がちらほらと見受けられる。

 海に行くんだったら、水着でも持ってくれば良かったかな?

 愛梨は波打ち際をゆっくりと歩いて、私も少し離れた所から、その後についていった。

 一人になりたい気持ちは分かる。でも私は愛梨の事が心配なんだ。だから今は私の事をこの吹き荒れる見えない風とでも思っていればいいさ。

 こうして愛梨と共に波打ち際を歩き、雄大な海の向こうを見ると、何か落ち着く。

 そういえば愛梨は言っていた。

 悶々とするような事を考えても整理のつかない悩み事に翻弄される時はじっと海を眺めるだけでも、何か良いって。

 何て思いながら歩いていると、愛梨は急に立ち止まり、

「ユウリ、頼む、本当に一人にさせてくれ」

「エッ?」

 と疑問に思い、

「どうして?」

「どうしてもだ」

 その声は愛梨らしからぬ、涙声だった。

 そこでピンときて、愛梨は涙を見られたくないんだ。

 だったら本当に一人にさせた方が良いと思ったが、私は愛梨が泣いた所を今まで見た事がなかった。

 私が愛梨の顔をのぞき込むように見ると、愛梨は、

「見るな」

 と大声を上げた瞬間、私の中で何かがフラッシュバックしたような感じだった。

 以前幼かった私と愛梨の間にこのようなやりとりがあったような感じがして、その事を思い出そうとすると、何か心壊れそうな感じがして、思い出さないように、自分にそう言い聞かせた。

 私に背を向けて愛梨は泣いている。

 その涙を見てはいけないし、想像もしてはいけないと、さもなければ私の心は壊れてしまうと言うように何か想像すら出来ないおぞましい何かがあるような気がする。

 どうしてか分からない。

 いや分かってもいけない。

 愛梨は今は一人になりたいのだろう。

 それと同じように私も一人になりたいと思ったが、ここで愛梨を一人にする訳には行かず、愛梨の背中を見て、ぼんやりとして、そして壮大な海を見上げた。

 波の音、風の音、潮風の香り、海鳥の鳴き声、海水浴やサーフィンを楽しむ人達の賑わう声を五感で感じて、時間を忘れさせてくれる。

 海に行きたいと言う愛梨の気持ちが改めて分かった気がする。

 まるで世界に私一人しかいないような臨場感だ。

 そんな中、頭の中身が空っぽになるような感覚にとらわれ、色々と鬱積した気持ちを忘れさせてくれるような感じだ。

 愛梨はこの海を眺めて、明さんやエリちゃんに対して本当に悪いと思っていたのだろう。

 仮にもし私が死んだら、私が愛梨の死を悲しんだかのように愛梨も悲しむと思う。

 それで私が蘇って愛梨の前に現れたら、喜びと同時に憤りの気持ちにも翻弄される事を思うと私も蟠る。

 だから思うんだ。

 自殺でも殺される事でも、事故でも病気でも悲しむ人がいる限り、死んでしまう事は許されない事だって。

 何て海を見て、私の鬱積した気持ちが消えていくような感じがした。

 どれくらいの時間が経過したのか?いつまでもそんな海を眺めていたいと思ったが、私の頬に何か冷たい感触がして、気がつくと、愛梨が私の頬を両手でさすっていた。

「ユウリ」

 愛梨は笑顔で先ほどよりもすっきりした感じだった。

「愛梨」

 とその名を呼ぶ。すると愛梨は、私の体を抱きしめて、

「ユウリも明もエリも、本当に私の事を心から愛しているんだなって」

 当たり前だろって言ってやりたかったが、愛梨が何か愛している何て単語を使っている事に何かこっぱづかしくて返す言葉が言えなかった。

 でももう言葉はいらない。

 愛梨も自分が死んで、どれだけの人を悲しませたか反省をしている。

 だからもう良い。

 私はそんな愛梨を許す。明さんもエリちゃんも今頃どこかで、愛梨が蘇った事に対して、気持ちの整理をしているんじゃないかって思った。だから二人なら許してくれる。二人も愛梨の事が好きだから。


