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永遠のフォルトゥーナ

「アスナってあの以前会った。日本を席巻するシンガーソングライターの?」

「どうして?」

 二人も感じている。

 アスナさんは、この部屋を監視して見ているし私達の会話も筒抜けだ。

 感じる。アスナさんの見透かされ動揺する姿が。そして私は、

「やっぱりアスナさんなんだね」

 すると映写機に映し出された涙ちゃんをリンチしている映像が消えた。

「私達の何が気に入らないのか知らないけど、こんな事をして楽しい?」

 感じる。アスナさんは激しく動揺している。

「私はあなたの事が好きだった。あんなにキラキラして、あなたの歌で勇気づけられたことがたくさんあった」

 こらえきれず私は涙したが、毅然として、

「誤解しないでほしいんだけど、私はこんなことをされたからってあなたを憎んだりしない。今もこれからもあなたの事を好きでい続けたい。あなたの歌を聞いて私は私でいられた。私はあなたの歌を聞いて私は夢を追いかける事が出来た。そして素晴らしい仲間と巡り合えた」

 そして私は思いを込めて言う。

「お願い。目を覚まして」

 すると激しい音がして、それはドアが蹴り敗れる音だった。

 私達は見た。アスナさんの悪意を感じられないその笑顔に。心ではその笑顔を見ていると癒されるような感じになるが、体が凍り付く様におののいた反応をしている。

「ユウリちゃんって言ったね。あなたの洞察力には恐れ入るわ。歌で人を引き付けるだけの力はあるわけだわ」

「涙ちゃんは関係ない。だから涙ちゃんを助けて」

 悪魔に魂を売るような行為をしているのに、表情からは何の悪意が感じられない。

 だから私はこの人は恐ろしい人だと心に言い聞かせたが、彼女の悪意を感じられない穏やかな笑顔を見ていると、そんな恐怖心さえ忘れてしまう。

 目をそらした方が良いんじゃないかと思うが、私はアスナさんを真摯な瞳で見る。

 そしてこの人のその穏やかな表情の裏に隠されている悪魔が見えて、そこで初めて恐怖心と共に緊張感が沸き起こった。

「私の心の裏を見たのね」

 彼女は私の表情を見て悟った。続けて、

「大したものよ。私を前にその緊張感を保てるなんて」

「お願いだから涙ちゃんを助けて」

「そんな事が言える立場だと思う?」

 拘束され倒れ伏している私を持ち上げ、その穏やかな笑顔から悪魔そのものの笑顔が浮き彫りになってくる。

 そして私の頬をはたく。痛みは生じても私はアスナさんのその瞳を見る。

「あなたのような人間は痛みを加えても苦しまない事を知っている」

 そういってアスナさんは後ろにいる仲間に合図を送り、明さんとエリちゃんを痛めつける。

 私の大切な仲間を痛めつけ、私の心を痛めつけようと魂胆が分かった。

 確かにそれはそれで心は痛む。

 でももう私達は信じあっている。

「どう?あなたのような人間なら、心が痛むんじゃない?」

「あなたの心はどうなの?」

 表情に動揺がにじみ出る。

 私はアスナさんの心に問いかけている。

 そこでアスナさんに対する思いが一つにまとまり、

「あなたは多くの人に夢と希望を与える存在。その存在を維持するには相当な心のエネルギーが必要となってくる」

「何が言いたいの?」

 表情が崩れ怒りが生じている。

「つまりあなたは夢を与える存在でありたいが為に、いつしかファンの言葉も心に響かなくなり、心が疲弊して、その思いを誰にも打ち明ける事が出来ずに自分自身を傷つけてしまった」

「黙れ」

 怒りに翻弄され我を忘れて奇声を発する。

 怒りをあらわにして否定するのは本人が自覚していない事のあらわれだと気が付く。

「またその愛梨というあなたのお友達が助けてくれると思っているのでしょ。だからあなたはそうやって平静でいられる」

「それもあるよ。私達は助け合って生きているからね。愛梨を期待しているんじゃなくて私はみんなを、そして私自身を信じている。だからこうして私は恐ろしい現実を見つめている自分でいられる」

