30 この世界の勇者
異世界の勇者が宿にやって来た翌日。
朝食後、マイク君が男の子3人と共にやって来た。
「「おはようございます♪」」
顔合わせと移る部屋を見に来たとの事だ。
一度の引っ越しは難しいので、マイク君達の休日に少しずつ移る予定らしい。
「屋根裏部屋に20畳位の和室があるんだ。
その部屋で、どうかな?」
宿を案内しながら、話をする。
「横に従業員用の食堂スペースもあるから、日中過ごすにもいいだろうし。
お風呂やシャワーは1階で利用してもらう事になるけど」
収納タンスの布団等をみせる。
「服や日用品も用意するから、思い出の品や貴重品だけでいいと思うよ」
布団に興味津々な子供達がいるので、見本に1組ひいて見せる。
はしゃぐ子供達を見つつ、マイク君と話す。
「ロイじいに階段がキツければ、1階の僕のベッドか、地下室をリフォームするから使ってもらってもいいよ。
ロイじいの体調はどう?」
「最近は随分、体調がよさそうだよ。
僕達はこの部屋がいいな。
皆が一緒の方が、ちび達が安心するしね。
ロイじいには来た時に、本人に選んでもらった方がいいかな」
布団を片付けて、下におりる。
ついでに客室も見せて行く。
庭で訓練する冒険者達に、子供達が釘付けだ。
そう歳の変わらないルーゼン君を羨ましそうに見てる。
男の子2人、8歳のリック君と7歳のダイアン君は残る事にした。
2人にはルーゼン君のと同じ木剣をあげた。
ルーゼン君は弟分2人の存在が嬉しいらしく、はりきってザックさんに教わった事を教えている。
微笑ましい。
ヒッピもいるし、ルーゼン君もいる。
老人達や冒険者達にザックさんもいる。
夕方まで、遊んでいればいいよ。
僕は前に作った荷車をマイク君に貸した。
ついでに、直ぐ食べれるサンドイッチ弁当と水筒に入れた桃ジュースを、少し多めに10個渡す。
アダム君にクッキーを2包み渡す。
「1個は皆のお土産で、もう1個はアダム君とマイク君の分だよ。
食べながら帰るといいよ♪
アダム君にも木剣は作っておくからね。
引っ越して来たら皆と訓練するといいよ!」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「ありがとな、太郎!
荷物を整理して、夕方までに1度来るよ」
「作らなくても食べれるように、夕食も用意しておくよ。
大きな家具は僕のスキルで手伝うからね。
無理に動かさなくていいよ!」
「「じゃあ、また後で」」
暫くは、銘々にやる事をしていた。
ヒッピには1階から、子供達を見ててもらう。
僕は地下の部屋をリフォームしておく。
地下は掃除しただけで、間取りはそのままだ。
地下に降りて直ぐに広間があって、この前作った木製の折り畳み式テーブルとイスが置いてある。
両側にドアがあり、左側のドアの先が棚を置いた倉庫。
その先のドアの中がワインセラー兼酒蔵だ。
右側のドアの先を居室にリフォームする。
複数人での利用を想定して、風呂も大きめにした。
トイレと洗面所は2ヵ所づつ。
ベッドは3台。
カウンターテーブルは3人席。
普通のテーブルは2人席。
観葉植物で、鉢植えの桃の木を2ヵ所に置く。
地下だけど明るく、適温、適湿で過ごしやすい部屋をイメージした。
うん、大丈夫そう。
満足な仕上がりに笑顔で1階に戻った。
もうすぐ昼食だなぁ。
今日は、本館の食堂の方で食べよう!
[メニュー]
卵とチキンとトウモロコシのスープ
ゴボウのポタージュ
豚カツ
牛肉のステーキ
温野菜サラダ
ピクルス
人参しりしり
フルーツヨーグルト
桃ジュース
桃クッキー
卵サンド
ハム野菜サンド
メンチカツサンド
ローストビーフサンド
フルーツサンド
ヒッピが、庭で鍛練してた冒険者達に声をかけてくれた。
別館にいる人も、呼びに行ってくれた。
皆が揃ってから、リック君、ダイアン君を紹介した。
ロイじいの家の子だと話すと、皆は歓迎ムードだ。
ルーゼン君が弟分を連れて、皆の所を回ってる。
微笑ましい。
年上や女の子に囲まれてたからな~
少し年下の男の子が来て、1番喜んでいる。
皆もお兄さんぶっているルーゼン君を微笑ましく見てる。
総勢20名だ。
楽しく食べていたら、変な5人組が入って来た。
「食事をする。5人だ!」
「エールを5杯な」
「料理を!肉料理3人前に、魚料理2人前だ!
