表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/32

12☆ヒッピとザックさん

皆と朝食を食べる。


皆が訓練してるからかなぁ?

明らかに、食事が改善してきてるよ!


《よしよし!!》


笑顔で食べる。


美味しい物を食べる時、自然に顔が綻ぶ♪




昨日、宰相の後ろでメモをしていた、下っぱ文官が現れた。


フィリップ・ロイラーだと名乗りながら、

「気軽に、ヒッピと呼んでね!」

と、笑顔で元気に挨拶された。


うん、感じがいいね!



ヒッピは170センチ位で細身。

僕より5センチ位背が高く、体重は…まぁ、軽そうだ。

この国で僕より背が低い人、まだ見たこと無いんだけどさ…


茶髪にソバカス、親しみやすい笑顔。

歳が近そうだと思って聞いたら

「15歳、文官になったばかりなんだ。あ、でも12歳から見習い文官で、ずっと働いてたから、仕事は3年目だよ。任せてね!」

って、応えてくれた。


昨日の今日で手配済みとは、なかなか手際がいいねっ!?


今日はギルドでの手続きや、物件に案内してくれるらしい。



男子達が心配してくれるが、兵も1名つき、護衛と馬車の操縦者を兼ねるとの事だ。


宰相から

《上妻や小出にも、最初の1カ月は訓練に、毎日参加して欲しい》

との話を言付かる。


その間は文官と兵の2名が僕につく。

僕にもこの国の事や、一般常識の教育をしてくれる。

無論2人には、訓練に参加する他の勇者と同じ賃金を出すし、その後の待遇に変わりないとの事だった。


護衛の兵は、裏の広場に馬車を用意していて、すでに待機してるらしい。


心配した男子達が、食事が済んだ順番に、ぞろぞろ見に行った。


僕も、朝食を済ませてから、後に続いた。



馬車は簡素な荷馬車だった。

ずっと徒歩だったし、長時間歩かないでいいなら、これで充分だ。


兵はザック・モーガンさん。

《ザックと呼んでくれ》と言われたが、明らかに年長者で、感じの良さそうな人である。

呼び捨てはハードルが高かったから《ザックさん》で、落ち着いた。


ザックさんは175センチ位。

細身だがよく働く人特有の、しなやかな筋肉質。

兵って言ってたけど、騎士とは別らしい。


警察官と、自衛官みたいな感じなのかな?


赤色の短髪。

清潔感があり、穏やかで、誠実そうな顔をした、一緒にいて落ち着く感じの、おじさんだ。


思えば、この国で出会った人達は、やたら大きくて、偉そうにしてて、キラキラかムキムキの人達ばかりだった。


4日目にして、ようやく普通の、しかも誠実そうな人達に出会えた!


僕は男子達を説得した。


この人達なら、大丈夫だと思うから。


これでも、人を見る目はあるよっ!


夕方には帰ってきて、夕食の時に報告するのを約束して、皆をなんとか訓練に送った。



ヒッピが、今日の予定を話す。


まずは、商業ギルドに手続きにいく。

ギルドで、国への手続きも全部出来るらしい。


手続きが済んだら、鍵を受け取り物件へ。


物件に向かう途中で昼食や買い物をしながら、王都を簡単に案内してくれるって。


楽しみだな~



荷馬車は揺れるけど、耕運機での畑作業で慣れてるから、揺れは平気だ!!

敷地内なら、僕でも手伝いできるんだ。

父ちゃんは忙しいし、じいちゃんは腰が痛くなるからね。


馬車の操縦席と荷台には、遮るものが何もない。ヒッピやザックさんと話しやすいし、風がそよそよと気持ちいい。


馬車は、ゆっくり自転車に乗ってる時くらいのスピードだ。

道は石畳だし、街の中は人も多いから、飛ばせられない。

のんびり行こう。


ヒッピがいろいろ教えてくれる。

「王都は、中心部に王城があって、その周りが上街。

貴族の屋敷。

王族や貴族向けの超高級店。

王の親衛隊や、王族や王城警護の近衛隊の建物や訓練所。

大商人の館とかがあるんだ」


「今から渡るのが、堀川だよ。

ぐるりと一周、王都内にあるよ。

橋の両側に警備兵と護衛騎士がいて、両側でステータス・チェックしてるんだよ。

庶民は上街からの許可書がないと、まず入れないよ。

でも今は、宰相さまが発行してくれた書類があるから、大丈夫!