 愛梨と共に私の家に到着したのは、夕方五時くらいだが、やはり夏は昼間の時間が長いので、空はまだ青い。

 愛梨は私の部屋のベットに横たわりながらマンガを読んでいる。

 私は私で勉強でもやろうと思ったが、今日はあまりにも衝撃的な事があったからか?その事で頭がいっぱいで勉強には集中できずに、考えてしまう。

 明さんとエリちゃんが愛梨に対して思う気持ち。そしてその怒り。

 それとは別に今日明さんを目にして、今まで感じたことのないこの気持ちは何だろう。

 胸が張り裂けそうな鼓動。

 そこでピンと来る。

 私はその気持ちを小説で見た事がある。

 それは恋だと。

 だとすると私は明さんの事が好きなの?

 いや、明さんは私と同じ女だ。

 小説やドラマなどの恋は男と女互いに異性としあうものだ。

 もしこれが恋だとしたら、私は同姓癖の性なの?

 確かに世界中にはそういった人も少なからずいる。

 そういう人に対して、はっきり言って気持ち悪いと思う。

 いや、そういう偏見はいけないと思っているが私は受け付けない。いや受け付けたくない。

 でも明さんの事を頭に思い浮かべると、胸が張り裂けそうな程鼓動が激しくなる。

 表向きでは受け付けなくても、私のこの本能はそう言っているの?

 何て考えていると、肩に冷たい何かが添えられる感触がして、

「ひゃ」

 と素っ頓狂な声を上げ振り向くと、それは愛梨の冷たい手だった。

「ユウリどうしたんだよ。そんなに息をあらげて」

 私はとっさに、

「何でもない何でもない」

 こんな事、愛梨に言えるはずがない。

 いやもし愛梨に知られたら、死ぬほど恥ずかしいしバカにされる。

 それに愛梨は私が息をあらげている事に心配になったみたいだ。

 愛梨は私の目をじっと見つめ、

「大丈夫か?」

 とその冷たい手で私のおでこをさわって、調子を探っているような感じだ。

「大丈夫だよ」

 とその手を払った。

「そう」

 そういって再び私のベットに横たわり、マンガを広げて見ていた。

 それよりも私はやばい。

 声に出すと愛梨に妙な心配をかけてしまいそうなので、心の中で『嘘だ嘘だ嘘だ・・・・』と自分に言い聞かせるが、明さんの事を思うと、胸が破裂しそうな程、鼓動が激しく高鳴る。