野菜は適当に出せ」
「早く、案内しろ!!」
突然の怒鳴り声に、静かになる。
「あの、宿も食堂も開業前で、まだ営業はしていません」
僕の話に5人が騒ぐ。
「ではこの者達は、何故食べているのだ!」
「無礼者め!」
「我らが勇者と知っての事かっ!?」
「この者達は、宿と食堂の関係者で、準備作業の間の食事休憩中です。
勇者も何も、初めて会いましたし…知りませんよ!?
商人ギルドに開業日や宿名も届けてないし、材料の仕入れもしてません。
お売りできる物がありませんので、お引き取り下さい」
《何だコイツら…帰れ!》
と思ったら、後ろっ飛びに出て行った。
お笑い集団か!?
ま、いいや。
帰ってくれたし。
表通り側のドアを外も内もしっかり締め切った。
外から声がするが、スルー能力を発揮して、知らん顔だ。
また、変なの来たら困るしな。
皆がこっちを見てる。
「帰ってくれたし、続きを食べよう!?」
「太郎?」
あ、ザックさんの声が怒ってる…
「さっきのは、何だろうな~」
肩を抱きしめ、逃げられなくなった。
ヒッピは…
ダメだ、口から魂が抜けかけた様な表情だ。
今のヒッピは脱け殻だ…
「話たら、案外分かってくれて、急いで帰ってくれたんじゃ…」
「そんな訳無いよな~。
勇者だぞ。勇者!
横暴で強盗みたいにタカってく奴らだぞ。
なんで後ろに飛ばされた?」
「何でかな!?」
「太郎のスキルか?」
ドスの効いた低音が耳元で囁かれた。
うぅ、ザックさんが、最近ヤバい…
観念して、僕は話す。
「多分、結界の方だと思う。
帰れって思ったら、敷地から弾き出されたんだと思うよ」
「「「………」」」
皆の無言&視線が痛い!
この世界の勇者め!?
さっきまでの楽しい雰囲気を返せ!
「この世界の勇者って!?
初めて聞いたんだけど…」
話題提供! 話題提供!
この空気を変えないとね!?
「太郎は知らないのか?」
「国や教会が後ろ楯についてる、横暴な奴らじゃ!」
「称号に【勇者】が入った者達だね。さっきのは聖女と聖騎士がいたから、セイレーイ教が後ろ楯だよ」
「教会で儀式を受けてステータスが見えるようになるでしょ!?
大抵その場で確認するから、勇者称号を持つ者は、教会に確保されやすいの!」
「教会に確保されなくても、国や貴族が動き出す…
結局何処かに属さねば、生活出来なくなるんだ」
「危険度の高い魔物や魔族は、騎士団と勇者達の合同で何とかしてる現状だから。
国も国民も、勇者達には何も言えないんだよ」
皆が知ってる事を次々と話す。
王都に居た話は、皆知らなかったから、来た所だろう…と。
だからって、あんな横暴なんて!
「宿の敷地内は結界があるし、二度と入れないだろうから、大丈夫だよ。
冒険者のお兄さん達が、一番外に行くから、気をつけてね!」
冒険者のおっちゃんやお兄ちゃん達の方を見る。
「分かってるって♪」
「心配してくれるのか!?
太郎は良い子だな~」
「大丈夫だよ。
あんなの相手にしないしな!」
「太郎こそ、気をつけろよ!?」
頭を[良い子][良い子]と撫で撫でされた。
大人の男性に認めて貰えた様で、嬉しくてくすぐったい気持ち。
「うん、宿から出ないし。
出る時はザックさんや皆に着いてってもらうね!」
「ああ、任せろ!」
ザックさんの声がいつもと同じだ。
もう、怒ってないや。
「表通りのドアは開業まで開けないよ。
裏通りのドアで出入りすればいいから!」
天気が良かったから、久しぶりに開けたのもいけなかったな。
日中も、用心しなくちゃ。
それから気分を変えて、皆で楽しく食事した。
午後からは皆の服や日用品を作ったり、ロイじい達の分も夕食を作ったりして過ごした。
読んで下さり、ありがとうございます♪
感想や評価やブクマをいつもありがとうございます。
月光町から読みに来て下さった方が多いみたいで、嬉しいです。
なろうは[三河みかん]
月光は[蜜柑薫子]で書いてます。
月光町の作品も、同じ異世界を書いてます。
単品でも楽しめるのですが、別の国、別種族の視点で書いてるので、世界観がより分かると思います♪