「このアマ」

 と暴言を吐いて私の頬に拳を思い切り突きつけた。

「今度は嫉妬?」

「うるせー」

 私を壁に叩きつけ、殴るけるの繰り返し。

 痛みつけられ、もはや痛みと言う感覚がなくなって来た。

 でもこの痛みよりも悲しい気持ちに苛む方が痛いと思っている。

 怒りに翻弄され私を殴り続けるアスナさんの心はどんどん曇って行く。

 自分でも善人ぶっているのか分からないが、そんなアスナさんに心を曇らせたくないと思ってしまう。

 でも私はもう抵抗する事が出来ない。

 殴られけられ、意識が遠のく感じがした時、アスナさんの手が止まった。

 そしてアスナさんは呟いた。


「お母さん」


 と。

 ここで私は薄れそうな意識の中気が付く。

 アスナさんに私の思いが伝わったんじゃないかって。

 アスナさんが呟いた『お母さん』は言うまでもなく、アスナさんの心のよりどころであったんだ。

 それでアスナさんはその様子だとお母さんを亡くして、心のよりどころをなくし、自分を傷つけ自分の中の弱い心に付け込まれ、そして私達に刃を向けた。

 アスナさんは大勢の人に夢と希望を与える存在であるアーティストだ。その存在を維持するには相当な心のエネルギーが必要だ。

 だから仕方がなかった。

 私達をこのような状況に陥らせることで、自分を保たせるしかなかった。

 アスナさんは自分の名誉だけに歌を歌う人じゃない事は私がブラウン管で初めて見た時、心がときめいたことが証明している。

 人を貶める事で得るエネルギーはやがて自分を見失い一人ぼっちになり、悲しい運命を迎える。

 だから私がアスナさんを気づかせたい。

 アスナさんの歌を聞いて夢を見る素晴らしさを気づかせてくれた事と同じように。

 

「私自身慢心している訳じゃないけど、アスナさんは私達の歌に共感してくれたんだね」

「何を自惚れているの。私はあなた達を見ているとムカつく。殺してやりたいほどムカついただけよ」

「それは好きだって意味だよ」

「くっ」

 と吐き捨て、私の腹部を蹴り上げる。

 さほどの痛みは感じない。私はアスナさんの目を見据え、

「アスナさんの素直な気持ちで問いかけてみなよ。私や愛梨がアスナさんの歌に共感したようにアスナさんも私達の歌に共感した。私達の歌がすべての人を魅了する事なんてないけど、私達の歌は人を不幸にするためのものじゃない。その為に歌っているんじゃない。

