17☆LOVE!太郎
主人公以外の視点。
緋→手島 視点です。
異世界7日目
その日も、朝食を食べる太郎に、視線が集中していた。
そう言う自分(多良田緋)も、その1人。
もぎゅもぎゅと、サラダを食べながら、目尻を下げ笑みを浮かべる太郎。
頬張るしぐさは愛らしく、かつ上品だ。
何ともいえず、可愛い!
日本では、教師、いとこ、クラスの女子…何時もつきまとわれて居たが、最近は距離を保てている。
不幸中の幸いだな。
お陰で、じっくり太郎を愛でる事が出来た。
ただ残念な事に、それが自分だけでは無いのだが…
可愛いな~&見納めか…の複雑な視線の男子達。
…ライバルだ。
だが、あいつらも太郎を助けようとしてる。
太郎の役に立つなら、仕方ない…
余り、邪険には出来ない。
もう一方は、相変わらず敵視するかの鋭い視線、女子達だ。
同郷、女性、そんな事でも情けはかけられないな…あれらは、確実に、排除すべき敵だ!
何故、あんなに可愛い人に、あの様な敵意に満ちた視線を向ける事が出来るのだろうか!
同じ人間とは思えない。
クラスでも大柄な、バスケ部の鈴木や、バレー部の高木&谷口…
食堂で、太郎の近くにいる邪魔な奴等。
最初の頃、奴等の近くで、怯える太郎をよく見た。
俺の側に居ればいいのに、と思った。
最近は、気丈に振る舞う姿を見る。
食堂の出入りには怯えるが、皆と食べる時は《気にしないよう》に《微笑み》を浮かべる。
健気だな~
オレンジ入りサラダが気に入ったみたいで、時々、名残惜しげに空いた皿をみてる。
今もだ。
小出が、
「サラダにフルーツ、苦手だわ。フルーツは、そのまま食いたい!」
と、太郎の皿と交換してた。
太郎の瞳が輝く!
小出に『Nice!fight~』と心の中で声援を送った。
《いい~!今の表情、めちゃくちゃ可愛い!!》
好物、さりげに渡すだけでもいいのか…
心のメモ帳に、【重要】と表記する。
プレゼントが余り有効じゃない事は、成田や手島の行動で、実証されている。
スキンシップも駄目だ!
顔をしかめてた。
あいつらの二の舞にだけは、成りたくない!
上妻と小出、参考に成るのはあいつらだな。
あいつらは、太郎とよく喋ってた。
太郎の愛くるしい姿も、よく引き出していた。
あいつらのfine playには、何度も声援を送った。
今朝、少し早いが部屋を出て食堂に向かうと、食堂が見える廊下の角に、太郎が見えた。
角から見えた、傾く顔とうなじ、何とも愛くるしいな!
この幸運に感謝をしていたら、太郎が手招きした。
ふらふらと近寄る。
クラスで話かけようとすると、怯えられて近寄れなかったが…
…嬉しいな!
城との交渉などで同席したり、話す機会が増えたからか…
近寄ると、太郎がモジモジしながら、背中に隠し持つ物を差し出した。
何だ!この可愛い仕草は!?
照れながら
《御守りを、作ったんだ。
肌身離さず身に付けておいて欲しいんだけど…》
と、差し出した。
一も二も無く、首に下げた。
無論、決して離さないと誓おう!
恥ずかしそうに、更に可愛い事を言う
《御守りの中に、薬と手紙が入ってるから…。
ケガしないように気をつけてね。
…でも、万が一の時は手紙を読んで、薬を使って!》
ラ、ラブレターかっ!?
くっ、時間差か!
直ぐ読んじゃ駄目なのか!?
あ、恥ずかしいのか!?
考えてたら、無言になってしまった。
声をかけるタイミングをみてた様だ…
更に、顔を真っ赤にして、上目遣いに、モジモジしてる。
な、何だ!?
可愛いのが、
もっと可愛くなって。
何処まで可愛くなるんだ!?
《…これ、下着なんだけど。
町で買ったんだ。
良かったら、毎日、何時も着てくれないかな…》
って、下着の畳んだ山を差し出した。
国からの配給に下着は無く、ずっと不便だった。
助かるし、気が利くな~
先日、町に出た時
《俺の為に探して買って来てくれたのか!》
よ、嫁か!?
来るのか!?
来る気になってくれたのか!
この2日、部屋で準備すると言って、俺に御守りを手作りしてたし!
「た、大切にする。
…身に付け、…離さない。
ありがとう」
片言の単語になってしまった。
何とか、言いたい事と、礼は言えた。
他の男子に見られぬよう、直ぐにトイレで着替えた。
太郎からの愛情を感じた!
強くなろう!
ケガ1つしないように!
訓練、頑張ろう!!
