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綾香

地図を見ながら山道を歩き私達は集落に向かう。

 森の中ですごく不気味で、私は怖くて放心状態の愛梨の手袋を通じての手を握りしめ向

かった。

 夜が更けてきて、弱音の一つ漏れそうだったが、みんなも疲労困憊して私だけじゃない

事に我慢する。

 少し休んで再び歩く。

 我慢も限界で、私達を狙った連中の事を恨む私自身が芽生え始めて来た。

 どうやら私の精神力も限界に近づいてきた。

 そして、

「ここだ」

 辺りを見渡すといくつかの古い建物やテントなどが広場に散らばっていた。

 人の気配は感じられるが何か閑散として殺伐とした雰囲気だ。

 私はもう疲れて、その場でへたり込んだ。

「もうダメ」

 すると愛梨が歩き出し、

「愛梨どこに行くんだよ」

 私の声にも反応していなくて、先へ行く。

 疲れてもう動けないが、愛梨を一人にするわけにはいかないので愛梨についていく。

「待てよ愛梨」

 明さんとエリちゃんも続く。

何か生臭くてその方に目を向けると、白骨化した死体があって、私は思わず悲鳴をあげそうになったがとっさに明さんが私の口元を抑えて、

「ここは騒がない方が良い」

と明さんは言う。

どうして私達がこんな目に合わなくてはいけないのと本気で思ってしまった。正直みんなに怒られるかもしれないが、観念して死んでしまいたいとも思ってしまった。

とにかく愛梨が向かう方向へと付いていく。

 私はもうどうにかなりそうだが、明さんの腕にしがみつきながら、歩く。

 そして愛梨がブルーシートに包まれた建物に入る。

 中には少し異臭がしたが誰もいなかった。そこで明さんが、

「誰もいないみたいだな。とりあえずここをわたし達の住み家にしよう」

 エリちゃんは疲れたと言った感じでその場に伏して、私はさっきの白骨化した死体がフラッシュバックして、どうして私達がこんな目にと自分を呪いそうになったが明さんが、私の気持ちを汲み取るように。

「ユウリ。辛いのはお前だけじゃない」

「ごめんなさい」

 と私は謝る。

 そうだ辛いのは私だけじゃない。みんなだって辛いんだ。

 私は寝転がり、今日の疲れを癒す。

 私達はこれからどうなるのかとすごく不安に思って放心状態の愛梨の手を握っていた。

 そんな時お腹がすいて、明さんが、カロリーメイトを差し出して、

「食え」

「ありがとう。明さんの分は?」

 私もそうだが明さんも警察署出てから何も食べていない。

「私は大丈夫」

「ダメだよ。だったら半分こしようよ」

 カロリーメイトの箱を取り出して半分明さんに差し出した。

「悪ぃ」

 と受け取ってくれて口にしてくれて少しほっとした。

 エリちゃんも板チョコを半分愛梨に差し出した。

 少しお腹が膨れて、少しだけ気分が良くなった感じだった。

 みんな辛いのは分かっている。こんな理不尽な状況にみんなもやるせない気持ちなのはわかっている。その晴らせぬ思いを放心状態に陥っている愛梨を強く抱きしめてしのいでいる。