ここからが、下町だね。

庶民向けの店や、宿、家があるんだ」


僕達も順番に橋の両側で、ステータス・チェックを受ける。

2人は、胸元のピンズ(?)も提示してる。

職業毎に紋章のデザインが違い、ステータスと一致してるか、確認されるらしい。

書類も、ヒッピが提示してる。

橋の門も、王都の門も、夜には締めてしまう。

朝晩、最初と最後の鐘が合図だ。



「今、南に向かってるよ。

門は東・西・南・北、四方にあるんだ。

内門、外門があるから、全部で8ヵ所だね。


内門は橋って読んで区別してるよ。


北門は普段閉じてて、あまり使ってないかな。


外の南門が大門って言って、一番出入りが多いよ。


大門から南橋にかけてが、大通り!


ギルドや、高級宿、大商会の店、一般向けでも高級品を扱う店が多い、賑やかな所だね。


北は工業エリア、職人の工房や個人店が多いね。


東西は、普通の家や宿、市場、個人店が多いよ」


「あ、あれが商業ギルド。

麦穂と金貨がマークだよ。


斜め向かいの、ドラゴンに剣が、冒険者ギルド。


王冠と剣=騎士団、王冠の入った盾=近衛と親衛隊の印だよ」


騎士団は、王や王家、国の剣として戦うから。

近衛と親衛隊は、王や王家を守るから、盾のデザインなんだって。

金の王冠が、王を守る親衛隊。

銀の王冠が、王家(王族)や王宮(プライベート空間)、王城(社交、公務で使用)を守ってる、近衛騎士団。



馬の世話があり、ザックさんは馬車に残る。

僕はヒッピに続いてギルドに入った。




◇◆◆◆◆◆◆◆◇




ギルドでは個室に案内された。

ここで説明されて、手続きをする。


事前に話が通っており、スムーズだ。


まずは商業ギルドの説明、ギルドの費用、国の税金について、規模や種類によって異なる為、詳しく教えて貰った。



商業ギルドは、商売に関わる全てを仕切ってる組織だ。

庶民の小遣い稼ぎの1日露店から、外国と商売する大商会まで、対象は広い。

商業用地や店舗の売買、貸出をしてて、不動産屋の一面もある。


税金を代理回収して納めたり、手続きを代行したり、市役所や勤務会社の様な一面も。



ギルド登録料について。これは登録種類によって異なり、僕のは高い方だった。

登録料は、

【1日露店=小銀貨1枚】

【1月露店=銀貨5枚】

【1年露店=銀貨35枚】

【国内行商=金貨1枚】

【国外行商=金貨10枚】

【国内店舗=金貨10枚】

【国内国外店舗=金貨50枚】

まで細かくある。


フリーマーケットの1日1000円の出店料~国際企業の出資金5000万円まで、って感じかな!?


年会費は1日露店と1月露店以外は、毎年登録料の1/10を払う。


税金は1日露店以外は、登録料の1/2を払う。


短い期間で登録しても、何回も再登録して期間が長くなれば、追加費用が発生する。


売買による名義変更は、新規扱い。既に加入している人が購入した時は、一律手数料。

権利の相続・贈与は、一律手数料。

それぞれ1/20が手数料となる。



人頭税は、居住地によって変わる。


王都(下町)=金貨2枚

※ 上街は、城が管理。

下級貴族だと、なかなか許可されない。費用は、個別審議。


各領都=金貨1枚

門があって、安全な場所は高い。


街~町=銀貨数十枚。門のあるなし、門の耐久性で変わる。


村=銀貨10枚。柵がある程度だから、安い。



200万円~10万円か…。凄い差だなぁ…。

日本でも、住む場所によって住民税は変わるけど、ここまでは…。

露骨に違うのは、命の安全に直結してるから…、なんだろうな。




登録や税金の手続きが済んだ。


分かりやすく説明してくれたけど、難しい話に頭が疲れた。


宿の名前や営業開始日を決めたら、また連絡に来る必要がある。



来年からは商業ギルドに来て、自分で手続きするのか…。


来年も、この国にいるのかなぁ…




宿の購入手続きに移る。


僕の希望と国の予算が、一致するのは1件のみ。


下町の郊外で北東側。


敷地も広く、馬車を数台停めれて、さらに旋回も行える。

少し荒れているが、小さな畑もある。


裏庭に井戸、20頭は入る馬小屋。


宿は木造3階建てに、屋根裏がある。

1階が食堂で数十人が1度に入れる。

2階3階が客室。食堂と同規模が泊まれる。

屋根裏は従業員の部屋に丁度良いらしい。


聞けば聞く程、希望通りだった。



ヒッピが《良いのか》と、小声で何度か聞いてきた。


中古とは言え、なかなかの物件に聞こえる。


もう僕は、自分が素敵な宿のオーナーになって…の、想像でいっぱいだった。


ヒッピの小声は、僕の頭を素通りしていった。


ギルド加入の流れに乗って、サクサクと購入書類も記入した。


そして手続きは、無事に終了したのだ!