実戦は、安全第一だな。
《命、大事に!》
こんなに心配してくれる可愛い人を、悲しませたくない!
《俺の命、俺1人のものじゃない!》
《俺の命、太郎と俺の2人のものだ!!》
少ない、貴重なお金を、使わせてしまったな…。
…給料もらったら、太郎に渡そう。
…嫁に渡すんだ、問題ない。
俺が、健気な太郎を支えよう!
太郎と、太郎の生活と安全を支えるのが、《異世界勇者》で《夫》たる俺の使命、なんだろうな…
この世界で、自分が果たす使命を、理解した。
…明後日が最初の休みだったな。
明日の訓練終わったら、即行だ。
太郎が待ってる!
上妻や小出に話して…
城側と交渉して…
馬車と操縦者を手配だ!
給料も確保だ!
休み明けの訓練後に、乗馬と馬車操縦の追加訓練もだ!!
太郎と俺の為に!
出来る事はやらないと!!
◇◆◆◆◆◆◆◆◆◇
太郎が、初めて町に行った日。
夕方の訓練が終わった時に、ちゃんと太郎が帰って来ててホッとした。
あいつ、可愛いからな、拐われそうだ。
うん、誰も見てなければ、確実に拐うな!
「ただいま~♪ 訓練、お疲れ様!」
笑顔で、俺を出迎えてくれた。
出来た嫁だ!
可愛いなぁ~、ちくしょう!?
小突き回して、身体、撫で回してぇ!
あぁ~、めっちゃ可愛い!
太郎に突進しそうになり…
頭、ぐりぐり撫でるに止めた。
度々、上妻と小出が、俺に
《止めろ、手島!太郎が嫌がる!!》
とか、言ってくる。
そんな事ないとは思うが…
万が一って事もある。
あいつに嫌がられたら、死ぬより、辛いし…。
夕食を食べる時、女子の視線のせいか、顔が強張っていたが、今日は随分、穏やかな微笑みを浮かべてる。
上妻が、《女子の視線を太郎から遮る》為にだと、鈴木や高木、谷口達に声をかけ、バスケ部やバレー部の奴等で肉壁作りやがった。
いそいそと協力してやがったな…あいつらめ!
あんな女ども、俺が話つけてやっても良かったんだがな!?
まぁ、太郎に笑顔が戻って良かったんだが…
俺が関わって無いのが悔しい…
素直に、上妻の手腕は認めたくない!
《くそっ!!》
夕食後、太郎の後について、部屋へ向かう。
歩く度に、尻が誘うように揺れる。
めちゃくちゃ、柔らかいのに、弾力もあるんだよな~
触り心地を思い出し、触りたくなる。
何とか、理性総動員で、両手を止めた。
やっと部屋の前に着くと、振り向いて
《準備があるから、入るの少し、待って!》
って、少し赤い顔しながら、もじもじ身体揺らして、俺の方を見上げて可愛く言ってきた。
初めて恋人を招き入れるような…初々しさ!
おぉ、何でも聞いちゃる!
何でも言えよっ!?
あ、横から緋が返事を先にしやがったー!
《くそっ!!》
俺と太郎の会話に口出すなよ?
少ししたら、
「どうぞ」
って、可愛くドアが開いた。
可愛いぃな~
全部、可愛い!
部屋の奥、太郎のベッドに座る。
《ここで、太郎が眠るのか~》
ベッドから、フルーティーで甘い香りがした。
太郎から、よく漂う香りだ。
太郎の香り…
あいつ、匂いまで、可愛く誘ってるよなっ!?
俺が太郎の香りを、胸いっぱいに吸い込んでいたら、周りの奴らが目に入る。
無理に太郎のベッドに上がり込み、鼻をヒクヒクする下品な奴等め…
似た事を考えてる奴等が多すぎる!
太郎は、俺のだかんなっ!?
俺の嫁が穢れる!!
後日、太郎が宿に移り住む日の朝。
朝早くから、待ち伏せしてまで。
《太郎手作りの御守り》
《俺の為に太郎が買った下着》
《俺への手紙。多分、ラブレターで間違いない!》
《俺を心配して用意した薬》
愛情のこもった品々を、もじもじしながらプレゼントされた。
顔を赤くしながら、肌身離さず、毎日、身に付けてくれって言われたんだ。
《俺、愛されてる!!》
間違いない!
相思相愛を確信した。
休みは、必ず会いに行くぞ♪
給料貰ったら、俺も太郎に何かやろう…、あいつ、何、喜ぶんだろ…
考えとこう…
そのまま、給料渡してもいいし。
寧ろ、嫁になら渡すべきだな♪
あんなに心配されたんだ、無理な戦闘なんて絶対しない!
安全マージン取って、リスクは取らない!
太郎が俺のものの様に、俺も太郎のものだからな!!
《命、大事だ!》




