試練
湧き上がる観衆の歓声と熱気が俺の心にジワジワとプレッシャーをかけていく。目の前にいるのは頭が3つもあるでかい狂犬だ(ケルベロス?)
ケルベロスは息を荒らげてこちらへとジリジリと向かってくる。
対してこちらの武装はナイフ1本である。
どうしてこうなった。
ーー話は数時間前に遡るーー
石に触れた俺はその衝撃に無様にも悶絶していた。
「ぐおお……なんだよこれ!轢かれた時より痛いんだがっ!」
玉座に座っていた神長はニコニコと笑いながら(殴りてぇ)声をかけてきた。
「儀式は成功ってところかな。おめでとうセーヤ、君は今日から神様だ」
「それはいいんだが、それなら俺はこれから何をすればいいんだ?」
「んー、まずは試練かなぁ。それで今後の扱いを決めていくよ」
横に立っていたメリアにアイコンタクトを使い、シレントハナンデス?と伝えると
「試練とは簡単に言うと神の等級をつけるための試験のようなものですよ、人間上がりでない神も試練を受けていますよ」
流石は説明大好きメリアさん、説明中はニコニコであった。
「誠也にはぜひ、わたしの娯楽の試練をうけてもらおう」
儀式場の周りの椅子に座って様子を見ていたエメが突然そんなことを言って前に出てきた。
「いいや、僕の鏡の試練を!」
ナルまで何か言い出したが理解出来ていないのはこの場では俺だけらしい。
「いーえ!誠也さんには監督役である私の試練を受けていただきます!」
メリアも俺に説明するのも忘れて他の二人に食ってかかっていた。
神長がゴホンと咳払いをして停戦を促すと思いきや
「何を言っているお前達!セーヤには神長である我の試練を受けさせるのが道理なのだっ!」
ダメだこいつ。エメもエメで神長に「だが断る」とかドヤ顔で言っちゃってるし。
長「こうなったら実力行使だ!」
メ「望むところです!」
ナ「争いは嫌いじゃあない☆」
エ「見せてもらおうか、君達の実力とやらを!」
〜5分後〜
実力行使とはジャンケンのことだったらしい。
一発目でナルが敗退して、神長も泣く泣く敗北、エメとメリアの大接戦の末に俺はメリアの試練を受けることになった。
悔しがる3人を尻目に
「私の試練では猛獣と闘っていただきます。それが決闘の試練ですよ!」
目をキラキルと輝かせて語るメリアだったがものすごく不安になった。
「早速受けてみましょう!誠也さん!思い立ったが吉日ですっ!」
「……は?」
ーーそして冒頭に戻るーー
「ふ、ふざけんなぁぁぁぁぁあ!!!!」
視界の隅に見えるメガホンを持った神共と先生とケルベロス、そしてむかつくほどに晴れ渡った空に向かって俺は叫んだ。