鍵をギルド職員から受け取り、足取り軽く退室する。


場所がよく分からないから、地図はヒッピに渡した。


何だか、そわそわ落ち着かないヒッピと、馬車に戻る。


何だろう!?


そう思いつつも、僕は浮かれていた。


ヒッピの様子に一瞬、違和感が生じるも、すぐに消え失せた。




ザックさんと合流する。

馬車をギルドに預けたまま、3人で少し歩く。


この辺りは飲食店が多く、近くの広場には露店があるらしい。


でも僕はお金を持ってない。


ヒッピが経費として食事代を預かってるが、額は少ないらしい。



お店に入ると1人分位の予算。

1人で行けと言う…


僕はその予算を使って、3人で露店で食べるのを提案した。


ヒッピやザックさんとなら、一緒の方が楽しいだろう♪


スパイスの風味や、濃いめの味付けが美味しかった。




2人とも毎日3回、食べてる訳では無いみたいだ。

庶民は1日1~2食だと、ヒッピが話す。


日本でも、昔はそうだったらしいな。

大じいちゃんも、そんなこと言ってたし。


2人が痩せてる理由がわかった。



騎士は高給取りだが、兵の給料は安く、装備品の支給が最低限で、自前がかなりらしい。

…ザックさんがボヤいてた。


ザックさんは49歳。

子供はいないらしい。

姉さん女房で10歳年上の奥さんが、去年亡くなったらしい。

【剣術】スキル持ちで、警備兵にはなれたが、身長は175センチ。

庶民としては背の高い方だけど、スキル持ちとしては小柄だ。


大柄な人が多い騎士や兵の集団の中、大変だったんだろうな…


60~70歳位が寿命な庶民。体が動かなくなって来たら、退職を考えるらしい。

《もうすぐだ》と笑って話す姿が切ない。


親しみを感じてた人と、親しくなれたのは良かったが…、しんみりしてしまう。

何て言っていいのか困って、無言になる。


《ザックさんに、桃食べて長生きしてもらおう》と思った。



ヒッピも語った。


ヒッピの名字ロイラーは、身寄りの無い子供の世話をしてる《ロイじい》事、ロイラーさんの名前からとって、自分達で名乗ってたらしい。


孤児院みたいだ。


といっても、ロイじいの自宅で、補助金がある訳じゃない。


王都で孤児になって、ロイじいに拾ってもらったらしい。


ロイじいの家があるけど、ロイじいはもう働けない年齢で、ヒッピや他の子達が、お金を出したり、小さい子供やロイじいの世話をしてるみたいだ。


ヒッピは、ロイじいの家から出て、今は文官の宿舎に住んでるけど、仕送りしてるんだって。



今は何とか人頭税が払えてるみたいだが、8歳9歳の子達が3人いる。


さらに小さい子も何人か…。


その子達が10歳になる、2年後が厳しそうだし…


その先もある…。



王都の人頭税は、10歳から金貨2枚だ。


今は3人で働いて4人分、800万円の税金を払っているのに…。

2年後に600万円相当も税金が増えたら、そりゃ大変だろう。



ロイじいの家は、僕の宿から近いらしい。


《一度、ヒッピに連れてってもらおう》と思った。




この世界、10~12歳位の年齢で働き始める。

ヒッピも10歳から、いろんな仕事をして来たらしい。

12歳で文官見習いになれたのは、スキルのおかげだと話す。


ヒッピは【文書管理】と【計算】の2つのスキルを持ってた。



ギルドに戻って、馬車に乗る。


考え込んでたハズなのに、馬車の揺れと、満腹感、それにヒッピのガイド音声が合わさって、眠気を誘う。



兵舎からギルドまでは、1時間ちょっとかかった。


ギルドから宿までは、2時間以上かかるらしい。




うとうと、寝てたみたいだ。


ヒッピの案内、何も覚えてないや。


ザックさんの《着いたぞ~》で、ようやく目が覚めた。




建物を見て、本当に目が覚めた!!


想像以上にボロ宿だった…。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