 はっと我に返るように起きると抱きしめていた愛梨がいなかった。

 辺りは真っ暗で怖い夢でも見ているのかと思ったが、そうではなくここは明かりがない集落の小屋の中だ。

 真っ暗な部屋を手探りで愛梨を探した。

「愛梨、愛梨」

 次第に暗闇の中目が慣れてきてうっすらと見えてきて、明さんとエリちゃんが眠っていた。

 二人がいて安心するが愛梨が心配になって、

「愛梨、愛梨」

「どうした?」

 明さんが目覚める。

「愛梨がいないの」

 泣きそうな声で言うと明さんは、

「分かったから落ち着け」

 そんな時である。

「野郎」

 と男性の誰かを罵る声が聞こえて、部屋の窓から恐る恐る外を見ると、男同士がケンカをしている。いやケンカと言うより、殺しあっているように殴り合っている。

 見ているだけで私は恐怖に苛まれそうで、思わず明さんを手を握ってしまった。

 そんな私をまた怒られるんじゃないかと思ったが明さんは拒まず、

「ここはどうやら地図にない場所と言われるだけあって法の秩序もない危険な所だ」

 そんな平然としている明さんに聞いてみる。

「明さんは怖くないの?」

「怖いよ」

 と即答。

 そうだ。明さんの言う通り辛いのは私だけじゃない事を改めて知って、明さんの手を放そうとした所、明さんは私の手を握り返して、涙を流した。

 そんな明さんを見て怖くてたまらないんだと分かった。

 ケンカも強く肝が据わっているとは言え、明さんだって私と同じ人間の女の子だ。

 だから私でも分からないが、私がしっかりしなきゃと思って、外で殺し合いをしている姿をじっと見つめて、

「明さん。私は愛梨を探しに行くよ」

「わたしも行くよ」

 明さん。

「うちも行くよ」

 いつの間に起きたのかエリちゃんが言う。


 恐ろしく怖い気持ちを自分がしっかりしなきゃいけないと思って外に出る。

 明さんに言われて私達三人は手を繋いで外に出た。

 外は月明りで、かろうじて見渡せる程度だ。

 恐ろしく怖い気持ちだが、こうして手を繋いでいると少し安心する。

 さっきは私がしっかりしなきゃいけないなんて思ったが、こういう時だからこそ私達は協力し合うべきだと実感する。

 それよりも愛梨の奴どこに行ったんだ。

 愛梨は私達の大切な仲間だ。

 横浜太郎が言う『すべての存在になる』と言う事が愛梨の中で進行しているようにも感じている。それは愛梨の意識はなくなりかけている。何だろう?何度も思うが愛梨が横浜太郎の言う通りになったら愛梨が死ぬよりも恐ろしい事になると危惧するのは。

 手分けをした方が良いと私が提案したが明さんに手分けはしない方が良い。

 それは一人で真っ暗な所にいると疑心暗鬼にとらわれてしまいパニック障害に陥る事とここは法の秩序が保たれていない危険な所だからと言う理由だった。

 どうして明さんはこんな時でも冷静な判断が出来るのかは、それは多分私達が側にいるからだと言う事に気が付いた。

 人間は本当に支えあって生きている事を改めて知った。

 それに私にも心の余裕が出てきた事に気が付いた。

 それは明さんとエリちゃんとこうして手を繋いで、気配りが出来るようになったからだ。


 私達は真っ暗な中目を凝らしながら愛梨を探した。

 白骨化した死体や腐った死体なんかも目について、何度も心が折れそうになったが私にはこうしてエリちゃんと明さんがいる事をこの手で感じている。

 怖いけど私はくじけなかった。きっと二人も同じ気持ちなんだと思う。

 途方に暮れそうな時、断末魔の雄たけびと共に何か打ち破れる音がして、その方を見ると、扉が打ち破れて男性が吹っ飛んでいるのを目撃して、もしかして愛梨と思って私は気が気でなくなり、二人の手から離れてその方に走る。

