2☆しょっぱい召喚
兵の宿舎のような所は、第5騎士団・見習い騎士用の宿舎だった。
一部の騎士や文官達は、そのまま残っているようだ。
見習いなのか?
別の部隊なのか?
装備の違う兵もいる様だが、よく分からない。
廊下や、窓から見た敷地には、様々な衣装や装備の者が大勢いた。
上妻洋平
小出圭介
この2人が同室になった。
クラスでも話しやすい2人で、ホッとした。
上妻は明るいオープンなオタクだ。
頭も良い。
成績が良いだけじゃなくて、周りをよく見て的確な状況判断をしたり、適切な行動が取れるタイプ。
コミュニケーション能力も高いから、羨ましい。
でも、アニメやゲームに、はまってる。
小出は隠しきれてない隠れオタク…。
僕や上妻と話してるあたり、バレバレである。
僕は、気配り出来るからね!
小出と話す時は、小声にしたり、こっそり話してる。
マンガがメインだが、ラノベ、アニメ、ゲームと、幅広く対応してる。
彼が、どうやって時間を捻出してるか、僕には謎だ。
あれで、成績維持してるらしいし。
僕は、マンガとラノベをメインに、アニメもたしなむ。
1年生の時に、好きなラノベが一緒で話が弾んで、それから2人とは、よく話す。
思う事は色々あるが…
《なんか、しょっぱい勇者召喚だな》
これに尽きる!
[城の個室]に
[メイド付き]とかじゃなくて、
泊まるの
[兵舎みたいな所の大部屋]
だしなぁ…。
勇者歓迎の豪華な食事会なんてなかった。
部屋に入っても落ち着かない。
銘々に、部屋の中を探索…
直ぐに終わった。
ベッドが4台。
幅2メートル×長さ3メートルの巨人用。
《確かに、異世界人は大きかったな!》
壁側に洗面所、奥が小部屋になっててトイレらしき様子。
ドアの正面が窓で、窓際に小テーブルが1台、椅子が1台。
小テーブルの上には、木のカップ4個と水差し。
かごの中に黒いパン数個、干し肉、柑橘類の果物、オレンジみたいなのが2個入っていた。
果物用なのか、パン用なのか、小さな切れ味の悪そうなナイフが1本。
《武器には、ならなさそう…》
本物の武器を持つ者を相手に、何の役にも立たなさそうだ。
ドアの隙間から廊下の様子を確認したり、窓から外の様子を見ていたが…
廊下には、クラスメイトが出てて、騎士や文官や侍女達と会話もしてた。
《出て直ぐ攻撃される事はなさそうだ》
上妻が干し肉をかじりながら、話し出す。
「やっぱ、異世界召喚、転移だな。
何か食べながら、情報整理しようぜ!
何もしなと落ち着かないしな。
明日からの対策も、考えよう」
「王女様の言葉は丁寧だったけど、一方的だったね…」
僕も、思い出しながら話す。
悪いバージョンの異世界召喚なのかな!?
だったら用心しないと、危ないのかも。
パンをちぎって口にいれ、顔をしかめながら、小出も喋る。
「固ったいな、これ。
異世界召喚も色んなバージョンあったしな。
チート無双は憧れるけど、俺ら神様経由してないじゃん。
チートなしは厳しいな…
あるかな、チート?」
「こういう時、自分の能力が見えないかな!?
『オープン』とか、
『ステータス』とかで、
確認ができるんじゃ…」
上妻が言ってる途中で、横にいた小出がやってみたようだ。
「うわっ、出た!!」
「『ステータス』で、正解だな~」
上妻も試してる。
僕も『ステータス』って、小声で唱える。
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
【ステータス】
名前・豊田 太郎
レベル・level 1
称号・異世界人
スキル・生活魔法
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
《チートじゃないや…》
ショボ過ぎるステータスに、ガクッとした。
上妻や小出のを、覗きみる。
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
【ステータス】
名前・上妻洋平
レベル・level 1
称号・異世界勇者
スキル・火魔法
槍術
身体強化
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
【ステータス】
名前・小出圭介
レベル・level 1
称号・異世界勇者
スキル・土魔法
盾術
身体強化
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
あ、あれ!?
僕のだけショボい…
勇者の称号も、ないや…
上妻と小出が盛り上がってる中で、僕は青ざめていく。
落ち着いてきた2人が、僕のステータスを見て、驚いている。
「なんだ、そのステータスは…」
「まぁ、どうしようもないな…。
生活魔法だけじゃ、戦いようがないしな…」
微妙な雰囲気が漂う。
沈黙の後、
「明日は、説明って言ってたが…
今日同様の一方的な説明で押しきって、ステータスの確認というか、把握。
そのまま、なし崩し的に強制訓練とかじゃないかな」
と上妻が話す。
「今日の一方的な対応や、躊躇なく攻撃態勢の事を考えると、太郎、お前やべぇよ」
「無能呼ばわりからの、処刑とかか!?」
「え、いくらなんでも…」
と僕が言うと。
「ラノベで、奴隷勇者とか。
いきなり処分とかのストーリー、お前もオタなら読んでるよな。
日本じゃないんだ。
甘い考えは捨てて、用心しろよ!?」
「…脱出もありだぞ。」
ボソって、小出が恐い事言う。
「で、でもさ、僕のスキルって生・活・魔・法だけだよ。
これで、2人は脱出出来ると思う?」
「「……」」