 じゃあ、明さんの事を思わないようにするしかない。

 そう思って、私のベットに横たわり、マンガを読んでいる愛梨の方に目を向けた。

 そこで思うんだ。

 愛梨は今日、実家に帰るんだっけ。

 何て愛梨の方を見つめていると、私の視線に気がついて愛梨は私を見た。

「どしたユウリ」

「愛梨は今日帰るんだっけ?」

「そうだな。そろそろ私も帰らなきゃな」

 読んでいたマンガを閉じ、ベットから降りて、

「私の服は?」

 そこでハッと気がついて、

「ごめん洗濯したんだけど干してなかった。ほんとごめん」

「えーマジで」

「ごめん」

 と謝るしかない。

 ため息をついて愛梨は、

「じゃあ服は今度で、仕方がないけど、この服で帰るよ」

 と愛梨。

 私は何かそんな愛梨が心配になって、乾くまで私の家に入ればと言おうとしたが、愛梨の親も心配していると思って引き留める事が出来なかった。

 愛梨は私の部屋から出ていって、心配になった私はその後を追って、玄関まで駆けつけた。

「どうしたんだよユウリ」

 何て笑って、

「今度いつ会える?」

 人差し指を唇にあてて考える仕草をする愛梨は、

「とりあえず明日、私の服取りにユウリの家に行くよ」

 と言って玄関のドアを開いて出ていき、私の視界から愛梨が見えなくなった時、何か分からないが、愛梨の事が凄く心許なくなる。

 何て思いながら玄関の前で立ち尽くしていると、呼吸が乱れて、不安になってきた。

 ただ私は愛梨の事が心配なんだ。

 せっかく蘇った愛梨がまた消える事を考えると、不安で不安で仕方がない。

 でも愛梨にも家族がいるし、いつまでも私の家にとどまらせるのは無理があるだろう。

 でも、

 心配でたまらない私はせめて愛梨が無事帰宅するまで尾行する。

 まだ別れてから時間はたっていないと思うので、遠くには行っていないだろう。

 愛梨の家をたどりながら、愛梨を追いかけて、愛梨の後ろ姿が目について、とりあえず安心する。

 愛梨は私に気がついていない。

 私は愛梨に気づかれないようにちゃんと家に到着するか心配なんだ。

 だからせめていつまでも一緒にいる事は不可能だと思うが、ちゃんと家に帰るまで、尾行しようと思う。

 尾行して愛梨は帰路とは違う道を歩きだした。

 愛梨は家に帰ろうとしない。

 いったいどこに行こうと言うのだろうと、心配で気づかれないように尾行する。

 愛梨が向かっている所は、夜危なくていかがわしい繁華街だ。

 時計を確かめるともう夜七時を示している。

 夏の空はまだ真っ暗ではないが、家に帰らないで何をしようとしているのか心配になる。

 ここで声をかけて、どうして家に帰らないのかと聞こうと思ったが、もう少し様子を見よう。

 そして繁華街に到着して、愛梨は繁華街に飲み込まれるように入って行った。

「何をしているんだ愛梨は」

 人知れず呟き、夜の繁華街を高校生の女の子が歩いていたら、変な輩に目を付けられることを考え、

 私はその場で首を振って、それ以上考えないように振り払った。

 正直こんな時間に夜の繁華街に入るのは凄く怖いが、愛梨が心配で見過ごす訳には行かないので尾行を続ける。

 人が行き交う繁華街。

 しっかりと愛梨を見失わないように後を追う。

 そして繁華街中央に位置する噴水広場にたどり着いて、愛梨はベンチに座って寂しそうに俯いていた。

 どうして家に帰らないでこんなところにいるのか?もしかしたら愛梨には帰る場所がないんじゃないかと思って、このまま一人にさせるのはかわいそうだと思う。

 だから愛梨の所まで身を乗り出して近づこうとしたが、愛梨はどうしたのか急に立ち上がり、いきなり歌いだした。

 その歌は私が作詞をして愛梨が作曲をした曲だ。

 楽器の演奏なしに、その独自の心に浸透するような歌声に行き交う人がその歌に引きつけられる人がたくさんいた。

 私もその一人であり、愛梨の歌に心が魅了される。

 歌い終わって、愛梨は、行き交う人に拍手が送られ、愛梨にお金を渡す人もいた。

 そういえば愛梨が蘇ったのは詳しくは聞いていないが、再会した昨日ではない。それ以前から生きていたと聞いた。

 もしかしたら、蘇って行き場を失った愛梨はこうしてお金を稼いで生活したんじゃないかと思った。

 愛梨は歌い続ける。

 そんな行き場を失った愛梨が何かもう見ていられなくて、愛梨の歌に魅了されている人をかき分けて、私はそんな愛梨に抱きついた。

「ちょっとユウリ?」

 愛梨の歌声に魅了されて集まった人たちがどよめく。

 でも独りぼっちの愛梨が悲しくて、そんな事も気にならず私は愛梨を離さない。

「ユウリ、ついてきたのか?」

 愛梨の顔を見ると何事もなかったかのような平然とした顔にいらだち、私はその頬を思い切り叩いた。

「お前はバカかよ。帰るところがないなら、どうして相談してくれなかったんだよ」

「・・・」

 罰が悪そうに黙り込んでいる。

「何とか言えよ」

 と罵る。だが愛梨はそんな私を抱きしめて、歌を歌う。

 こんな状況で歌うなんて、何を考えているのだといらだち、また頬に思い切りピンタをかましてやろうと思ったが、愛梨は私が身動き出来ないようなすさまじい力で押さえつける。