 それは富とか名誉とかほしいけど、それよりも私達は、


 あなたが私達を感動させて夢をくれたように私達は誰かを幸せにしたい。

 その為に歌っている。

 もし疑うならこの両目を切ってあげても良いよ」


 そしてアスナさんはその場で立ち尽くしながら、無邪気な子供のように泣いた。

 それを目の当たりにしたアスナさんの取り巻きたちが、「野郎」と私達に痛めつけようとした時、

「もう良いわ。縄を外しなさい」

 縄を外してもらった。

 意識が朦朧として、立ち上がるのがやっとだが、明さんとエリちゃんが、

「ユウリ」

「無理するな」

 と心配してくれる。

 アスナさんの方を見ると涙を流し、立ち尽くしている。

 明さんが拳を丸めて殺気を感じた時、エリちゃんが静止する。

 確かにアスナさんのやった事は許されない事だし許せない事だ。

 でもその憎しみを向ければまた憎しみは連鎖して行くだけ。

 だからもういいんだ。

 ふと目にしたのがアスナさんはナイフを取り出して自分の喉元に突き刺そうとした時、私は止めたかったが私にはとめる力がない。

 それを止めたのがエリちゃんだった。

「何をやっているんだ馬鹿野郎」

「死なせてよ。私はもう歌う事は出来ない。私はもう生きる資格なんてない」

 そこで明さんが、

「エリ、そんな奴死なせてやれよ。なぜ止める?」

「分からないけど、体が勝手に・・・」

 うまく言えないような言葉でいうエリちゃん。

 自分がしてきた事に対してアスナさんは慟哭する。

 私はもう、そんなアスナさんにどんな言葉をかければ良いのか分からない。

 そこで愛梨が立ち上がり、歌った。

 心に染み入るような透き通った声で。

 心が潤って、体中痛みは感じるが不思議と動ける。

 そして自分の罪に苦しみ悲しみ苛んでいたアスナさんは顔をあげ、涙を拭い少し心が浄化されるように穏やかな表情をしている。

 そして殺伐とした建物から殺気が消えた事に、きっとアスナさんの取り巻き達も愛梨の歌声に心が潤い、浄化されたのだろう。

 歌い続ける愛梨。

 そんな愛梨を見つめて、これ以上愛梨を歌わせてはいけないんじゃないかと思って、心が潤って痛みは緩和されても痛みは変わらずに生じたが、私は痛む体を引きずるように愛梨の元へと行った。

 すると愛梨からまばゆい光が放たれ、あまりのまぶしさにその視線を背ける。

「愛梨」

 思わずそう叫び、私は愛梨をこのままにしてはいけない気がして、まばゆい光を腕でかわしながらゆっくりと近づいた。

 そして愛梨はその光を放ったまま愛梨は走りだし、私はそんな愛梨にしがみつき、愛梨を止めようとしたが、愛梨の暴走は止められず、私はそんな愛梨をしがみつき振り回されても離さなかった。

 愛梨はそのまま走って窓ガラスを突き破り、そのまま私を抱えたまま空を飛んだ。

 どんな事があってもこの手を離してはいけない。私はそう思って必死にしがみついている。

 下を見ると、落ちたら死んでしまう高さだ。だから私はこの手をますます離してはいけない、離したら私は落ちて、その先は言うまでもない。

 でも離したら、それよりも恐ろしい事が起きそうで私は怖かった。

 死ぬ事よりも恐ろしい事って、想像するだけで心が凍り付くほどの心の痛みだ。

 それは心臓を抉られるよりも痛く辛く死に至る事よりも辛い事だと思う。

 私はそんな気持ちになりたくない。

 私は目をキュッと瞑って風を切る音と感覚を耳と肌で感じている。

 メモリーブラッドで愛梨の心を探ってみると、もう愛梨の心は人間の心ではない。

 私の思った通り愛梨は死ぬよりも残酷な存在になろうとしている。

 私は愛梨にしがみつき祈るしかなかった。

 そして風を切る音と感覚がなくなった。

 私は恐る恐るその目を開いた。

 そこは真っ白く私はまるで水の中で浮いているようで苦しくもなくただ浮いている感じだった。

 目の前に愛梨がいるわけでもないのに、愛梨を感じる気持ちが遠ざかっていく。

「行くな愛梨」

 私は切実な思いを込め私は必死に言う。

 そして愛梨の言葉を声ではなく心で受け止められた。

「ユウリ、私は分かったんだ。私はもうこの世に存在してはいけない者だと」

「・・・」

 言葉もなく私の心は凍り付く様におののいた。

「私はユウリと出会えてよかった。それに明とエリに出会えて。良い事も悪い事もすべてが素敵なものだと思えたよ」

「何を言っているんだ愛梨。これからじゃないか、これからもっと素敵な未来を描いて行こうよ」

「ありがとうユウリ」

 私も感じていた。愛梨はもう存在してはいけない者だと。人間の法則を破って蘇った愛梨。だったら、愛梨は最初からいない方が良かったんじゃないかと思えてしまう。でもそう思いたくない。そう思ってしまったら、悲しいし、それが死ぬよりも残酷な事だと分かった。

 だから私は決意し愛梨に言う。

「愛梨、強く生きる事を諦めるな」

 何か私の思いが愛梨に届いたような感じがする。

「でも私はもうすべてを知る存在として、もう存在できない。もう未来は見えている。私の存在はユウリだけではなくみんなを巻き込んでしまう」

 私は愛梨に質問する。

「愛梨はどうしたい?私達と同じ時間を生きたい。そうでしょ」

「・・・」

 言葉をなくす愛梨。愛梨は迷っている感じだった。だから私は、


「愛梨、私を信じるんじゃなかったのか?」


 その時、私の気持ちが愛梨に届いたんじゃないかと思った。

 