「おい」

「ユウリ」

 明さんとエリちゃんがそういって私の後を追う。

 吹っ飛ばされた男を見下ろすと男は意識があり、

「化け物」

 と叫びながら去って行った。

 その化け物と発した方を見ると愛梨の後ろ姿だった。

「愛梨」

 と呼ぶと愛梨は振り返りもせず、何かに気を取られている感じだ。

 その方に目を向けると、壁に寄りかかりうなだれて意識の感じられない男の姿だった。

 よく見ると男は繁華街で襲われて愛梨が返り討ちにした三人のヘッドの通称リーゼントだった。

「おい愛梨心配したんだぞ」

 エリちゃんが愛梨を呼び掛けたところ私は『待って』と言わんばかりに手で合図をして止めた。

 愛梨は何かを感じている気がした。

 心なしか、これは愛梨にとって私が危惧している事の歯止めに繋がる何かと思ったりしてじっと見守る事にする。

 以前愛梨は言ってた。

 あんなひどい事をされた連中に情けをかける私は愛梨に言った。

『あんな連中の事なんてほおっておけばいい』

 って。その問いに対して愛梨は、

『ユウリ。人って何の為に生まれて、何の為に生きるの?』

 あの時、それでケンカになった事を思い出し、少し嫌な思い出である。

 それはさておき、愛梨は生きとし生けるものどんな生き物でも平等であってほしいと言うのが愛梨の考え方だ。

 こんな外道にまで平等に接するのは気が知れないが、私は愛梨のその思いは悪い事ではないので尊重することに私は決めたんだっけ。

 名前を思い出したが確か健司とかとか言ったっけ。

 どうしてここにいるのかは察しが付くが行き場を失い、ここに流れ込んできたのだろう。

 健司は薬物か何かで意識がなく廃人と化している感じだ。

 愛梨は手袋を取って男の手を取り、心を読んでいる感じだった。

 私達はそんな愛梨の姿を一部始終見つめ見守っていた。

 しばらくして愛梨の中で何が起きているのかは分からないが、さっきも思ったがこれは愛梨にとっていい何かだと思っている。

 そして廃人と化している健司がその顔を上げ、愛梨と何か呼応して愛梨の思いが伝わった感じだった。

 その光景を見て気が付く。愛梨の言うメモリーブラッドの秘密が一つ分かった。

 愛梨は誰にでもその手を触れれば心を読むことが出来る。それで私のメモリーブラッドは愛梨の心しか読めない。愛梨は私の血を吸った。それにあの時健司に襲われた時、健司の血を吸った。

 つまり私が言いたいのは、愛梨が血を吸った人間だけに愛梨自身の心が手を触れるだけで読み取る事が出来るのに。

 健司はもはや廃人と化して言葉を発せないが、その愛梨の思いが心に伝わった感じでその瞳から涙が頬を伝って流れ出た。

 薬物で廃人と化した健司はもはや救われることはないだろう。

 でも愛梨のその真心を読み取って、死んだような表情から、少しだけ生気が垣間見えた感じで、何か安心した気持ちになる。

 生きとし生けるものが平等と言うがすべての人間が救われないのが現実だ。

 こうして心を真っ黒にして、誰かを傷つけることしか自分の事をアピールできない悲しい人間だっている。それで永遠の闇に葬られてしまう。

 健司の過去の人生の経緯に何があったかは分からないが、きっと分かり合える人がいなかったのは分かる。もし健司の側に、分かり合える誰かが、信頼できる人が一人でもいればこのような事にはならなかったと思う。

 それで私は、そんな愛梨が、気が知れないと思ったが、何のために生きて何のために夢を追いかけたのか改めさせられる。

 今、私達は理不尽な環境に追いやられてしまったが、私には仲間がいる。

 どんな卑劣な事をされても変わらない仲間との絆と結ばれていれば何もいらないかもしれない。

 でも私達は何かをしなければ、いや何かをしたい。

 そう思った直後、愛梨は私達に振り返り、

「ユウリ、明、エリ」

 と愛梨は先ほどまで放心状態で人として、いや愛梨自身の意識がなかったが、それを取り戻していた感じだ。

 私は、明さんもエリちゃんも嬉しくてそんな愛梨の元へと行く。


 このような最悪な環境に立たされた事と、愛梨がすべてを知る存在となり、愛梨が死んでしまうよりも悲しい何かが迫っている事と色々と難しい問題に立たされているが、私達は諦めない。

 その問題に対して少しずつ協力して立ち向かおうと決心したのだった。

 不安はあるがここでしばらくは生活しようと思っている。

 本当にここは恐ろしいところだが、私には仲間がいる。

 その前向きな思いを鼓舞されるかのように、新しい朝日が昇る。

 これが生きとし生けるものの唯一の平等な事だ。

 先ほど、救われないと思っていた健司にもそれは訪れる。廃人と化して口もきけないが、もしかしたらそれは違うかもしれない。


 集落は喧嘩が絶えなく法の秩序もない危険な所だ。

 でもそんな集落でも、それを収める長はいた。

 私達は不安もあったがここで暮らすために、一度会う事にしてこうして私達四人は長のいるところに出向いた。

 集落を収める長は意外にも女性の人であり、まだ若くて二十代後半ぐらいで、すごくきりっとして整った顔をして威厳も感じられた。

「あの」

 私が言うとその威圧的な視線を向けられて、私は思わずそらしてしまった。

 同じ女性同士だから分かり合えると思った私が甘いとも思った。

 肝の据わった明さんとエリちゃんもその威厳に圧倒され、正直ビビっている様子だ。

 そこで愛梨が、

「あなたがここの長と知って来たんだけど」

 愛梨は以前の天真爛漫な愛梨が戻った感じで何気なく言う。

 愛梨は強いからそういえるのか?でもさっき私達は約束した。なるべく暴力で訴えるのではなく、出来る限り話し合いで解決させようと。まあ、ケンカの絶えないこの集落では争いは避けられないと覚悟しているのでその時は戦う。

