26 歓迎会
ザックさんとカイルさんが帰って来た!
「ザックさん!カイルさん!お帰りなさい~」
別館に向かって来る集団の中に、2人を見つける。
待ちかねていた僕は、思わず2人に抱きついた。
「知り合いとその知り合いで、信頼出来る人だけ声をかけて来たよ」
「顔見知りでも信用出来ない奴は、連れて来なかったぞ。ここにいる奴は大丈夫だ」
2人が抱きしめ返してくれたり、頭を撫でてくれた。
嬉しかったけど我にかえると、ちょっと照れくさい。
カイルさんもザックさんも、信用出来る人を厳選して来てくれたようだ。
抱きついて、撫でられながら話を聞いた。
「2人共ありがとう。食事もお風呂も準備したんだけど、順番どうしようか?」
僕の質問に、別の方から声がする。
2人から体を離して、声の方を向く。
「君がザックさんの知り合いで、今回声をかけてくれた子か?
薬や食べ物をありがとう。
おかげで、体調が随分良い。
まず話をしたいから、食事ではどうだろう?」
話しかけて来たおじさんはアレクセイ・リスランさん。
42歳で、子供の頃ザックさんに剣を習って冒険者になったそうだ。
「アレクと呼んでくれ」
僕も名乗って挨拶した。
「豊田太郎です。太郎と呼んで下さい、アレクさん!」
アレクさんの手もザックさんの手みたいに、剣だこがあるゴツゴツした手だけど、暖かかった。
皆、食堂中央の料理に目が釘付けだし、まず食べよう!
最初は無言で皆食べていたが、徐々に会話が始まる。
まずは自己紹介からだ。
スラムから来たのは全員で15人。
アレクセイさんと同じパーティーの、ブレイブ・カーターさん。
38歳で、2人共Cランクだ。
「失った右腕や、顔の傷が治ったよ。
本当にありがとう!」
ブレイブさんから感謝された。
ヒッピが口をぽかんと開けて、僕とブレイブさんを交互に見る。
…そっとしておこう。
カーク・ダミタスさんとデック・ダミタスさんは、双子の兄弟で19歳。
Dランクになったばかりで、最初の以来で失敗。カークさんが背中に大ケガをしたけど、治った。
「ありがとう!君のおかげだよ」
手を握って、ぶんぶん振りながら感謝された。
エリック・スルデン。
フェルナンド・ネフィー。
ジェラルド・ドミンコ。
3人は同じ村出身の16歳、Eランク冒険者だ。
エリックは左肩のケガで、肩や手の動きが悪かったと言うが、すっかり良いらしい。
「凄い薬をありがとう!
これでまた、冒険者に戻れるよ」
「ありがとう!おかげでまた走れる!本当にありがとう!」
フェルナンドも右ふくらはぎをケガして、走れなくなっていた。
ジェラルドはケガして無かったけど、凄く感謝してくれた。
「皆を治してくれて、ありがとう!」
3人から代わる代わる手を握られながら、お礼を言われた。
セーラ・ロレッタと、ルーゼン・ロレッタは、12歳の女の子と10歳の男の子の、2人姉弟だ。
冒険者の両親を亡くして住む場所を失い、東スラムにいたそうだ。
2人共ケガや病気はなく、近所の住民と一緒に居たとは言え、姉弟だけで不安を抱えていた。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「温ったかい料理もお腹いっぱいも久しぶり。
美味しかった~♪ ありがとう!」
可愛い笑顔満開でお礼を言われた。
アマリナ・マーガレットとダイアナ・マーガレットは11歳の孫娘と58歳の祖母だ。
行商で息子夫婦を亡くして、お金が無くなり孫とスラムに来たらしい。
2人共ケガや病気はなかったが、先が見えない状況だった。
マリアナとセーラは友人みたいだ。
女の子2人は肩より上で髪を切り、少年風にしてた。
安全の為らしい…。
11歳と12歳に手を出したら日本ならアウトだろう…。
2人共、身長は130センチ位で、日本人より小柄なんだ。
何せ成人女性でも庶民は160センチもないんだから。
15歳→成人20歳
13歳→18歳
10歳→16歳位に手を出す感覚なんだろうか!?
どっちにしろアウトだ!