 愛梨の歌を聴いている人の視線が気になり、正直恥ずかしい。

 愛梨が歌い終わって、通りすがりの人に拍手を送られ、愛梨の足下に小銭を投げる人が何人かいた。

 ある人が愛梨に、

「その子は?」

 と聞かれて愛梨はにこやかに、

「私の友達です」

「いったい何があったの?」

 と聞かれ、

「色々とあるんです」

 と言って足下におかれた小銭を拾い上げて、私をお姫様だっこをしてその場を急いで後にした。

「おろせ愛梨」   


 愛梨に私の声は聞こえていない。

 それにしても私を持ってすさまじいスピードだ。

 昨日も感じたが蘇った愛梨は何かあるだろうと思っている。

 たどり着いた場所は人気のない繁華街の路地裏だった。

 ようやく私をおろしてくれた愛梨は私を抱えてあんなに走ったのに息切れ一つ起こしていない。

 それよりも私は愛梨に威圧的な視線を向けて、愛梨はその瞳をキュッとつむって私が本気で心配して怒られる事を覚悟している感じだった。

 愛梨はどうやら反省しているような感じだったので私は怒る気は失せていた。

「愛梨」

 私が呼ぶと、

「ユウリごめん」

 謝る愛梨。

 そんな愛梨を見て私はほっとする。

 本当に心配して後を付けて良かったと思っている。そんな愛梨に、

「どうして家に帰らないんだ?」

「ユウリごめん」

 先ほどと同じように直立で立ったまま目をキュッとつむって、その質問に答えたくないと言うような感じがだったが無理矢理にでも答えさせようとしたが、何か愛梨が泣きそうなのでやめておいた。

 愛梨は泣き顔を見られたくない。それで私がその泣き顔を見たり想像すると心壊れそうな気持ちも畏怖している。

 もしかしたら愛梨、家族の元へ帰れない事情があるんじゃないかと思う。

 まあ気になるがそれはそれで良いとして、私は質問を変えた。

「とにかく帰るところがないなら、どうして私に言ってくれないんだよ」

 ようやくその目をおもむろに開いて、

「これ以上ユウリに迷惑はかけられないよ」

 そう答えて、私は憤り、さっきと同じように愛梨に威圧的な視線を向けた。すると愛梨はさっきと同じように目をキュッとつむって、

「ごめんユウリ」

 そんな愛梨を見る私は、大きくため息をついて、徐々にその怒りは抜けていく感じがして、

「愛梨」

 と言ってその冷たい手をとると、愛梨は安心したかのような顔をしている。

 愛梨は何か蘇って得体の知れない力を持ったような感じだ。

 私に迷惑をかけたくないなら、その人離れした力で私から逃げられるはずだ。

 でも愛梨は逃げない。

 もしかしたら私に助けを求めているんじゃないかと思える。

 そんな愛梨に私は、

「とりあえず、今日の所は私の家に帰ろう」

 すると愛梨は笑ってうなずいてくれた。


 路地裏から繁華街に出ようとしたところ、非常階段の上から、見るからに素行の悪そうな男三人が降りてきた。

「おい。お前らこんなところで何をしているんだよ」

 降りてきた三人は私と愛梨を逃がさないかと言うように路地裏から出る通路を塞ぐ。

 私は怖くて声も出ず、動けなかったが、愛梨が私の前に身を乗り出して、

「別に何もしていないよ。そこをどいてくれない?」

 男達は不気味な笑みを浮かべている。そこに金髪リーゼントの男が、

「健二さん。二人ともなかなかの上玉っすよ」

 その健二と言う男は三人の中の中心的人物みたいで、スキンヘッドに厳つい顔をしている。

 私はその健二と言う男に視線を送られて、私は怖くて立つこともままならず、足がすくんで目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。

