7☆現実逃避
スキルチェック前に、この国の神殿の、トップが前に出て来た。
僕達を拉致した神は[アシュラリン・セイレーイ]
拉致した教会は[セイレーイ・クリストファー]と言う事が分かった!
本殿は、[ツベリアル帝国]北の大国にある。
各国に神殿、各都市に祭壇があるらしい。
《世界の秩序を保ち、恩恵を授ける神》
らしいが、秩序が保ててないから、拉致られてる訳で…
もっと、しっかりして欲しい!!
スキルは、教会の儀式で秘術を執り行う事で、[ステータスを可視化]出来る様になるらしい。
一般的に、10歳~15歳の間に受けるそうだ。
…異世界人や、異世界勇者は、一般とは違うみたいだな。
クラスの皆は『ステータス』なんて、唱えなかったのか…
ロマノフ神官長だと名乗った、痩せた大きなお爺さんの説明が、続いている。
催眠効果の高い声で、ついうつらうつら。
思考が現実逃避してしまう。
『スキルとは、神の恩恵』
『恩恵を与えられた者は、神に選ばれし者』
『それにより、スキルを持つ者は、限定される』
『王は、○○○○○~
王族は、○○○○○~
貴族は、○○○○○~
神官は、○○○○○~
騎士は、○○○○○~
………』
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
逃避に、先ほどの昼食と、日本での出来事が、頭の中でぐるぐる…。
昼食に、ギリギリで料理と呼べる物を、振る舞われた。
本当に、ギリギリで!
昼食会場は、屋外。
ガーデンパーティーじゃないよ。
あれは中庭じゃない。
城の敷地内を城門沿いに奥に進んだ、空き地。
そして、あれはパーティー・メニューじゃない。
大きいが浅く、量はさほど入らない鍋で、薄~い、薄~いスープ。
具なんて、何も見えない。
塩味も、旨味もない。
ほのかな風味がなければ、お湯だったと思うだろう。
《温かい》のだけが、良さだった。
パン1個と、ボールに入ったスープ、並んで順番に受け取った。
あれは、炊き出し。
日本で町内の災害訓練に、小学校の子供会で、参加したことがあったな。
《懐かしい!》
炊き出し班の担当になって、皆で作ったなぁ~。
具がいっぱい、旨味の濃い、豆味噌の豚汁。
《美味しかったなぁ~》
同じく、具も味もしっかりあった、炊き込みご飯のおにぎり。
《本当に、美味しかったなぁ~》
…あれは、今思うと、宮廷料理だったのかもしれない…
寂しい[炊き出し]を、地面に座るか、立ったままで、皆、思い思いに食べた。
異世界の事で、他にも知った事がある。
何と、この世界には、スプーンが存在しないのだ!!
事実、食事は3回したが、まだ一度も、スプーンは見ていない!
思考を逃避させて、現実からそらす。
それでも無理やり、引き戻される。
神官の説明が終わった。
スキルチェックが始まってしまう。
脱線した意識で、僕がぼんやりと理解したのは…
身分の高い人は、スキル持ちが、多いみたいだ。
庶民でも良いスキルがあると、騎士や、神官、貴族の養子にも、なれるチャンスがあるらしい。
スキル持ちは長身で長寿。
スキル無しは、身長も10~20センチ以上低くて、寿命も半分ちょっとしか生きられない。
スキルは、持ってる人でも1~2個。
ところが300年前の古文書で、異世界勇者が、2~5個スキルを持ってた記録が見つかったみたいだよ。
魔法、武技、体技系のスキルが多いみたいだ。
その他のスキルは、少ないらしい。
[アイテムボックス]や、[テレポート]みたいなスキルは、伝説や神話の中でしか、存在が確認されてないみたい。
各地にダンジョンがあって、極稀に、アイテム袋が出るみたい。
とても貴重な物らしい。
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
皆、スキルチェックして、一喜一憂してる。
ほとんどの人が4~5個あって、国の要人やクラスメイトが喜んでる。
たまに3個だけの人がいて、落ち込んでた。
オタ2人、小出と上妻だった。
どんまいっ!
僕なんて、パッと見は[生活魔法]1つだよ!?
スキルチェックに並ぶ列が短くなる。
現実を突き付けられる。
僕の順番が近い。
皆の反応が怖い…