10☆異世界の学級会
学級会は、怖い。
議題にあげられ、槍玉にさらされる恐怖。
異世界に来てまで、そんなことを体験するとは、僕は思ってもみなかった。
異世界3日目。
皆は昨日のうちに、支給された訓練着姿。
RPGの初期服みたいなのを来ている。
仲良く、お揃いだ。
いいな~、同じ勇者パーティーの一体感!
訓練無しの僕には、支給されていない。
僕だけ、制服のブレザーで、この世界観に馴染んでない。
酷く、浮いてる。
皆、似合わないコスプレみたいだけど、この会場ではコスプレが主流だ。
似合わなくてもいいから、浮かない服を着たい!
そんな、日本人的な思考をしてしまう。
どこにいても、僕はやっぱり日本人だもの。
昨夜から広めの部屋が、僕達の食堂として解放されてる。
パンとスープだけの食事。
少し、具が入ってる。
固いパンをスープに浸したり、器に残った僅かな具を、パンですくって食べた。
ショボい朝食の後、そのまま話し合いになった。
食事で下がった気分は、さらに下がる。
部屋の外には、護・衛・はいるけど、室内は僕達だけだ。
議題は、生活魔法ってショボいスキルしかない僕について。
《自分では、どうしようもない事を責めるのは、止めよう!》なんて、僕が正論を吐けるハズもなく…。
今日も、代理戦争に突入しそうだ。
切り捨てて保身に走ろうとする先生や、女子、一部男子。
庇ってくれ、皆でまとまって対処しようとする、多数男子。
庇ってくれる人の中には、意地悪2人組や、緋もいる。
《意外と、いいやつだったんだなぁ~》と、クラスメイト達の事を見直した。
「何も知らないまま、知らない所に、1人追い出すのかよ!!」
「薄情だな!」
「自分だけ良ければいいのかよっ!」
上妻の発言に、成田や、手島達も、援護発言してくれる。
向けられた敵意の視線。
怯えてる僕の横に、小出が立ち、背中をそっと支えてくれた。
《ありがたい》
1人でないことが、心底、嬉しい。
「追い出しとかじゃなくて、謁見で決まったみたいに、豊田くんには外で自立を…、って、話しなだけで…」
と、歯切れの悪い言い方を先生がすれば、
「私達が戦闘訓練するみたいに、豊田くんには生活に慣れてもらわないと。こっちに慣れたら、自立が難しくなるじゃない」
緋のいとこで、クラスのヒエラルキー・トップの実宇が発言。
「それぞれに、慣れる必要のある事が違うんだから、やる事も、やる場所も違うってだけで…」
「私達は、豊田くんのためを思って言ってるだけで、薄情とかじゃないし!」
我が意を得たりで、女子の発言が続く。
そ、その、豊田くんは、知らない所で、知らないまま、1人にはなりたくないです…
と、心の中だけで、返答した。
だって、怖いもんっ!
それぞれに言いたい事を言って、平行線をたどる。
お互いに、意見を変えずに、引き下がらない。
先生や女子達の、配慮のない、あからさまな発言が浮き彫りになる。
昨日、感じた違和感が強まる。
男子も、僕も、異・様・な女子達の様子に、困惑する。
今までなら、もう少し、オブラートに包んでいたんじゃないかな…
召喚当初の困惑、混乱から、まだ3日目なのに、戦闘訓練への参加意・欲・とも、とれる発言…
なんとも違和感がある。
こんな人達だったのか!?
戸惑う。
今日から、午前中に戦闘訓練が始まる。
8時から、基礎の体力作り、体術、それぞれに武器の訓練だ。
昼食と昼休み。
午後は15時から、魔法の講義と訓練。
皆は、全員参加だけど、僕は足手まといだからと、参加は認められていない。
魔法の講義くらい、参加したかった。
勇者じゃない、ただの異世界人には厳しいなぁ。
僕だって、招かれて来たのに…
訓練に呼びに来た、騎士や文官によって、学級会は終了に近づく。
緋達の執り成しで、僕がすぐに放り出されるのは、なんとかなった。
午前中に、どうするか考えて、昼食で合流。
昼休みに、緋達も同席してくれて、城側と交渉になった。
緋や上妻達が、
《力不足で、すまんっ!》
って、謝りながら、皆と慌ただしく、訓練に行った。
僕は、
《庇って貰えて嬉しかった。
訓練、頑張ってね。
無理して、ケガしないでね》
って、皆を見送ってから部屋に戻った。