 愛梨は何を思ったのか?無茶苦茶な何かを感じた。

 そこでここは愛梨の心の中で私にだけ使えるメモリーブラッドで感じていたことが分かった。

 愛梨は葛藤している。すごく心吹き荒れるような激しい葛藤だ。

 そして私は手を伸ばして愛梨に言う。

「愛梨、手を伸ばせ」

 そう呼びかけると、激しい葛藤が治まって行き愛梨が少しずつ近づいてきている感じがした。

 私は「愛梨」と来いと言わんばかりに叫ぶ。

 そして私は感じたんだ。愛梨のすべてを。

「愛梨、共に生きよう。確かに愛梨は人間の法則を破って蘇った吸血鬼だ。私達に迷惑をかけてしまう時もあるだろう。

 でも私は、いや私や明さんエリちゃんは愛梨と同じ時代を生きて愛梨を感じていたい。

 私達は愛梨を幸せにしたい。そして愛梨は私達を幸せにしてくれる。いや私達だけじゃなく、愛梨がその手を伸ばせば、もっとその思いは広がって行く。

 明さんが明さんである為に、

 エリちゃんがエリちゃんである為に、

 愛梨が愛梨であるために、

 そして私が私である為に、

 それらの思いを育みながら同じ時代を生きていこう愛梨」


 気が付くと私は愛梨の手をしっかりと握りしめ、こぼれ落ちそうな幾千の星空の下のとある森の中で気を失っていたみたいだ。

「愛梨」

 と揺さぶると、愛梨はその吸血鬼特有の赤い赤い瞳を開いて私の姿を意識して、

「ユウリ」

 と呟いた。

 愛梨に自我があると安心する私。

 私と愛梨は立ち上がり、そこへ明さんとエリちゃんが私達の元へ駆けつけた。

 二人の話を聞くといきなり輝きを放ちながら、飛んで行ってしまった。それで私達を辿ってここまで駆けつけてくれたみたいだ。

 それに涙ちゃんは無事に解放されたみたいだ。

 今気を失っているが、大事に至らないと聞いて私と愛梨はホッとする。

 目的は果たした。

 後は集落に戻るだけ。

 そう思った瞬間、森の向こうに何か人の気配を感じた。

 ゆっくりと森を抜けみんなも私の後に続いた。

 そして森を抜け、そこは広い海が見渡せる渚だった。

 そこには赤いバンダナに白いカッターシャツに青いジーパンのラフな姿が印象的な横浜太郎の姿だった。

「横浜太郎さん」

 私が呼ぶと横浜太郎さんはエリちゃん、明さん、愛梨、それぞれ確認するように見て、そして私にその視線を向けて言う。

「見届けさせてもらったよ」

「・・・」

 私は横浜太郎さんのその真意が分かったと言うひたむきな視線を向けた。

 横浜太郎さんは、その目を閉じ、私の目を見て悟ったような感じだった。

 そして横浜太郎さんは言う。

「吸血鬼の末路はすべてを知る存在となって生きる意欲を失い、人間としての理性を失い、死ぬことも出来ずに体が朽ち果てても輪廻することも出来ない。

 それを防ぐには愛梨ちゃんが生きる意味、あるいは意欲を維持させ続ける必要がある。その為に君達三人がいた。

 人間は孤独になると、自然と死に至り、輪廻する事が出来る。でも吸血鬼は朽ち果てても輪廻することが出来ない。その違いだ」

 横浜太郎の話を聞いて私は愛梨を一人ぼっちになったら死ぬ事よりも恐ろしい事が起こる事を感じたのは間違いじゃない。

 横浜太郎は煙草を取り出して一服ついて、

「俺が思うに吸血鬼になった人間はすべての生きとし生ける者の魂の末路なのかもしれない。

 そう思うと生きとし生ける者がどうして存在しているのか?