 長は、「フッ」と笑みをこぼして、

「熱苦しいな」

 集落は湿気があって暑い。そう思っていると長は、

「そういう暑さを言っているんじゃないよ。お前たちが熱すぎて、その熱がうっとうしく思ったやつにここまで追いやられたんじゃないか?」

「はあ」

 明さんは話が見えないと言った感じで疑問の態度を示す。私も同じだ。この人は何が言いたいのか話が見えない。

「ちょっと話を端折りすぎたか。まあここに来る連中は社会に嫌気がさした奴、後、違法ドラックも目の届かないここに来てその快楽を味わって死のうとする奴。それでお前たちみたいに社会から抹殺されて行き場を失った奴。

 その他にもいるけど、お前たちのような奴は久しぶりでな」

「何が言いたいのですか?」

「お前達熱すぎるんだよ。まあ、お前たちならここでやっていけるよ」と言って「おい」と誰かを呼ぶ。

「へい」

 とやくざのような風貌の人にもう私はビビりはしなかった。そして長は、

「こいつらに生活の仕方を教えてやれよ」

「体でも売らすんですか?」

 嫌らしい顔で長に言って、すると長は、そのやくざの風貌ような男に顔面に拳を当てて、

「ちげえよ」

「殴ることないじゃないですか」

 半べそ状態のやくざのような男。

「こいつらにここでの生活が出来るように手配しろって言ったんだ」

「何でこんな小娘たちに?ここでは役に立たない女は男の性を満たすために生きていくのが決まりだと綾香さんが言ったんじゃないですか」

「誰が役に立たないと言った。もたもたしていないでさっさとしろ」

 鋭いナイフのような視線を送りやくざの男はビビる。

「分かりました」

 と言ってさっさと外に出てしまった。

 何か私もだが、明さんは不審に思い、

「どういう風の吹き回しだよ」

 明さんは綾香さんとやらに威圧的な視線を送る。

 そんな明さんに綾香さんも明さんに向けて威圧的な視線を送る。

 私には見えた。明さんと綾香さんが視線を通じ合いぶつかり合っているのを。

 以前の私だったらそんな光景を目の当たりにしただけで尻込みしていただろうが、今は私もここで色々なものを見て肝が据わって来たみたいでビビりはしなかった。

 でも止めた方が良いかもしれないが、そこまでの度量はなく私はその明さんの身を案じて側にいる事しかできなかった。

 そして綾香さんは、

「あたしの眼力を受けて、まともでいられるのは大したものだよ。それにそれはどうやら虚勢でもなさそうだしな」

 綾香は言っているが、明さんはかなり動揺していたみたいで額から汗を流している。

 この女はここの集落の長だけあって、ただものではないと私は感じた。それで私も勇気を振り絞って、

「どうして私達にそこまでしてくれるの?」

 すると綾香さんは笑い、

「見えるんだよ」

「何がですか?」

「お前達四人に何かこう熱くたぎらせる何かがな」

 突拍子もない事を言っているようだが、この人はそんなおかしな女とは思えず、今はその意味が分からないのでそれは流しておいて、

「ありがとう」

 お礼を言っておいた。


 そして私達はやくざのような風貌の男に案内され、部屋を手配された。

 それと生活の仕方を教わった。

 その生活の仕方とは、ここは法の秩序がないと私達は思っていたが、それなりに決まりはあり、みんな協力し合って生活をしているみたいだ。まあでも殺し合いなどいさかいは絶えないけど、それは私達が暮らしていたところでもあった。ここは基本、私達が暮らしているところより野蛮な所だと肝に銘じた方が良いと思っている。

 さて話を戻すけど、生活は自給自足で野菜などの農作物を営み、カエルや蛇など、時にはイノシシやシカなどを狩って食べているみたいだ。でも爬虫類はいくら狩っても大丈夫だが、イノシシやシカなど哺乳類はあまり狩りすぎると、いなくなりここの集落の食糧がなくなってしまうので、制限が決められて、言わば法律というやつだ。それを破ったものは過酷な長時間の労働の罰が強いられる。