 その健二と言う男はにやりと笑みを浮かべて、

「まだ俺達何もしていないのにな」

 そこで坊主頭で顔面ピアスだらけの男が、

「シャブづけにしちゃいましょうよ」

 男達が恐ろしい事を言っている。

『愛梨助けて』と叫びたいが、叫ぶことも言葉にする事も出来ない程私はおびえて、地面にへたりこんで震えていた。

 そこで愛梨が、

「お願いだからそこを退いてくれないかな?私の友達をこれ以上悲しませないで」

 直立したまま、その顔を伏せそう言った。すると男三人は、ゲラゲラと笑って。

「そんなにお友達の事が大事?」

 と健二と言う男がそういう。そういって健二は首をしゃくって私に二人をし向けるように促す。

 するとリーゼントと顔面ピアスだらけの厳つい男が私の所に寄ってきて、私はこれ以上の恐怖を味わった事のないような感じだった。

「ちょっと立てよ」

 私の手をつかんだ瞬間、いったい何が起こったのか?リーゼントが表情も崩さずに倒れ込んだ。続いて顔面ピアスだらけの厳つい男も。

 私の側にいたのは愛梨だった。どうやら愛梨は私の気にも留められない速さで連中二人を打ちのめしたみたいだ。

 愛梨の表情を見ると、その燃えるような赤い赤い目の奥に怒りをたぎらせているかのようだ。それに何かその怒りを抑えているような感じもする。その愛梨の怒りが爆発したら、何か嫌な予感がするのは何だろう?

 私の予感は当たっているかのように愛梨は健二に言う。

「私をあまり怒らせないでよ」

 愛梨の怒りをたぎらせた赤い赤い目を見ると、もはや一色触発的な感じだ。

 やめるように促したいが、私は怖くて声さえも出ないほどおびえている。

 だから私は祈った。

 これ以上愛梨を怒らせないでと。

 だがその祈りとは裏腹に、やはり男というのは女にやられたら、情けないとでも思っているのか?その通りでみたいで。

「女にやられたまま引きさがれるかよ」

 健二はそういって無謀にも猪突猛進に愛梨に立ち向かう。

 見ていられない。

 そんな時、先ほど愛梨に打ちのめされたリーゼントに私の体を牽制して私の顔にナイフを突きつけた。

「待てよ」

 と叫ぶリーゼント。

 愛梨が猪突猛進の健二に攻撃を加えようとする寸前、立ち止まり、私を人質にしたリーゼントの方を見る。

「こいつの命がどうなっていいのかよ?こいつの命が・・・・」

 いったい何が起こったのか?リーゼントも健二も倒されて、ここで愛梨の方を見て気がつくと、

「うびゅうぎゅびゅ」

 と、もはや声にならない声を発して理性を失い、リーゼントの首元を掴んで、そのリーゼントの首元にかみついた。

 何をやっているんだろうと見ていると、どうやら血液を吸っているみたいで、愛梨は吸血鬼何じゃないかと思って、それでこのような人離れした力を得たのだと確信した。

 とにかくやめさせないと、愛梨は殺人鬼になってしまう。

 でも怖くて声が出ない。

 でもこのままだと愛梨は正真正銘の殺人鬼に。

 そんな事はさせてはいけない。

 私達を襲ってきた男達は救うにも値しない最低な人間だ。でもこのままじゃ愛梨は殺人鬼に。

 だから私は思いきって、大声で言う。


「やめろ愛梨」


 と言った瞬間、私の声が愛梨の理性に届いたのか、リーゼントの首元を掴む手を離して、その赤い赤い目を私に向ける。

 愛梨の顔は凄い形相で、目を背けたいが、ここで背けたらいけない気がして、その目をじっと見つめる。

 愛梨の形相が次第に緩やかになり、

「ユウリ」

 と私の目を見つめて言う。

 私はほっとして・・・。


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