 それでどうして魂が存在しているのか?

 もしかしたら俺達に宿っている魂は始まりも終わりも分からない時から存在していてすべてを知っていたのかもしれない。

 それで魂が不完全な俺達に宿り完全を求める。

 つまり俺達は神に戻りたいと本能で言っているのかもしれない」

 そういって横浜太郎さんは、私達に向かって歩み寄り、私達の間を通り過ぎて、立ち去ろうとする。

 私達はその横浜太郎の後ろ姿を見つめて、私はその背中に向かって言う。

「吸血鬼となった愛梨を元に戻す方法がないなら、私は、私達は愛梨と共に生きるよ。

 愛梨が太郎さんが『すべてを知る存在になる』と言う残酷な真実と向き合いながら」

 そこで私は知ったんだ。

 太郎さんも吸血鬼だと。

 太郎さんも残酷な真実と向き合いながら生きていると。

 きっと太郎さんは一人で、その神に近い存在である吸血鬼の謎を追い求める事を糧として生きている。

 だから私は、


「ありがとう」


 とその後ろ姿めがけて言った。

 そして横浜太郎は振り返り、にやりと嬉しそうに笑って、

「君たちを見ていると生きる力がみなぎってくる。俺は君たちみたいな人間が好きだよ。

 分かっていると思うが俺も吸血鬼で変わっていく時代の中を見てきたが、それでも人は争いを繰り返す。

 いつの時代もそれは存在する。だから君達みたいなのが、いつの時代も必要なのだと思うよ」

 フー。と息をつき横浜太郎は。

「ちょっとおしゃべりが過ぎちゃったかな。今の事は忘れてくれ。それともう俺に会わない事を君達は願うべきだ」

 その横浜太郎が言う意味は心に言葉にしなくても分かった。

 私達は横浜太郎の後ろ姿が見えなくなるまでその姿を見つめて、私達の視界からいなくなった時、エリちゃんが、

「終わったんだな」

 私達はその場で立ち尽くして幾千の星空を見上げた。

 そして海の向こうから太陽が昇り、新たなる朝を迎えて、希望を感じた。


 その後の話だが、涙ちゃんを無事を知り、私は涙ちゃんを叱った。

 誰かに迷惑をかけたくないその気持ちは大事かもしれないが、一人で抱え込まないで困った時は、お父さんである一さんを頼るなりしてみんなに心配をかけないようにと。

 涙ちゃんは私達の大事なファンだし友達だからね。

 素直で優しい涙ちゃんは、涙を飾って笑ってくれたことに私達は安心する。


 集落に戻ろうとしたが、何か私達の周りに殺気が消えて、もう私達は帰る場所に帰っても大丈夫なんじゃないかと話し合い。

 恐る恐るだが私達は故郷に戻った。

 そこで待ち受けていたのが、私が涙ちゃんを叱るように聡美お姉ちゃんも私達を思いっきり心配していたみたいで私と愛梨はともかく明さんもエリちゃんもそのとばっちりを受けた。

 それは私達フォルトゥーナは横一列に並ばされて、順番に聡美お姉ちゃんの往復ピンタが炸裂。

 聡美お姉ちゃんにはたかれるのは初めてで、その痛みはあまり感じられなかったが、心にしみて、戒めのひと時に感じた。

 事情は分かってくれた。

 どうしようもなかったのだと。

 でも聡美お姉ちゃんは言ってくれた私達の事を死ぬほど心配したので、私達の為なら命を投げ出すのも惜しまないと。

 その目を見てそれは嘘偽りが全く感じられない真の言葉だった。


 そして私達の夏休みは終わった。

 学校が始まり、また新たな気持ちで迎えた。

 私達フォルトゥーナは生きる喜びを糧に歌い続け、この果てしなく続く夢の道を歩み続ける。

 私達が私たち自身である為に、そして私達が生きている限り、夢は終わらない。


最後までお付き合いいただきありがとうございました。よろしければ感想を一言お願いできたら嬉しいです。

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