決闘の試練
決闘の試練により、決闘場の真ん中でケルベロスと向かい合ってから10分ぐらいたったか。決闘は俺の合図で始まるらしく、ケルベロスはお利口におすわりをして待っている。
「誠也さーん!早く始めちゃってくださいよー!」
メリアがメガホンを使って叫んでいるが叫び返す気力も出てこない。
つーか何で武装がナイフ一本なんだよ。もっとましなもんよこせや。
スーツを着ている審判らしき老人が急かすように咳払いをした。クソッ人事だと思いやがって!
「始める時は右手を上げて決闘開始と言ってくだせぇね」
審判から説明を受けるとあまりにも響きがかっこよかったので
「決闘開始!」
高らかに宣言してしまいました。
叫んだ瞬間にケルベロスが咆哮とともに襲いかかる。もちろんなんの瞬発力もない俺はあっという間に前足で抑えられてしまった。
(死んだ……俺死んだよ)
助けを求めてメリアの方を見ると耳を指さしていた。そういえば片耳にメリアにもらったワイヤレスイヤホン(天界にも何故かある)を突っ込んでいた、電源はOFFにしておいたが。
首を掻き切られる前に急いでONにするとメリアの声が歓声に混じって聞こえてきた。
『あー、テステス。誠也さん聞こえてますか?』
こいつホント馬鹿じゃねぇの?
『いいですか誠也さん。貴方に渡したナイフはただのナイフじゃありません』
「じゃあなんだ!精霊の加護でも受けてんのか!」
『えーと、ちょっと違いますけど……。ちょっとケルベロスをそれで刺して見てください』
ちょっとって、今こいつは俺のどこから食べるか臭いながら考えているんだが。
とりあえず頑張って浅く切ってみた。
「…………?」
何も起きずにケルベロスも三つともの首を傾げている。
「……メリアちゃん?このナイフには一体何が込められてるのかな?」
『私の愛情ですが?』クスクス
よろしい、戦争だ。だが、怒ろうにもこいつをどうにかしないと。
『誠也さん、最後に一つだけ。貴方はもう人ではありません。神としての能力を最大限に活かしてください』
そうだよ、俺はもう神になったんだよ。いけるぞ!俺ならやれる!
足は抑えられていなかったので、そのままケルベロスの腹に蹴りを入れるとダメージが入ったのかケルベロスは後ろに飛び退いた。
おお、いけるかも。
ケルベロスが腕を振り回すと予想外にも奴の爪が飛んできた。
「……!?遠距離攻撃も充実してんのか!!」
肩を切られたが一気に間合いを詰めて頭の一つに向かってストレートを決めた。
『誠也さん』
「わかってる」
ナイフをポケットから取り出しケルベロスのまだ昏倒している真ん中の首に当てる。
ケルベロスは俺に腹を向け、悲しそうな目を向けてきた。
降参の意思を汲み取り、俺はナイフをケルベロスの首から離した。
次に俺が瞬きをすると、俺の上半身は丸々ケルベロスの口の中だった。