 働けなくなったもの、役に立たないものは捨てられてしまうみたいだ。

 その他にも色々とあるが、厳しい環境に置かれて私達はとてつもなく不安に思ったがそんな中で愛梨だけが、明るくてこの生活を楽しもうと生きこんでいた事に励みとなった。

 生活をしていさかいなど争いなどあったが、私達四人は立ち向かい守り守られ生きている。

 でも中には分かり合える人もいた。

 こんな野蛮な所だからと言って、すべてが悪いわけじゃない事に気づかされる。


 そして一週間が過ぎてここの生活にも慣れて来たところ。

 山は太陽が容赦なく照り付け、私達四人は体中真っ黒だ。

 まるで私達は原始時代の生活を営んでいる感じだ。

 電気も水道もないので最初は不便と思っていたがこんな生活も悪くないと思う。

 ふと思う時があるが、聡美お姉ちゃんもお母さんもお父さんも心配して、恋しくもなったりするがみんなと助け合って生きているので寂しさはさほど感じられない。

 私は今、集落で仲の良くなった女性である明美さんに食用キノコと毒キノコの見分け方を教わって、キノコを狩り、集落に戻ったところ、何やら人だかりができている。

 また何かいさかいだろうか?気に留めても仕方がなく、私達四人が住む小屋に戻ろうとした所、人だかりから愛梨の歌声と何やらタンバリンとカスタネットの音が聞こえて来た。

 あの人だかりは愛梨が歌って、集落の人を魅了しているのだろう。

 あまり集落の人とは距離を置いて接した方が良いって言っておいたのに愛梨の奴。

 とにかく呼び止めようとして人だかりをかき分け、そこには愛梨だけではなく明さんにエリちゃんもそれぞれタンバリン、カスタネットを手に愛梨の歌声に合わせてリズムを取っていた。

 呆れて「何をやっているの?」と三人に向かって言ったが、集落の人の歓声にかき消され聞こえていない。

 だから私はちょっと強引だが、人込みをかき分け三人の所に向かい、

「ちょっとあんた達何をやっているのよ」

「おおユウリ良いところに来た」

 そこで愛梨が私の手を掴んで、

「みんな紹介します。こいつは私達のフォルトゥーナのメンバーのユウリ。これでフォルトゥーナメンバーが全員集結」

「集結じゃないよ」

 と、ここでは言えないので目で『集落の人とは距離を取ろうって約束したじゃん』と目で訴えるが、鈍感な愛梨は、

「どうしたんだよ。何怖い顔しているんだよ」

 伝わっていない。でも二人は、

「ユウリ、大丈夫だよ」

「心配性だな」

 二人には伝わっているみたいで、二人が言うなら大丈夫だと思ったが、私は何か心配で、

「でも・・・」

 するとエリちゃんが私にアコーディオンを差し出した。

「ユウリ弾いてみろよ」

 渋々だが受け取り、思えばアコーディオン何て小学校以来弾いたことがない。

 それと集落の人とはあまりかかわらない方が良いって思っていると、私達の演奏に集まった集落の人はまだかまだかと歓声をあげている。

 明さんエリちゃん愛梨が私の目を見る。

 するとなぜか胸が熱くなる感触がした。

 私の中で何かスイッチが入ったような感じがした。

 そこで愛梨が、

「行くよみんな。聞いてください私達の歌」

 ドラムだったエリちゃんがタンバリンで合図を送り、私の体が勝手に動くようにみんなの演奏と共にアコーディオンが弾けた。

 フォルトゥーナの時のそれぞれの楽器の担当は違えど、私達は一体となっている。

 社会的に抹殺され、もはやバンドの事なんて忘れかけていたし、それに練習もろくにしていないのにここまで演奏できるのは今は分からないが後で考えれば分かる気がする。

 集落の人たちは本当に幸せそうな顔をしてノリノリだ。

 歌は本当に人を幸せにするんだと改めて分かる。

 演奏が終わり、私達は集落の人と分かり合えた気がした。

 歓声はアンコールを促す。

 私達は一体となり疲れる事も知らずにありったけの演奏をした。

 そこで綾香さんに言われた事がフラッシュバックした。


『お前たちの熱が鬱陶しく思うやつにここまで追いやられたんじゃない』


 って。

 あの時は意味が分からずにいて気にはとめなかったが、今ならわかる気がする。

 でも誰なのか分からない。

 誰が私達、フォルトゥーナを鬱陶しく思ったのか?


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