周りの人達に守られてて良かったよ。
「ありがとね。本当ありがとう!」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
《子供達を守らなければ!》と、僕は思った。
モリス・デッカン。
ヨハンナ・デッカン。
夫婦の2人。
62歳の夫モリスは病弱で働けない。
56歳のヨハンナは食堂で働いていたが、酔っぱらい客のケンカに巻き込まれてケガ。仕事も失ったらしい。
マリナ・リリックは54歳。
病弱なおばあさんで、夫が亡くなりお金が無くなったようだ。
ヨゼフ・モノファム、59歳。
歳の割には元気なおじいさんだが、店を騙し盗られ、お金が無くなったそうだ。
老人達は長年東地区に住み、友人みたいだ。
「助かったよ。ありがとな~」
「ありがとう!」
「本当にありがとう!」
繰り返し、皆に言われた。
食べながら、ロイじい達や、カイルさん達にも話した事を、僕から話す。
勇者召喚に巻き込まれて来た異世界人である事。
生活魔法しか使えなく、戦えない事。
国の保護は一時的で、自立しなくてはならない事。
宿と食堂は準備中で、まだ暫く営業出来ない事。
カイルさんに町で助けてもらって、皆さんの話を聞いた事。
ロイじいの話しをしたら、老人達が騒ぎだした。
友人らしい。
ロイじい達もここに住む話しをしたら、収集がつかなくなってきたよ…
皆もいろいろ語り出してきた。
緊張した表情が、解れてきた。
食べて、話して、時間が過ぎた頃を見計らい、風呂や部屋の説明の為、皆で2階に上がろうと声をかけた。
外壁の戸締まりはしてあるけど、本館の裏出入口や横出入口、別館の食堂も開けっ放しだから、ザックさんとヒッピが1階に残ってくれる。
念のため2階に上がる前、皆に1本づつポーションを飲んでもらった。
ザックさんとヒッピ以外の皆で、2階に上がる。
移動しながら、別館の外トイレや外階段を説明する。
全員が聞きながら一度に見えないから、代表に前方で見てもらう。
お風呂やトイレ、洗面所、布団、ロッカーや靴箱の鍵とか、説明していった。
後ろの方で見えない人は、後で説明してもらおう。
皆、ろくに荷物も無かったから、普段着、下着、石鹸、タオル、歯ブラシ等を人数分、2階に出しておく。
少ししか貴重品はなく、靴箱に鍵もあるし、皆一緒で問題ないらしいので、ロッカー大1~3を使用。
鍵3つは、大人が代表して管理してくれるそうだ。
靴箱の鍵は子供達にも無くさないように言って、1人に1つ渡しておく。
布団は説明しながら、皆で並べた。
お盆、お正月、氏神様のお祭り、大じいちゃんの法事…
親戚が集まった時みたいで懐かしい。
おばあさんと子供だけど女性もいるから、パーティションを出しておく。
着替え等で人目が気になる時に使って欲しい。
話し合いで男の子が一番小さいので、おじいさん達と最初に入る。
その後は女の子達がおばあさん達と。
最後に、冒険者の男性達が入る事になった。
2階にも、飲み物やお菓子、パンや果物、特製保存食を置いておく。
ポーションと丸薬も、用意した。
お腹がすいたり、具合が悪くなったら、遠慮せずに利用して欲しいと話した。
大きめの時計を、室内の洗面所の壁にくっ付けた。
これで、時間がわかるな!
朝食は8時。
時計の見方も説明しておく。
最後に僕が出たら内側から、閂を締めてくれるように頼んだ。
ヒッピやザックさんと食堂を片付ける。
片付けると言っても収納に入れるだけで綺麗になるし、テーブルや床も生活魔法であっという間にピカピカだ。
それから1階で、お風呂に入った。
2メートル×1.5メートルの浴槽は、異世界人サイズに大きくなっている。
僕達みたいな小柄な3人なら十分一緒に入れるんだ。
2メートル有れば3人横並びになれるし、1.5メートル有れば足も伸ばして入れるし。
ザックさんは兵舎で風呂に入った事があるけど、ヒッピは体を拭いたり、夏に水浴びする位だった。
シャンプーやトリートメントどころか、石鹸にも困惑してたんだ。
今だに頭を洗うのは苦手だから、手伝ってる。
ついでにザックさんもだ。
背中は皆で洗いっこしてる。
ザックさんやヒッピとの親睦が深まってると思うんだ。
洗いっこしてるけど、僕が2人を洗って、ヒッピやザックさんが交互に頭と背中を洗ってくれる。
僕の洗いが多いからと、体を拭いたり、頭を乾かすのを2人が手伝ってくれる。
子供に戻ったみたいで、照れくさいけど、2人の思いがありがたいから、お願いしてある。
心がほんわかするなぁ~
明日の夕方には、クラスの皆も来るだろう…。
賑やかになった宿を見て、皆びっくりするだろうな♪
わくわくしながら眠りについた。




